コロナ禍で注目された郊外マンション、人気がすぐ冷めた物件に欠けていた要素は?
コロナ禍で、郊外マンションが人気とされる。が、郊外マンションのすべてが人気になっているわけではない。郊外で駅から離れたマンションでも人気が高いのは、スーパーマーケットが隣にある物件……この現象は、1年ほど前、最初の緊急事態宣言が明けた頃から起きていた。
まず、郊外のマンションはどこでも注目度を高めた。その後、人気が続く物件と、人気がすぐに冷めてしまう物件があった。人気が続く物件に共通していたのは、スーパーマーケットが隣接していること。上の写真で取り上げた「プラウドシティ日吉」も敷地内に買い物施設があり、最寄り駅から徒歩9分でも高い人気を持続している。
その事実から、マンションの販売現場では、「今売れるのは、日々の買い物が便利なマンションだ」と言われるようになったのである。
この傾向は今も変わっておらず、駅から徒歩15分でも、隣がスーパーマーケットというマンションは売れ行き好調。多くのマンション購入者が、買い物便利なマンションを好んでいる。
そのことを裏付ける調査データもある。
不動産販売・仲介会社の長谷工アーベストが今年7月に行った「住まい選びの重視点の推移」の調査(複数回答)によると、マンション購入に際し、「スーパーマーケットが充実・近い」ことを重視する人が、この1年半で大幅に増加していた。
同調査によると、コロナ禍が広がる前の2020年1月、「スーパーマーケットが充実・近い」を重視する人の割合は38%だった。それが、2021年7月には48%に上がっていた。
「駅に近い」を重視する人は56%から51%に低下し、「交通アクセスのよさ」は48%から49%とほぼ横ばいだったことと比べると、「スーパーマーケットが充実・近い」を重視する人が明らかに増加している。
ちなみに、「住環境がよい」ことを重視する人は、32%から37%の上昇で、「静かである」ことを重視する人は24%から30%に上昇。いずれも、上昇しているのだが、伸び率は「スーパーマーケットが充実・近い」のほうが高い。
コロナ禍が起きてから、自然豊かな場所のマンションが好まれていると思われがち。しかし、実際には自然豊かで買い物不便な場所より、スーパーマーケットに近く、買い物便利な場所に建つマンションが支持されていたわけだ。
考えてみれば、これは当然のことだろう。
家時間と内食が多くなれば、買い物便利なほうがよい
レストラン等で食事をする「外食」に対し、家で手づくりの食事をいただくことを「内食」というようだ。その内食の機会がコロナ禍で増えている。
コロナ禍が生じさせた緊急事態宣言は、東京都の場合、すでに4回目となった。緊急事態宣言が出れば、不要不急の外出は控えなければならないし、外食も控えたほうがよい。お酒も家でたしなむのが日常化すると、必然的に家で食事をつくる機会が増える。
子供が夏休みの間、朝、昼、晩、家族全員分の食事を家でつくるという家庭もあるだろう。
となれば、食料品の買い物が増える。その買い物は、できる限り1人で行くことが奨励されているので、大量の荷物を運ぶ「買いだめ」がしにくい。
毎日のように食料品の買い物に行くことになると、買い物不便な場所はとても住みにくい。だから、「スーパーマーケットが充実・近い」ことを重視する人が増えたと考えられる。
テレワークになった人ほど、買い物便利な場所が好ましい
昨年4月、最初の緊急事態宣言が出たとき、「これからはテレワークが広まる」という予測が出た。次いで、テレワークならば、交通不便な田舎暮らしでもよい、という意見も出た。
しかし、考えてみたら、テレワークで家に居る時間が増えた人ほど、食料品の買い物が増えるもの。「昼はお弁当でいいや」と思っても、お弁当を売っている店が遠い場合、また店が近くにあっても購入できるお弁当の選択肢が少ない場合は、生活しにくくなる。
テレワークが増えた人ほど、近くに品ぞろえの充実したスーパーマーケットがある場所が好ましい。
コロナ禍で「田舎暮らしの人が増える」のではなく、実際には「買い物便利な場所を好む人が増える」わけだ。
スーパーマーケットが近いマンションは、シニアの2人暮らしや1人暮らしになったときも暮らしやすい。コロナ禍の今、マンション購入に際して「スーパーマーケットが充実・近い」ことを重視しすぎても、一生後悔することはないと考えられるのである。