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『キングオブコント2024』は東京03・飯塚悟志の採点が結果を左右? 他4名の審査員との明らかな違い

田辺ユウキ芸能ライター
優勝したラブレターズ(出典:『キングオブコント2024』公式サイトより)

日本一のコント師を決める『キングオブコント2024』の決勝(TBS系)が10月12日に開催され、ラブレターズ(塚本直毅、溜口佑太朗)が優勝を飾った。

ラブレターズはファーストステージで、引きこもりの息子が密かに“どんぐりユーチューバー”として活動していることを知って喜ぶ両親のネタを披露。475点で2位(ロングコートダディと同点)に付けると、ファーストステージの上位3組で争うファイナルステージでは、海でナンパした女性の意外な素顔に驚かされる外国人風の男性のネタで、第17代王者の座についた。2位はロングコートダディ、3位はファイヤーサンダーとなった。

松本人志の“定位置”についたのは、東京03の飯塚悟志

そんな『キングオブコント2024』で大会前から注目されていたのが、審査委員長をつとめていた松本人志(ダウンタウン)の不在の影響だ。

2024年1月より活動を休止している松本人志に代わって、今回新たにシソンヌのじろうが審査員に加わった。そして審査員長的な役回りを担ったのが、東京03の飯塚悟志だった。飯塚悟志は番組序盤のコメントでも、松本人志がいつも座っていた、向かって右端の審査員席に自分がつくことへの緊張を口にしていた。

そんな“松本人志不在”の『キングオブコント2024』の審査でもっとも存在感を発揮したのも、飯塚悟志だった。

飯塚悟志は、じろう、山内健司(かまいたち)、秋山竜次(ロバート)、小峠英二(バイきんぐ)の他4名の審査員に比べ、自分の好みをあらわした点数を付けていた印象だ。ちなみに飯塚悟志のなかでのファーストステージのトップはファイヤーサンダーで98点、2位はシティホテル3号室で97点、3位がロングコートダディで96点、4位タイはcacaoとラブレターズで95点、6位タイはダンビラムーチョとコットンで93点、8位タイはや団とニッポンの社長で92点、10位は隣人で91点だった。

そんな飯塚悟志の点数の付け方で興味深いところがいくつかあった。

飯塚悟志の採点のポイント「1位から3位の点数」「94点・95点」「点数幅」

一つめのポイントは、1位から3位までの点数をはっきり分けていること。じろうは1位タイ(96点)がロングコートダディとや団、3位(95点)がファイヤーサンダー。山内健司は1位タイ(95点)がロングコートダディ、ファイヤーサンダー、ラブレターズ。秋山竜次は1位(96点)がや団、2位タイ(95点)がダンビラムーチョ、ニッポンの社長。小峠英二は1位タイ(96点)がや団、ニッポンの社長、ラブレターズ。いずれも点数に重なりがあったことに対し、飯塚悟志は1位から3位までは1点ずつ差をつけた。

二つめのポイントは、他の審査員が連発した「94点・95点」を出した数だ。じろうは95点を2組、94点も2組、山内健司は95点を3組、94点を2組、秋山竜次は95点を2組、94点を4組、小峠英二は95点を2組、94点を2組につけた。一方、飯塚悟志は95点を2組、94点は0組だったのだ。10組の出場者中、他4名の審査員は半数近くを「94点・95点」に集中させたのに対し、飯塚悟志はわずか2組だけ。これは大きな違いである。

三つめのポイントは、各自の最高点数と最低点数の点数幅だ。じろうはロングコートダディに96点、コットンに91点で点数幅は5点差。山内健司はロングコートダディに95点で、コットン、cacao、隣人に91点で4点差。秋山竜次はや団に96点、隣人に92点で4点差。小峠英二はや団、ニッポンの社長、ラブレターズに96点、隣人に92点で4点差。しかし飯塚悟志はファイヤーサンダーに98点、隣人に91点で7点もの差をつけたのだ。

今回の『キングオブコント2024』のファーストステージはファイヤーサンダーが476点で1位通過したものの、2位通過のロングコートダディ、ラブレターズとはわずか1点差。4位以下も僅差が続いた。近年稀に見る大接戦だった。それだけに飯塚悟志が点数差を明確につけたのは非常に大きな影響が感じられた。もっと言えば、彼の好みにハマるか、ハマらないかで順位が左右されたのではないだろうか。特にファイヤーサンダーの1位通過は、飯塚悟志の98点がかなり後押ししたと言って良いだろう。

ちなみに前述した得点順を見ても分かるように、飯塚悟志は4位以下は4つのゾーンに分けて点数を付けていたのも特徴的だ(95点ゾーン=2組、93点ゾーン=2組、92点ゾーン=2組、91点ゾーン=1組)。

「審査員の好み」がトレンド入り、目立っていた飯塚悟志の好み

これらを踏まえた上でピックアップしたいのが、ニッポンの社長の審査時に話題に挙がった「審査員の好み」という言葉である。

ニッポンの社長は、プレーが上手い1年生野球部員の声の小ささに不満を持った監督が、その部員をバットなどで殴りつけたりするネタだった。殴るときに使うバットは折れ、部員をぶん投げた先に置いてあったベンチは破壊されるなど、ニッポンの社長らしいバイオレンスさに満ちた内容だった。

小峠英二は、小道具が次々壊れていくところを「おもしろい」と高評価。しかし飯塚悟志は、そのようにセットが壊れるように制作・用意されていることに難色を示し、「同じおもしろさだったら(セットは)ない方が好き」とコメント。ニッポンの社長の辻皓平はそんな飯塚悟志の評に対し、「審査員さんの好みなんで」と反応した。

この「審査員の好み」がXのトレンド入りを果たした。ただ過去の大会を振り返ると、たとえば2022年大会でも、いぬがキスを繰り返すネタを披露したとき、飯塚悟志は「キスは禁じ手」と指摘するなどした。以前から飯塚悟志は“自分ルール”に則って審査をおこなっており(もちろん全審査員がそうだろうが)、その独自性は今回の点数の付け方、審査の仕方にきっちりあらわれていたと言えるだろう。

「審査員の好み」が出ることは、良い、悪いではくくれない。というよりも「当たり前」のことである。審査員全員が同じ点数、同じ感想というのはまずあり得ないからだ。筆者は9月、ピン芸人のキンタロー。を取材する機会を持った。そこでキンタロー。も「お笑いって好みの世界。おもしろいと感じるものやそのツボって人それぞれ」と話していた。さらにキンタロー。は、そういった好みは賞レースの審査にも出るもので、だからこそお笑いの審査は難しいのだと語っていた。

各審査員がどんな着眼点でネタを見て、どのような点数を付けるのか。「審査員の好み」は、まさに人それぞれ。それが結果としてあらわれるのが賞レースのおもしろさであり、また残酷さでもあると言えるだろう。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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