「かゆかったから」車内で下半身を露出して逮捕…公然わいせつになる?その罪と罰
札幌市の路上に停めた車内で下半身を露出した男(68)が逮捕された。通行人の通報で発覚したが、男は「見せる目的ではなく、かゆかったから出していた」と供述しているという。それでも公然わいせつになるか――。
逮捕容疑は?
事件は11月2日午前に発生した。逮捕容疑は「公然とわいせつな行為をした者」を処罰する刑法の公然わいせつ罪だった。最高刑は懲役6か月、罰金だと30万円だ。
この犯罪は、路上や公園、電車やバス、店舗などで下半身を露出し、通行人やほかの客らに通報されて逮捕に至るというのがその典型だ。
情状酌量の余地があれば起訴猶予で終わるが、初犯でも略式起訴されて10~20万円程度の罰金に処されることが多い。
「公然」とは?
問題は、プライベートな空間であるマイカーの車内における行為であっても、なお「公然」に当たるのかという点だ。
しかし、ここでいう「公然」とは、不特定または多数の人が認識できる状態のことを意味している。誰かに見せつけるためだったのか否かや、実際に人に見られたか否かは問わない。
自宅の庭やベランダで全裸になっていたところを通報され、逮捕に至った例もある。
したがって、たとえ車内であっても、時間帯や停車した場所、人の往来の有無や程度、行為の態様などを踏まえ、通行人らに見られるような状態だったと認められれば、「公然」にあたると評価される。
路上や駐車場などに停めた車内で自慰に及んでいたところ、手の動きなども相まって通行人に不審に思われ、通報されるというのがよくあるパターンだ。
見えないように注意
逆に言えば、周囲に全く人がいない場所に行くとか、カーテンやサンシェード、スモークフィルムなどで外から見えない状態にしていれば、「公然」には当たらない。
2016年にキャンプ場でAV撮影をしていた制作会社社長や男優、女優らが公然わいせつ罪で書類送検されたケースでは、現場が山の中で不特定多数の人に認識される場所ではなかったことから、「公然」とはいえず、検察も「罪とならず」という理由で全員を不起訴にしている。
また、故意犯だから、人に見せつけるという目的までは不要でも、公然とわいせつな行為をするという故意は必要だ。
電車内で陰部を露出したとして公然わいせつ罪で起訴された事件では、ズボンのチャックを閉め忘れたまま電車に乗り込んだだけで露出に気づいていなかったとして、2018年に無罪判決が言い渡されたものもある。
今回の事件も、本当に「かゆかったから」なのか、目撃者の証言などを踏まえて吟味され、その信用性が検討されることになる。
「わいせつ」に至らなかったら?
では、海水浴に行って車内で水着に着替えるなど、わいせつ性に疑念が生じるような場合はどうなるか。
公然わいせつ罪が成立しなくても、態様によっては軽犯罪法違反に問われる可能性があるので注意を要する。
軽犯罪法は「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」を処罰の対象にしているからだ。
最高でも拘留、すなわち1日以上30日未満の身柄拘束であり、公然わいせつ罪に比べて軽いが、車内で着替える際もカーテンなどで外から見られないようにする配慮が求められる。(了)