大泉洋、安田顕らも参加する「チャンネルはそのまま!」(主演:芳根京子)はお仕事&地元愛にあふれている
お仕事ドラマはこうでなきゃ
北海道生まれの漫画家・佐々木倫子が地方局で奮闘する人たちを描いた漫画のドラマ化、HTB開局50周年ドラマ「チャンネルはそのまま!」は
お仕事ドラマとしても地元ドラマとしても優れたドラマである。
とりわけ、ひとつの仕事に打ち込む人の姿を描くお仕事ドラマは人気ドラマの条件のひとつで、「チャンネルはそのまま!」はみんなの大好きなお仕事ドラマの条件を十二分に満たしている。ドラマ好き、お仕事ドラマ好き、北海道好き、チームナックス好き、水曜どうでしょう好き、ついでに朝ドラ好き、そしてヨーロッパ企画好き……の人たちは、放送でも配信でも見ることをおすすめする。
舞台は北海道のテレビ局。主人公は新入社員。地方局とはいえ入社するのはなかなか大変なマスコミ業界において、〈HHTV北海道★テレビ〉では、採用に「バカ枠」があると噂されている。その「バカ枠」入社したらしい雪丸花子(芳根京子)はやることなすことトンチンカン。でも彼女が失敗することによってそれをフォローしようとまわりの人間の能力が引き出されていく奇跡のような現象が起きていく。それだけでなく、何をやっても評価の低い花子にもまた変化が……。
同期のアナウンサー花枝まき(宮下かな子)、報道部の山根一(飯島寛騎・男劇団 青山表参道X)、編成部の北上隼人 (長田拓郎)、営業部の服部哲太郎、 (島太星)、技術部の橘誠一(瀧原光)……みんな、同期の花子に苦笑いしながら、それぞれの仕事に夢や希望と同時に悩みも抱えていて日々奮闘している。彼らを取り巻く先輩、上司たち、ライバル局の人たちなども加わって、テレビ局として何をどう視聴者に伝えるか、誠実に向き合っていく姿が、ユーモアを交えながらじつに爽やかに描かれている。
たとえば、新人アナ・花枝が、花子の書いたとんでもない原稿に、生放送でどう対処するかというエピソードは第一話にふさわしい、わくわく感。そして、山根が取材をはじめたカリスマ農業技術者・蒲原正義 (大泉洋)の意外な面が発覚して、花子のバカ枠採用の本領が発揮されていくところは、期待に違わぬ感動がある。どんなに大変でも、人生、捨てたものじゃないという、希望に満ちたドラマだ。日々、いやなことがあると、こういう優しい世界をドラマのなかだけでも味わいたい。
仕事場への愛情にあふれている
このドラマ、もうひとつの注目点は、制作したHTBの開局50周年ドラマにして、開局以来50年使用されてきた社屋で撮る最後のドラマだったこと。昨秋新社屋に引っ越してた社員たちにとっては長らく通った愛着のある建物を、ドラマによって遺すという粋なはからいなのである。テレビ局を舞台にしたドラマだからこそ、テレビ局ならではの歴史と記憶が染み付いた本物が生きる。テレビを作る人たちの思いが作り物ではなく、本物に肉薄するのだ。
さらに、HTB制作による、ローカル局では異例の全国的な大ヒット番組になった「水曜どうでしょう」のメンバーが参加。前述の大泉洋をはじめ、藤村忠寿は、監督および、★テレビの情報部長役で出演。鈴井貴之は★テレビの社長役。安田顕は、ライバル局ヒグマテレビの非情なる情報部長・鹿取を演じる。TEAM NACSの森崎博之、音尾琢真、戸次重幸も彼らの個性に合った役でドラマを彩る。
問題を抱えるカリスマ農業技術者の感情の揺れを大泉が、様式美にまで高められたような敵役の仕草を安田が演じる場面はニヤニヤしてしまう。藤村による飄々としながら懐の大きいキャラもたまらない。
こういうキャスティングが、長らく彼らを好きで応援してきた人だけの楽しみに留まらず、なにも知らずに見ても、みんなチャーミングに見える。京都を拠点にする劇団、ヨーロッパ企画のメンバー・永野宗典、角田貴志、本多 力による技術部のシーンはほんとうに愛らしい。
