なぜエムバペはレアル移籍に近づいているのか?ベンゼマの退団、健全経営…最後に残されたドラマ。
爆弾が投下されたような騒ぎだ。
キリアン・エムバペの去就に注目が集まっている。欧州の複数メディによれば、エムバペはすでにパリ・サンジェルマン退団の意思を固めたようで、ナセル・アル・ケライフィ会長にその旨を伝えたという。
「エムバペについて、私からコメントはできない」
「その件に関して、関係のある人たちが声明を出すまで、私は何も言わない。エムバペやクラブの人間は、まだパブリックな場で何かを言ったわけではない。彼らからコメントがあれば、私は自分の意見を言うつもりだ」
「すべての選手の上に、チームがある。すべての個人の上に、クラブがある。なので、関係者の発言があったとき、私は監督として意見を述べる」
これはルイス・エンリケ監督の言葉だ。
■今後の動き
状況を整理したい。エムバペは2024年夏まで契約を残している。1年の延長オプションを有していたが、これはエムバペ側が行使しないと決めていた。
ただ、エムバペは第一にパリSGと話し合いを行わなければいけない。8000万ユーロ(約128億円)のロイヤリティボーナスが未払いで、その支払いをどうするか、解決する必要がある。
エムバペがそれを放棄した場合、彼の年俸を含め、パリSG側は2億ユーロ(約320億円)を“浮かせる”ことに成功する。その資金で大型補強を敢行して、エムバペの代役を確保したいというのがパリSGの本音だろう。
■エムバペの代役と補強リスト
ビクトール・オシムヘン(ナポリ)、ラファエル・レオン(ミラン)、ガビ(バルセロナ)、モハメド・サラー(リヴァプール)、ベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)…。複数選手がパリSGの補強候補に挙げられている。
オシムヘンは2025年夏までナポリと契約を結んでいる。ただ、リール時代、彼の獲得をフロントに勧めたのは、現在パリでスポーツディレクターを務めるルイス・カンポス氏だ。そのような関係があり、エムバペの代役として、パリSGがオシムヘンを狙っている。
ラフェエル・レオンは、今夏、ミランと契約延長を行なった。2028年夏まで契約を残しており、契約解除金は1億7500万ユーロ(約280億円)だといわれている。
ガビは現在、負傷離脱中だ。だが彼をスペインA代表でデビューさせたのは、ルイス・エンリケ監督である。近年、バルセロナの財政は芳しくない。そのような状況で、パリSGは獲得の機会を窺っている。
サラーは、2025年夏までリヴァプールとの契約を残している。だが、現時点で契約延長にはサインしていない。リヴァプールでは、今季終了時にユルゲン・クロップ監督が退任する。クロップ・リヴァプールで長く主力を務めてきたサラーの去就にも注目が集まっている。
B・シウバは、この夏、シティと契約延長を行なった。だが、その際、契約解除金が安く設定されたと言われており、次の夏に移籍に傾く可能性はある。オシムヘンと同様、モナコ時代に移籍成立の決め手となったのはL・カンポス氏の進言だった。
■レアル・マドリーの姿勢
パリSGが補強を検討している一方で、マドリーはスター選手獲得の準備を整えている。
マドリーは1億2800万ユーロ(約204億円)のキャッシュがあり、さらに2億6500万ユーロ(約424億円)の使用可能金があるという。またサラリーキャップにおいては、この数年で、2022年夏(4億490万ユーロ/約647億円)、2023年夏(3億2650万ユーロ/約522億円)と下げられており、そういった意味でもエムバペを迎え入れる手筈は整っていると言える。
「我々は残りのシーズンについて考えている。それが私の嗜好で、我々の仕事だ。来シーズンについて考えるには、まだ時間がある。私が何かを心配しているか? ノーだ。今後の記者会見でも、同じように振る舞う」とはカルロ・アンチェロッティ監督のコメントだ。
「(エムバペの移籍に関して)現在のテーマであるのは理解している。そういったものを見たり、聞いたりしているからね。しかし、我々にとっては、違う。大事なのは次の試合だ。今シーズンを良い形で終えなければいけない。人々が意見を言うのは理解できる。だが私は今シーズンについて思いを巡らせ、タイトル獲得に集中したい」
マドリーは今夏、カリム・ベンゼマが退団した。奇しくも、背番号9は、空いている。
移籍については、最後まで何が起こるか分からない。そう、最後の瞬間までーー。我々は、ドラマを見守ることになる。