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詐欺はサンタとともにやってくる!? 続々出現中 自転車販売の偽サイトにアクセスして危険をお知らせ

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(提供:PantherMedia/イメージマート)

クリスマスが近づいてきて「どんなプレゼントをあげようか」とネットで調べる方も多いことでしょう。それに年末年始に向けて、商品を買う機会も増えるかと思います。こうしたなかで、詐欺師たちも販売サイトに偽の商品を並べて、私たちのお金をだましとろうとしてきます。

まさに詐欺サイトはサンタクロース、歳神様とともにやってきます。

今月に入り、知人の男性から「うちの奥さんが、偽の通販サイトにひっかかってしまったようです」との連絡を受けました。さっそく、そのサイトのURLを送ってもらい、見てみました。

ここには「クリスマス限定」「このタイミングを逃すな!」の文字が躍ります。

筆者がアクセスした偽サイトと思われるHP画像
筆者がアクセスした偽サイトと思われるHP画像

その下には、カテゴリ一覧として、三つの商品が紹介されています。

電気助手自転車、折りたたみ自転車、電動自転車です。

筆者がアクセスした偽サイトと思われる画像(筆者加工)
筆者がアクセスした偽サイトと思われる画像(筆者加工)

おそらく「電気助手」とは「電動アシスト」のことをいいたいのかもしれません。これは日本語への誤訳か誤字と思われますので、すでに偽サイトの兆候がみえています。

さらに商品の紹介ページを見ると、電動自転車の定価65,800円に線が引かれて10,290円、電動アシスト自転車は定価137,478円が、10,490円の格安の値段になっています。どの商品も1万円台の激安価格になっており、ここにも偽サイトの印(しるし)が表れています。

誤字、激安の価格表示、これに嘘の運営会社の住所の3点セットとなれば、ほぼ偽サイトが濃厚です。

運営会社の住所を見てみると、N社とあり、その下に「茨城県〇〇市4-1*-*」と書いてあります。

もうおわかりの方がいるかもしれませんが、地図アプリで調べる必要もなく、虚偽の可能性大の住所です。というのも、「市」の後に、町名が抜けた記載になっているからです。

さらに調べると、もう一つのY社と住所が出てきます。こちらも調べてみました。なんとここは大手通販会社の住所でした。しかも責任者の名前として、ここの有名社長の名が書かれています。

そこで大手通販会社に問い合わせをして、このY社について尋ねると、この住所に籍を置くグループ会社ではないことがわかりました。

住所も虚偽の記載なので、まず偽サイトでほぼ間違いありません。

ただし、最近の偽サイトの決済方法には、代金引換とクレジットの二つの決済パターンがありますので、それを調べる必要があります。

そこで、定価143,020円が10,490円に大幅に値引きされている電動アシスト自転車の注文画面をタップしました。

筆者がアクセスした注文画面(筆者加工)
筆者がアクセスした注文画面(筆者加工)

住所や電話番号を入力する画面が出てきます。適当に数字を入れて先に進むと、最後にクレジットカード番号を入力するようになっていました。

最終的なクレジットカード番号入力画面(筆者撮影)
最終的なクレジットカード番号入力画面(筆者撮影)

この偽サイトでは、代金引換ではなく、クレジットカード情報の抜き取りが狙いの一つであることがわかりました。”一つ”と言ったのには、理由がありますが、後にお話しします。

被害に遭われた奥さんはInstagramの広告から、この偽サイトに誘導されたそうです。その広告を見せて頂きました。

「超お買い得!【一人当たり一台限定】先着60名様限定価格:10,400円」の表示が出ています。

被害者提供・Instagramに出てきた広告(筆者加工)
被害者提供・Instagramに出てきた広告(筆者加工)

今、電動アシスト自転車は人気で、高値で取引きされています。もしかすると、この広告を見て安いと思って、すでに注文してしまった方もいるかもしれません。

偽サイトでもっとも心配なのは、クレジットカード番号の悪用です。4日ほど前に、電動アシスト自転車の注文をしたということなので、すぐにクレジットカード会社へ相談するようにお話をしました。

