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いきなり存在を奪われる。田村淳のそっくりタレント・ロンフーあつしが直面したSNS社会の理不尽

中西正男芸能記者
SNSのアカウント停止への思いを吐露したロンフーあつしさん(写真は本人提供

 お笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんのそっくりタレントとして活動するロンフーあつしさん(41)。本人と番組共演も果たすなど着実にステップアップしてきましたが、注目度が急上昇する中で思わぬアクシデントが降りかかりました。今年8月、活動の要ともなっているインスタグラムのアカウントが停止処分に。酷似しているがゆえに「『悪質ななりすまし』と判断されたんだと思います」とやり切れない思いを吐露しました。人生をかけた活動の場がいきなりなくなった中、思うこととは。

いきなり“家”がなくなる

 8月にいきなりインスタグラムのアカウントが開けなくなったんです。何かの不具合かと思ってログインしなおそうとしたら、アカウントが停止処分になったことが分かりました。

 SNSはこちらの存在を知ってもらう大切な場ですし、特にインスタグラムは興味を持ってくださった方にダイレクトに活動をお伝えできるSNSでもあるので、そこがなくなってしまったのは気持ちの上でも、実質的にも、本当につらかったですね。

 誰かに似ている、誰かに似せる“ものまねタレント”というカテゴリーの中で、僕の場合は特に見た目が命というか、ルックスで「似てるなぁ」と思ってもらうタイプの活動をしているんです。

 となると、SNSにも田村淳さんに似ている写真を載せる。プロフィールにも「え?これ、淳さんじゃないの!?」とびっくりしてもらえるような写真を載せる。そこがポイントにもなるんです。

 ただ、それをしてしまうと「これは、著名な田村淳さんになりすまして悪さをする良からぬアカウントだ」と判断されるようで。まさにその処置が直撃してしまったんだろうなと思っています。

 「―だろうなと思っています」というのは、インスタグラムの運営側から詳しく連絡が来るわけではなく簡単な告知文が来るくらい。結局、どの投稿の何が悪かったのかは分からないんです。こちらから「何が悪かったんですか?」と僕の知る限り、細かく話をする窓口もなく直接対話をすることも難しい。

 なので、理由はこちらが想像するしかないんですけど、機械的なパトロールを運営側がされている中で「こいつは悪質ななりすましだ」と判断された。そして、いきなりミサイルが飛んできて家がなくなった。正直なところ、そんな感覚です。

 アカウントが消えてしまった日も、それまでと同じように淳さん風の格好の動画をアップしていただけで、特に変わったことはなかったんです。より一層「何が悪かったのか」が分からない。でも、アカウントはなくなってしまった。もう戻らない。その事実だけが残りました。

人生をかけた再出発の場

 もともと僕は学生時代からバンドをやっていて、なんとかバンドで身を立てられないかと思って20年ほどやってきました。

 ただ、なかなか芽が出ずに気づけば30代後半になっていて、メンバーとの方向性の違いもあり、新型コロナ禍でライブも難しくなり、2020年頃から実質的に解散状態になったんです。

 世に出るために続けてきたバンドがもうできなくなり、より一層、ここからどうすべきかを考えたんです。

 それまでも「淳さんに似てるね」と言ってもらってはいたんですけど、あくまでもバンドが主軸だったのでそこをどうこうすることはなかったんですけど、大きな潮目を迎えて、できることは何でもやろうと思ったんです。

 髪型やファッションも淳さんにとことん寄せて、その姿をインスタグラム、TikTok、YouTube、Xで発信することから始めました。ありがたいことに22年にはTikTokの動画が300万回再生を記録し、インスタグラムなど他のSNSにも見てくださる方が来るようになりました。

ただただ願うこと

 ちょうどその頃、本当にありがたいことに淳さんのスタッフさんもこちらの存在を知ってくださったようで、22年の秋にABEMAさんからご連絡ををいただき、淳さんの番組に出していただいたんです。

 お会いした瞬間に「似てるなぁ」と驚いてくださって。本当にやさしく受け止めてくださいました。淳さんのSNSにもツーショット写真を載せていただき、シャレの中の流れながら、淳さんがやっている事務所に入ってほしいというお言葉までいただきました。

 地道に少しずつ積み重ねをしてきたんですけど、また一から家を建て直すようなことを今はやっています。

 周りの同業者さんというか、ものまねを生業にしてらっしゃる方にお話をうかがうと、僕と同じようにいきなりアカウントが停止になった方がかなりいらっしゃって。僕よりもっと圧倒的に著名なものまねタレントさんでもそういう危険性に悩まされていると聞きます。

 プロフィールにそっくりな写真を入れると「なりすましアカウントだ」と判断されるのでは?みたいな見立てもあって、そこには別の写真を使うなどの工夫をされている方もいます。これも、正式に運営側から答えが出ている話ではないので、自己流の防衛策でしかないんですけどね。

 今の世の中、あらゆるSNSがあって、それこそ星の数ほどアカウントがあります。そして、著名人になりすまして詐欺をするような本当に悪質なアカウントもあります。

 膨大なアカウントの中からどうすれば悪質なものを見つけられるのか。その仕組みを明らかにすると、悪質な人間に逃げ道を教えることにもなるからか、ルールはハッキリさせないままパトロールは続いている。その結果、ルックスが似ていることを売りにしてるそっくりタレントさんに、かなりの数の停止が起こってしまっている。

 どこにどう言っていったらいいのかも難しい話なんですけど、そういう事実が一部ではあって、生活の基盤をそれで失っている人がいるのも事実なんです。

 もっと、もっと、もっと、自分の存在が大きくなる。多くの方に知っていただく。そんなことになったら何かが変わるのかもしれませんけど、そこに向けて頑張るための手立てがいきなりなくなるのは正直きつくもあります。

 今の時代を考えると、一つ一つ細かくアカウントを精査することは現実的には難しいのかもしれません。悪質なアカウントがあるのも事実です。なので、こちらもその状況を踏まえて、なりすましだと思われないようなSNS運用をしないといけない。それしかないのかもしれません。

 答えを出すのが本当に難しい領域ですけど、何とか真っすぐ活動している人が理不尽な思いをしない。なんとか、そんな状況になってほしい。それをただただ願うばかりです。

(撮影・中西正男)

■ロンフーあつし

1983年2月10日生まれ。兵庫県出身。リアムプロモーション所属。オンラインコミュニティ「田村淳の大人の小学校」11期生。98年、中学の友人から誘われてバンドを結成し、ボーカルとして活動。音楽の世界で成功することを目指すが、結果が出ずに解散。新型コロナ禍で公私ともに状況が大きく変わる中、以前から「田村淳に似ている」と言われていたことをきっかけに一念発起し、田村淳のそっくりタレントとしてSNSで発信を開始。2022年から再生数が伸び始めTikTokでの投稿動画が300万再生を超えるなど成果が見え始める。それを機にABEMAからオファーを受け田村淳との共演が実現した。現在は各SNSを発信の拠点にしつつ、ものまね番組やイベント出演など全国各地で活動している。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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