Yahoo!ニュース

ドイツ×ポルトガルの注目対決は攻め上がるラームと仕掛けるC・ロナウド。サイドを制するのは?

河治良幸スポーツジャーナリスト

熱狂を増しているブラジルW杯。サッカーやフットサルの1オン1を掘り下げる『1on1 Football TV』(http://www.footprom.net/1on1fbtv)では、グループリーグ屈指の好カードであるドイツ×ポルトガルから「クフィリップ・ラーム×クリスチアーノ・ロナウド」に注目した。

「彼が特別な選手であることは間違いない」とラーム。1オン1が起りやすいサイドの攻防について、藤間洋介(フットプロム代表)、今矢直城(早稲田ユナイテッド監督)、河治良幸の3人で切り込んだ。(進行・藍沢慶子)

好守から攻め上がるラームと縦横に仕掛けるC・ロナウド

河治:勝敗を読みにくいマッチアップです。当然ラームはC・ロナウドを抑えに行くけれど、ラームは攻撃の起点でもある。C・ロナウドに攻め残られた状態だとラームはなかなか前に上がりにくくなるので、攻守の判断というのが1つ。

もちろん1対1での攻防というのもあって、ラームは高さがないけどライン際での守備は上手く、足も速いのでC・ロナウドとしてはやり難い相手であることは間違いない。そこを上手く縦で振り切る動きを見せながら中に入ってくる、そうしてラームを振り切って、サイドバックとセンターバックの間を突いてシュート力を活かしたいという戦いになるのではないでしょうか。

その時にラームがロナウドのマークをセンターバックに受け渡すのかついていくのかと言う判断も重要になってくる。多分受け渡すんでしょうけど、その判断は鍵を握ると思います。

藤間:この3組の中では一番“フットプロム的”な、オンザボールの1on1が見られる。分かり易い1on1が見られる。その中でラームが抜かれる様な事があると局面は大きく変わってきます。

今矢:中に行かれた時はどうするんでしょうね。C・ロナウドが中に行って、もう一回左を使うというシーンがあまりないので。

河治:ボールを持っていればついていくでしょうね。中に行き切らせないうちに遮断して、ボールロストを奪うのかバックパスをさせるのか、そうしてそこを打ちやぶる気をという気を無くさせるというか、そういう形になるのかと思います。

ただ一方で、ナニやジョアン・モウチーニョなどが持った時にオフザボールで中に切り込んでいくっていう形を取ってきた場合には、ボアテングなどに受け渡すのかなと。

ボールをサイドで持った時には間違いなくラームはしっかりつきながら、そんなにクロスは出してこないと思うので、まず突破させない、中にも入りこませない、ある程度ついていきながらも途中でガチッと止めるっていう感じになると思います。そこを切り返しやフェイントでどうかわしていくか。

ただ最近、C・ロナウドも周りを使う動きが上手くなってきていて、自分が為を作る事で周りを動かして、ポンとパスを出す、ワンツーで受けるなども出来るようになってきている。

今矢:どういう絞り方をしてくるでしょうね。逆に縦を切って挟むのか、それをトラップで使うというのもあるかなとも思うんですが、トラップを仕掛けるにしては怖い選手ですから。

河治:そうですね。トラップにするには怖すぎる選手なので、極力そうはせずアウトサイドに逃がしてっていうディフェンスになるでしょうね。中に入られかけても縦はあけないでちょっと内側で構えてC・ロナウドの意識を外側に持っていかせるっていう守りになると思います。

C・ロナウドはドリブルをしていてもそこらの選手のオフザボールよりも速い位ですが、ラームはそれでもついていけるので、ボールを持っている時にはついていける、内側を切っていればそこから縦にガッと行こうとしても、それだけの走力があるからついていける、対応できると思います。

サイドでクロスを上げさせる分には、ドイツのセンターバックは強いですから、そんなに怖くはないと思います。ラームとしてはクロスを上げられるより、そこで振り切られてゴールライン上を進まれる様な形が一番怖いですね。クロスであれば、中はポスティガ対メルテザッカーやボアテングになるので、そこはドイツに分がある。逆サイドもナニ、中盤もジョアン・モウティーニョなので、それほど怖くはない。

あるとすれば、ドイツがカウンターで戻りながらのディフェンスを強いられた時に、タイミング良くアーリーを出してポスティガが走り込むっていうのが、ほぼ唯一、クロスでポルトガルが得点できるパターンでしょうね。それ以外は、C・ロナウドが中に入ってこない限りは始まらないというか。

