中国でメディア関係者がまた行方不明に
中国政府や共産党に“不都合”な本を出版した台湾の出版社の編集者が、行方不明になっているという。中国本土で身柄を拘束されている可能性がある。中国政府による言論抑圧の強化が懸念される。
台湾の新聞「自由時報」によれば、行方不明になっているのは、台湾八旗文化出版社の李延賀編集長。李さんは中国の出身で中国に戸籍を残したまま台湾に居住していた。今年3月、李さんは親戚訪問などのために中国に帰った際、上海で治安当局に身柄拘束されたとみられ、その後音信が途絶えているという。李さんの友人がフェイスブックで救出を呼びかけた。
李さんは、2009年から台湾に居住し、台湾の出版グループの傘下で八旗文化出版社を立ち上げた。同社は、中国共産党が宣伝工作などを通じて世界への影響力を強めようとする実態を描いた「紅色渗透」の出版で知られる。他にも天安門事件や新疆ウイグル自治区など中国では“敏感”とされるテーマを扱った本を出版している。
李さんが中国の治安当局に身柄拘束されたのであれば、中国政府に批判的な本を出版していた香港の銅鑼湾書店の幹部が次々と行方不明になった事件を彷彿とさせる。2015年、同書店の複数の幹部が渡航先のタイなどで次々と失踪したが、後に中国当局者に連行・拘束されていたことが判明した。一部の幹部は、中国国営テレビで罪を“自白”させられるなどし、中国当局による言論抑圧を象徴する事件ともなった。
中国と台湾情勢を世界が注視する中、中国当局が“不都合”な情報や言論の拡散の抑え込みを強化しようとしている可能性も考えられる。