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お笑いコンビ・流れ星☆は“移動遊園地”? なぜ毎年単独ライブ全国ツアーができるのか? その人気の秘密

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Photo/GEKKO

全国7か所を回る単独ライブツアー“新輝一天”がスタート

8月8日、東京・かめありリリオホールで、お笑いコンビ流れ星☆の『単独ライブツアー2022 新輝一天』(全国7か所8会場)の初日公演を観た。客席は家族連れ、中高校生とおぼしき若いファンで満員だ。“一発ギャグ王”・ちゅうえいと、ツッコミ・たきうえのコンビが新ネタを引っ提げ、それに加え客席参加型のゲーム感覚の映像や、恒例のロケ映像などで2時間に渡り、会場を爆笑の渦に巻き込んでいた。小さい子供は腹を抱えて笑っていたが、流れ星☆のネタの面白さは、圧倒的な“わかりやすさ”。それが二人が目指しているところだ。大人から子供まで誰が観ても笑えるネタ、ギャグを用意し全国を回る。

2014年から続けている単独ライブツアー

今回の単独ライブツアーは、コロナ禍で3年振りの開催になるが、流れ星☆は2014年から毎年ツアーを行なってきた。単独ライブを行うお笑い芸人は増えているものの、二人のように全国ツアーを毎年開催し、その規模を拡大しながら続けることができるのは、ほんのひと握りの芸人だ。なぜ流れ星☆は毎年全国を回る単独ライブツアーができるのだろうか。老若男女を惹きつける彼らのライブの魅力はどこにあるのだろうか。

今年結成23年目を迎える流れ星☆は、「肘神様」「ガンダム」「天秤(てんびん)ちゃん」など、ちゅうえいがネタの中で繰り広げる一発ギャグの数々が、特に若いファンに支持され、2013年に『THE MANZAI』で決勝進出を果たした。そこで披露した歌ネタ"肘神様"が話題になり、その人気が全国区に。一躍人気コンビになり2015年にはヒャダイン作曲の「岐阜ミーチャンス」でCDデビューを果たしている。その後も“仲悪い芸人”の真打ちと言われながらも、一発ギャグの申し子・ちゅうえいの爆発力と、離婚、ソーラー発電や不動産事業を始めたことが、度々ネットニュースを賑わせ話題になった。そのたきうえの私生活をネタにした漫才が受け、さらにそのネタで様々なバラエティ番組からも出演依頼が殺到し、ますますパワーアップしている。

尖ったネタでマニアックなお笑いを目指した時期から、“ベタ”なお笑いを求めて方向転換

流れ星☆のネタは、たきうえが骨格を作り、作家でありお笑い芸人でもある赤嶺総理と共に肉付けしていくスタイルだ。私生活、時事ネタ、ちゅうえいの予測不能の動きなどを絡めたネタを練り上げていく。

昔はマニアックなお笑いこそが面白いものと、尖ったネタをやっていた時期もある流れ星☆だが、子供たちや若い世代がドリフや昔のお笑い番組を、YouTubeを観て楽しんでいる状況に気づいた。王道の“ベタ”さを良しとしないお笑いばかりが溢れていて、でも多くの人は逆に“ベタ”なものに需要があるはずだと方向転換した。そこからは「僕らの漫才は遊園地みたいだと思っていて、老若男女問わず楽しめるお笑いライブを目指して今までやってきた」と、以前たきうえはインタビューでそう語ってくれた。それが前述した圧倒的な“わかりやすさ”につながる。

「誰もが楽しめるアミューズメントパークのようなライブにしたい」(たきうえ)

「難しいことは考えずに笑っていただければそれでいい」(ちゅうえい)

二人は、自分達の誰もが楽しめる遊園地のようなライブをきっかけに、もっとお笑いに、お笑いの世界に興味を持って欲しいという。

「真ん中にある部分はブレていなくて、お笑いの単独ライブなんて観たことがない人でも、楽しめるような作りにしたいといつも思っています。老若男女からファミリー、お笑い初心者の方まで、誰もが楽しめるアミューズメントパークのようにしたい」(たきうえ)。

「難しいことは考えずに笑っていただければそれでいいんです。そこからお笑いに興味を持ってもらって、より本格的なお笑い芸人の漫才を観に行ってもらえれば。僕らはお笑いの入口的存在になれればいいんです。そこからどれだけ枝分かれしていってもいいんですけど、入口は流れ星☆、的な感じだと嬉しいです」(ちゅうえい)

「みんな一度は『アンパンマン』を通るように(笑)」(たきうえ)

昨年インタビューした際、そう語ってくれた。二人のライブの熱量に客席は引きつけられ、そこには小学生からお年寄りまで、老若男女みんなが一緒に笑っているという素敵な光景に出会うことができる。

単独ライブツアーについてたきうえは「同じ方向を見て進むという部分では、流れ星の幹といえると思う」と語り、ちゅうえいは「基地。流れ星☆を見失わない場所。個々に活動をしていても、戻ってくれば流れ星☆を再確認できる場所です」と語っている。ライブでの爆発力をまたテレビやYouTubeで還元させ、テレビやネットで感じた新しい面白さや新鮮さを手に、またライブに向かう。

単独ライブツアーには最前列or2列目、終演後の特典会、プレゼント特典がついた「プレミアムシート」(ファンクラブ限定/\11,000)が用意されているが、これが最初に売れるという。さらに学生券、親子券なども用意され、ファン層の広さがわかる。

流れ星☆のライブは、まるで行く先々で子供も大人も楽しませてくれる、移動遊園地のような存在なのかもしれない。今年のツアーは早くも前半戦が終了し、残すは9月の静岡・愛知・大阪・東京の4カ所のみとなった。

BSフジ 流れ星☆単独ライブツアー特設サイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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