その後、知人の男性から「カード情報が悪用される懸念があるので、再発行の手続きを取りました」との連絡をもらいました。しかし今の偽サイトの場合、ここで安心できません。もう一つの詐欺師たちの狙いがあるからです。

それは、カード会社からの次の言葉に表れています。

「決済が正式に済んでいるので、現状では止められません。商品が1か月経っても届かなかったら、カード会社に、もう一度お電話下さい」

「決済が正式に済んでいる」

ここが最近の偽サイトの手口で、やっかいなところです。

ひと昔前のクレジットカード情報を抜き取る偽サイトでは決済などされず、ただ商品が届かないだけですので「カード番号を変えて、新しい番号で再発行すれば良い」だけでした。

あとは、住所と電話番号を知られているので、不審な郵便物に注意する感じです。

しかし今は、実際にクレジットカードで1万何某の金額が決済されており、しかも商品が届くこともあります。

もちろん、注文した電動アシスト自転車が届くことはまずありえませんが、偽ブランド品や、料金に似合わない安い商品が届くことは充分に考えられます。

それゆえにカード会社としても、正式に決済されている時点で、絶対に注文の品が届かない詐欺サイトとも断定できません。もし今、警察に行ったとしても、被害としては認定されることはないでしょう。

これこそが、詐欺師たちのもう一つの狙いです。

カード会社が現段階で「詐欺確定」の判断を下せないため、しばらく様子を見ることになります。そうすると、その間に詐欺グループの懐に商品の決済代金が入ってしまうことになると考えています。

それに偽サイトには電話番号はなく、連絡できるのはメールアドレスのみです。もしまったく違う商品が届いて、偽サイトの運営者側に連絡をしたとしましょう。そのまま、返信がなく無視されることもありますが、なかには「商品を間違えて発送しました」などと言い訳をされれば、様子見の期間がさらに引き延ばされることになります。

となると、注文者は商品が「届くかもしれないし、届かないかもしれない」という中途半端な状況で待たざるを得ない。面倒な状況に追い込まれるのです。

もしかすると、面倒になって「1万円位はもういい!」と、泣き寝入りをする人もいるかもしれません。それこそ詐欺をする側にとって好都合で、こうした1万円がどんどん積もって、たくさんのお金を手にできることになります。

すでに被害多発の報告が相次いでいる偽サイトならば、カード会社の対応は早いでしょうが、今回のような出始めたばかりの偽サイトは本当にやっかいです。

被害確定までの「様子見」期間に、多くの人をだまし、その間にも、この広告からの被害が拡大してしまう。これこそが、詐欺師らのもう一つの目的なのです。

別なSNSにも広告が表示される

これ以外にも、SHOP名を変えたと思われる「クリスマス特集」などを謳う、電動アシスト自転車、カメラ販売などの偽の通販サイトも次々に登場していますのでご注意下さい。

筆者のSNSの広告に出てきた同様なサイト(筆者加工)
筆者のSNSの広告に出てきた同様なサイト(筆者加工)

そこで皆さんにお願いしたいことがあります。もしこうした不審な広告を見つけたら、ぜひともSNS上にある「・」が縦や横三つになっているボタンを押してほしいのです。Instagramであれば、縦三つのボタンです。ここをタップして、通報などをして頂ければと思っています。

広告画面の赤丸で囲んだ「・・・」をタップして通報をお願いします(筆者加工)
広告画面の赤丸で囲んだ「・・・」をタップして通報をお願いします(筆者加工)

時に、今の詐欺サイトは、とんでもない置き土産をしてくることもあります。

過去の取材では、偽サイトで1000円ほどの商品の注文をしたところが、後日、利用明細を見たところ、130倍の13万円の支払いになっていた方もいらっしゃいます。

偽サイトで注文したかもしれないと思う方は、必ず利用明細をこまめにチェックするようにして下さい。

こうした面倒な事態に巻き込まれないためにも、注文時には「通販サイト上に誤字はないか」「あまりに激安になっていないか」「その住所は本当に存在しているか」に注意を払うことがとても大事になってきます。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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