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81試合で40盗塁のスピードスターは、ルーキーの盗塁記録を更新し、新人王を受賞するのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョシュ・ドーナルソン(左)とエステウリー・ルイーズ Jun 27, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月27日、エステウリー・ルイーズ(オークランド・アスレティックス)は、3回裏にヒットを打って先制点を挙げると、そこから二盗を成功させ、シーズン40盗塁に到達した。続いて試みた三盗には失敗し――上の写真がその瞬間だ――盗塁死もリーグ最多の8度ながら、盗塁成功率は83.3%(40/48)なので、低くはない。

 アスレティックスは、この日が81試合目だった。レギュラーシーズンのちょうど半分だ。ルイーズの盗塁は、162試合に換算すると、暗算でもわかるとおり、80となる。

 ルイーズは、24歳のルーキーだ。昨年7月にメジャーデビューし、サンディエゴ・パドレスとミルウォーキー・ブルワーズで計17試合に出場した後、今シーズンからアスレティックスでプレーしている。

 もっとも、38年前にビンス・コールマンが打ち立てた、ルーキーの盗塁記録を塗り替えるのは、少し難しそうだ。コールマンは、メジャーリーグ1年目の1985年に110盗塁を決めた。さらに、そこから、3年続けて100盗塁以上を記録している。1986年は107盗塁、1987年は109盗塁だ。

 ちなみに、アスレティックスのルーキーでは、1977年に42盗塁のミッチェル・ペイジが最も多く、1979年に33盗塁のリッキー・ヘンダーソンはペイジに次ぐ。リッキーのメジャーデビューは、6月下旬だった。コールマンと同じく、シーズン100盗塁以上は3度を数える。1980年に100盗塁、1982~83年は130盗塁と108盗塁だ。ナ・リーグとア・リーグにおいて、1シーズンに120盗塁以上を記録した選手は、リッキーしかいない。

 1985年のコールマンは、リーグ2位のティム・レインズ――前年まで4年続けて盗塁王――に40盗塁の差をつけ、新人王には満場一致で選ばれた。

 今シーズンのルイーズも、長期離脱がない限り、盗塁王を獲得するに違いない。現時点のリーグ2位は、25盗塁のワンダー・フランコ(タンパベイ・レイズ)だ。

 また、80盗塁に到達すれば、新ルールの「追い風」を差し引いても、インパクトは大きい。1988年に93盗塁のリッキーと81盗塁のコールマンを最後に、シーズン80盗塁以上の選手は途絶えている。最後の70盗塁以上は、2009年に70盗塁のジャコビー・エルズベリーだ。2018年以降は、50盗塁以上もいない。

 ただ、ルイーズは、新人王を受賞できないかもしれない。

 ア・リーグには、200打席以上でOPS.800以上のルーキーが3人いる。出塁率.372と8本塁打の吉田正尚(ボストン・レッドソックス)がOPS.838。出塁率.343と11本塁打のガナー・ヘンダーソン(ボルティモア・オリオールズ)がOPS.805、出塁率.325と15本塁打のジョシュ・ヤング(テキサス・レンジャーズ)もOPS.805だ。

 一方、ルイーズのOPSは.656に過ぎない。出塁率は.318と高くなく、ホームランは1本しか打っていない。

 ルイーズとチームメイトのライアン・ノーダも、出塁率.387と8本塁打を記録していて、小数点第4位を四捨五入したOPSは.800となる。投手を含めれば、新人王の有力候補はもっと増える。

 なお、新人王のプラス材料となるかどうかはさておき、ルイーズは、死球も多い。12度の死球は、リーグ最多と1しか違わない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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