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台風や地震で停電、どうする?用意すべきものは?やってはいけない危険なNG行為も:防災士のライフハック

植松愛実気象予報士・防災士・野菜ソムリエ
2024年8月に非常に強い勢力で接近した台風7号の雨雲の様子(気象庁HPより)。

台風7号の関東接近や、南海トラフ地震の臨時情報を機に、「我が家もそろそろ停電対策を考えなければ…」と思った人も多いのでは。

自宅が停電したら、まずは何をすればいいのでしょうか。また、SNSにあるライフハックには、できれば避けてもらいたい危険なNG行為もあります。

停電したらまず、スマホの節電を

「停電に備えて懐中電灯を手元に置いておきましょう」…そう聞いて、「スマホなら常に手元にあるから電気が消えても平気」と思っていませんか?むしろ逆です。

停電したら、スマホはすぐに節電モードに。これが最優先!
機種によって、「低電力モード」や「バッテリーセーバー」など名称は様々です。

節電モードがない場合や、節電モードにしても画面が明るかったり通知が届いたりする場合は、まずは画面を暗くしてから一つずつ設定しましょう。

とにかくスマホは必要最小限の情報収集にだけ使って、懐中電灯などほかのものでも用を足せることには使わないようにしてください。
家族で住んでいる場合は、それぞれのスマホを順番に使うのもおすすめです。

「手のひら冷却」で熱中症対策を…ただし逆効果の場合も

「手のひら冷却」というのは、手のひらにある「動静脈吻合(どうじょうみゃくふんごう)」という特殊な血管を冷やすことで、血液を冷やして体温を効率的に下げる方法です。

ポイントは、10~15度の冷たすぎない程度に冷たいもので手のひらを冷やすこと。冷蔵庫から出したばかりのペットボトルや凍っているものなど10度を切るものは 、逆効果になります。

また、すでに熱中症の症状(頭痛や吐き気、倦怠感など)が出ている場合は無効なので、首の後ろやわきの下をできるだけ冷たいもので冷やしたり、ない場合は少量の水で湿らせたハンカチで肌の表面を拭いて気化熱を利用しましょう。

懐中電灯を明るくするライフハックは危険なものも

停電中に懐中電灯を使う際、懐中電灯を立ててその上に水が入ったペットボトルを置くと、より明るく照らせる…というライフハックを聞いたことがある人も多いのでは。
実は、立てられない(自立しない)タイプも懐中電灯や、ヘッドライトなどでも、光の先にペットボトルを置くことで、明るくすることができます。
また上図のように、ライトが入るサイズのコップを使うことも可能ですが、倒してけがをしない場所に置きましょう。

ちなみにペットボトルの中身は水でもいいですが、スポーツドリンクだとさらに効果があります。
(SNSには、水に少し牛乳を混ぜるやり方も載っていますが、子どもが誤って飲まないようにしてください。また、停電するほどの災害時は断水のおそれもあるので、水が十分余っている時だけにしてください。)

また、レジ袋のように白っぽいポリ袋を少し膨らませた状態で懐中電灯にをかぶせることでも明るくすることができます。が、熱が出るタイプの懐中電灯の場合は、火災の危険性があるのでやめましょう。

ロウソク火災は過去の台風で死者も

停電の際、仏壇用や花火用で余っているロウソクを使ったり、SNSなどで以前流行したこともある、ツナ缶を用いた「ツナ缶ロウソク」で明かりを取ったりする人もいると思います。
ただ、こういったロウソクの使用は、可能な限り避けてください。

去年2023年の夏には、台風で停電した家の中でロウソクを使っていたと見られる人が、火災で亡くなる被害が出ています。

冷蔵庫は開けなければ2~3時間、冷えを保てる

通常の冷蔵庫は、停電しても扉を開けなければ、おおむね2~3時間は冷たい状態をキープできます。
(ただし季節や、もともとの食品の保存状態にもよるので、食べる前に細心の注意が必要。)

なお、停電時は冷蔵庫のドアをできるだけ開けないのが基本ですが、冷凍庫の保冷剤や凍ったペットボトル飲料などを、短時間でサッと冷蔵庫に移し替えることができるのでれば、さらに冷蔵庫内を冷えた状態に保つことができます。

空のペットボトルは2~3本あると強い!

ここまで読んで、ペットボトルがやたら登場することに気づいた人もいると思いますが、災害時にペットボトルはかなり様々な用途で活躍します。

空のペットボトルに水を入れて冷蔵庫や冷凍庫に入れておけば、前述の通り手のひら冷却や明かり取り、そして冷蔵庫の保冷にも役立ちます。

なお、ペットボトルに液体が入った状態で凍らせるときは、満杯で凍らせると凝固時に膨張して容器が割れるおそれがあるため、8分目くらいにしてください。

また、ペットボトルの素材(PET)はあまり耐久性が高くないため、一度冷凍したペットボトルは再利用しないようにしましょう。

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気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

気象予報士・防災士として講演・執筆を行う傍ら、野菜ソムリエ・食育インストラクター・薬膳マイスターとして出張料理人(一般家庭での作り置き代行)としても活動。NHK・民放各局で気象キャスターを歴任し、報道の現場や防災、気候変動・地球温暖化に関する最新情報にも詳しい。著書に『天気予報活用ハンドブック~四季から読み解く気象災害』(竹下愛実名義・共著)がある。

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