新型コロナのスーパースプレッダーにならないために
厚生労働省のクラスター対策班の調査によって、新型コロナウイルス感染症の国内事例の8割は他の人にうつしていないことがわかりました。
厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」に興味深いデータが掲載されています。
この図について以下のように解説されています。
8割の感染者は誰にもうつしておらず、残りの2割の人が1人以上の人に感染させていたとのことです。
中には1人から9人、あるいは12人に感染させた事例もあるようです。
全くうつさない人が大多数なのに、少数の人がたくさんの人に感染症を広げていることになります。
なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?
スーパースプレッダーとは?
SARS(重症急性呼吸器症候群)では、スーパースプレッダーと呼ばれる、多くの人への感染拡大の感染源となった患者がいたことが分かっています(Nature volume 438, pages293-295(2005))。
韓国でMERSが流行した際も、特定の数名がスーパースプレッダーであったことが分かっており、1人から86人に感染させた人もいたことが分かっています。
このスーパースプレッダーと呼ばれる人たちはごく一部であり、残りの多くの人達は誰にもうつしていないか、うつしていても1人くらいです。
新型コロナウイルス感染症でもこの現象が確認された、ということになります。
20/80 ルールとは?
SARSやMERSなどの飛沫感染で伝播するコロナウイルス感染症に限らず、他の感染症でも感染者全体のうちで他者に感染させるのはおよそ2割の感染者だけであり、残り8割は誰にもうつしていないという現象が知られています。
これが20/80ルールと呼ばれるものです。
このルールは、2014-2015年に西アフリカで流行したエボラ出血熱でも当てはまると言われています。
自分がスーパースプレッダーにならないためには?
なぜスーパースプレッダーが存在するのか、なぜ20/80の比率になるのかまだ分かっていないところも多々あります。
しかし、SARSやMERSそして新型コロナウイルス感染症については感染者個人の性質との関連は不明ですが、少なくとも環境によるところが大きいと考えられます。
国内での流行も、バス、屋形船、スポーツジム、ライブハウスなど特定の環境で感染していることが分かっています。
これらに共通するのは、厚生労働省Q&Aにも書かれているように「換気が悪く、人が密に集まって過ごすような空間」です。
こうした環境では集団感染が起こりやすいため、特に注意が必要です。
また「臨時休校は本当に意味のない新型コロナ対策なのか?」でもご紹介した通り、特に若い方の大半は無症候性感染者や軽症患者と考えられます。こうした方々が感染した場合、本人は無症状やごく軽い症状であったとしても周りの人に拡げてしまう可能性がありますし、新型コロナウイルスに抵抗力の弱い高齢者や持病を持つ方々にうつしてしまうと命に関わります。
ですので今の時期は症状がなかったとしてもできる限り屋内の人が集まる場所に行くことは避けることが大事です。