中東派遣される護衛艦「たかなみ」の警戒活動用装備
日本政府は2019年12月27日に新たに中東派遣する護衛艦を「たかなみ」に決定しました。既に中東海域ではアデン湾の海賊対処で海上自衛隊の護衛艦と哨戒機が派遣されてきましたが、新たにオマーン湾まで活動海域を拡大します。これは2019年にホルムズ海峡近辺で日本船を含む複数の民間タンカーがリムペットマイン(吸着爆弾)で攻撃される事件が起きたことに端を発し、アメリカが各国に護衛艦艇の派遣を要請していたのを受けたものでした。アメリカはこの事件の犯人をイランの革命防衛隊と疑っています。
日本政府はアメリカの要請に応えつつイランの顔を立てて友好を維持するため、アメリカ主導の有志連合には参加せず独自に派遣した上でホルムズ海峡とペルシャ湾には踏み込まずオマーン湾までを活動領域としました。これでアメリカとイランの双方から了解を得ることに成功しましたが、危険な海域を避けているので護衛活動の意味は薄くなり、日本護衛艦は派遣されたこと自体に意味が有るという政治色の強いものとなっています。
護衛艦「たかなみ」はこのような理由でオマーン湾に派遣されます。そしてアデン湾に派遣される海賊対処行動水上部隊の護衛艦と同様の装備を搭載して任務に就きます。
20mmバルカンファランクスblock1B
これは今回の任務の為に新たに用意された追加装備ではありませんが、2018年に護衛艦「たかなみ」は搭載しているファランクスを新型のファランクスblock1Bに換装しています。ファランクスとは対艦ミサイル防御用に20mmバルカン機関砲と小型レーダーを組み合わせた近接防御用自動対空システム(CIWS)なのですが、これの左横に赤外線カメラを追加で装着して水上目標への対処が可能になったのがファランクスblock1Bです。RWS(リモートウェポンシステム、遠隔操作式機関銃)としての機能が追加され、水上の不審船にも射撃が可能となりました。
「たかなみ」が今回の中東派遣に選ばれたのはこれを既に装備していたのが理由かもしれません。小型ボート相手に主砲(127mm)では強力過ぎるので、ファランクスblock1B(20mm)の方が使いやすくなります。なお対空目標であるドローンには旧型ファランクスでも元から対処可能です。
手動操作の12.7mm機関銃とLRAD(指向性大音響発生装置)
アデン湾に派遣される海賊対処行動水上部隊の護衛艦は手動操作の12.7mm機関銃とLRAD(指向性大音響発生装置)を追加搭載しますが、オマーン湾に派遣される「たかなみ」にも同様の装備が追加搭載されます。よほどの緊急事態でなければ通常はこの二つの装備を使って接近する不審船に警告を行います。
艦橋の防弾板と防弾ガラス
防弾板と防弾ガラスもアデン湾に派遣される海賊対処行動水上部隊の護衛艦が追加搭載する装備で、オマーン湾に派遣される「たかなみ」にも艦橋に装着されます。従来はこれらの装備は派遣任務が終わり日本に帰ってきたらその都度外していたのですが、今後はずっと装着しっ放しにしようという提案が出されています。ただし防弾ガラスのポリカーボネート樹脂は紫外線による劣化が早く数年で駄目になってしまうので、装着しっ放しは寿命を短くすることにもなりかねず、何度も行う交換費用とどちらが安く付くか比較検討することになります。
またこの他の装備として衛星通信機材や個人用の自動小銃や機関拳銃も護衛艦に積んで行きます。「たかなみ」では派遣決定の一週間前には護衛艦付き立入検査隊(MIT)が訓練をしている様子が横須賀港停泊中に視認されており、この時点で既に海上臨検を想定し派遣は内定済みだったと思われます。