なんといっても、主役の芳根京子は純粋な熱血おバカさんキャラを全身全霊で演じ、応援したくなる(応援したくなることが大事)。
それから、BS で再放送している朝ドラ「べっぴんさん」ファンにはうれしい、百田夏菜子のカメオ出演も。
総監督は本広克行。
人気原作、豪華スタッフ、キャストによる見応えあるドラマは、目下、地方局放送とネット配信のみ(netflixで配信中。テレビ放送は地元北海道で3月18日から5話連続で放送、以後、各地で順次放送予定)。でも、地元でつくった、ここでしか作れない、ここでしか見られないという作品もいいものだ。いや、いま、それこそ、力のあるものが生まれるんじゃないか、その可能性を拓くドラマだ。
地方放送局の役割とは
最後に、まっさらな気持ちで見たい方は、視聴後にお読みください。
第一話の冒頭は、地震に関する場面になっている。ドラマの撮影がはじまった昨年秋、北海道では大きな地震が起こった。これを踏まえたものなのか、伺ったところ、
福屋渉プロデューサーから回答をもらった。
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冒頭のマスターカット訓練は、原作「チャンネルはそのまま!」にもあるシーンをベースにしており、
基本ここで人物やキャラクターテレビ局内部の雰囲気を伝えるためにこのシーンから始めています。
撮影直前に北海道で実際に震災が起き、第一話の地震訓練のシーンをどうするか? ということに関して判断がありました。
HTBでは実際に毎日報道部で地震訓練が行われていること、ローカル放送局の役割として災害時対応は使命であることから、
デスク「なんのために毎日訓練しているのだ」
アナウンサー「この地震による津波の心配はありません」
「落ち着いて行動してください」
など視聴者に対して寄り添う報道の姿勢を表しているセリフをもとに
もともとの台本に加えて、「このような背景があって訓練する」という日々を前提にキャラクター付けするという判断がくだされました。
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“災害時対応はローカル放送局の使命”。放送局と地元の生活は密着している。だからこそのシーンを冒頭で描くことで放送局の災害に対する祈りと自分たちが何をすべきか考えていることのあかしになっていると感じた。
HTB開局50周年ドラマ「チャンネルはそのまま!」 全5話
キャスト
芳根京子 飯島寛騎 宮下かな子 長田拓郎 島太星 瀧原光
TEAM NACS 鈴井貴之 ヨーロッパ企画 大鷹明良 酒井敏也 東京03 泉谷しげる 根岸季衣
スタッフ
総監督 本広克行
監督 藤村忠寿 山本透 佐々木敦規 木村好克
脚本 森ハヤシ
プロデューサー 福野渉 嬉野雅道 多田健 坂本英樹
:
北海道テレビ(HTB)
3月18日(月) よる11時20分
3月19日(火) よる11時20分
3月20日(水) よる11時35分
3月21日(木) よる11時20分
3月22日(金) よる11時10分
秋田朝日放送(AAB)
4月15日(月)〜19日(金)
岩手朝日テレビ (IAT)
4月15日 (月)〜19日(金)
長野朝日放送(abn)
4月5日- 5月3日 毎週金曜日
メ~テレ
4月2日 〜 4月30日 毎週火曜日
長崎文化放送 (NCC)
4月6日 〜5月11日 毎週火曜日
テレビ埼玉 (TVS)
4月29日(月) 〜5月3日(金)
テレビ山梨 (UTY)
4月22日(月) 〜26日(金)
テレビ宮崎 (UMK)
4月1日(月)〜5日(金)