今矢:突破出来れば話は変わってきますよね。いくらC・ロナウドとはいえラームをいきなり抜くのは難しいと思うんですが、中を切っていても周りを使って、中途半端な位置を取って中に飛び出すような動きが出てくれば、ポルトガルにも勝算は見えてくると思います。

河治:あと、怖いのはコエントラン。C・ロナウドが左サイドでボールを持って、中に入ろうという動きを見せている時、ラームを抜き切れないという時に、そのタイミングでコエントランが上がってきたっていう時に、ドイツの右のウイング、ミュラーかゲッツェになると思うんですが、そこまでついていけないと思うんです。

しかもラームは抜かせない事は出来るけどC・ロナウドから直接奪うって言う事はなかなかできないので、そこでためられてコエントランに出されて中に入っていくような動きをされると、C・ロナウドをボアテングが見ないといけなくなって、そうするとポスティガが空くって言う場面が出て来る。

同じクロスでも、C・ロナウドが上げる場合と彼が中にいて他の選手が上げるって言う場合では意味が違ってくるので、ドイツとしてはそれを作らせないことが大切。C・ロナウドをラームがしっかり見るという事は、そこを利用して上がってくる選手を、ドイツ代表の他の選手が見極めないといけないですよね。

そこはミュラーが頑張って戻るのか、トニ・クロースやシュバインシュタイガーがカバーリングに行くのか。中盤はそれほど怖くないと思うんですよ。メイレレスやジョアン・モウティーニョはパスの出し手としてはすごくいいですけど、やっぱり怖いのはC・ロナウドとコエントランの左サイドの縦の崩し。ある程度ボランチもそこを意識していいのかなと思います。

藤間:1on1のところに話を戻すと、C・ロナウドが90分の中の駆け引きの中でどのタイミングで狙ってくるのか、最初は敢えて狙わずに戻してばかりかもしれないし、最初の5分位からいきなり狙ってくるかもしれないし、観る側としてはそこは注目してみて欲しいですね。

河治:一度ユーロでこの対戦があったので、その時は苦戦したんですけど、C・ロナウドと周囲の関係とか、C・ロナウドがこう動いたら周りはこう動くみたいなことはインプットされてるというか計算には入れてあると思います。

でも、ドイツが攻める時間が長くなると思うんですが、ドイツの攻めは速攻型なので、奪われるリスクはどうしてもある。そこをC・ロナウドにポンと出されてしまうという可能性もあるので、ラームがどれだけ攻撃参加をするのか、残るのか、そこがどう出るかですかね。

藤間:C・ロナウドはアタッキングサードに入らなくてもスピードアップしてすぐにゴール前まで行ってしまうという事がある選手なので、その分、目を離せないエリアが広い。

河治:ひょっとしたらラームを中盤のアンカーに配置して、グロスクロイツが右に入り、ラームはカバーリングを担当するっていう可能性も無きにしもあらずですよね。グロスクロイツは元々ウイングの選手ですがサイドバックになってから台頭してきた選手なので、それでラームを中盤で使うという選択肢も出てきた。ただその場合でも、対応するべきなのはけっこう幅広くなってくるので、どちらにせよC・ロナウドとのマッチアップは発生すると思います。

今矢:グロスクロイツとラームでC・ロナウドとコエントランを見るという形ですね。

河治:そうですね、C・ロナウドをなるべく中盤とサイドバックで見ていかないと。センターバックが見るようになってしまうと危ない。ポスチガは1対1はまるで駄目ですけど、フリーになる、周囲の選手を使って間に入ってくるっていうプレーはものすごく上手い。

あとはメイレレスが飛び出してくるという形になると厳しくなります。なのでなるべくC・ロナウドはボランチとサイドバックで処理したいという思いはあると思います。それによってセンターバックの選手が真ん中に集中出来る。

藤間:ドイツ側としては当然C・ロナウドが要注意だってことは分かっているでしょうけど、C・ロナウドは分かっていてもそれを打ち破ってきた選手ですからね。

河治:流れで厳しい時にはフリーキック一発っていう可能性もありますしね。

ただやっぱりラームは攻撃的なイメージを持たれてますけど、アウトサイドでのディフェンスは本当に上手い選手。ゴール前になると全然ダメなんですけどね(笑)

そこはドイツの役割分担の面白さで、中は中、外は外のスペシャリストが見るって言う個性の繋ぎ合わせが現代サッカーの中でもしっかりあるので、その辺りも注目してみて欲しいと思います・。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

河治良幸の最近の記事