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無駄な球はナシ! “投げること”で社会貢献のヤクルト近藤一樹にNPO法人が感謝状

菊田康彦フリーランスライター
「世界の子どもにワクチンを 日本委員会」から感謝状を贈られた近藤(筆者撮影)

 12月17日に契約更改を終えた東京ヤクルトスワローズの近藤一樹(36歳)に、認定NPO法人「世界の子どもにワクチンを 日本委員会」が感謝状を贈った。近藤はオリックス・バファローズに在籍していた2009年から、同法人を通じてアジア諸国の子供たちに自身の投球数に応じたポリオ(小児まひ)ワクチンの寄付を続けている。

オリックス時代に「投げれない時の励みが何かないかな」

 同法人は、子供ワクチンの確保と感染症の完全予防を支援するための募金・ワクチン供与活動などを行っている団体で、今年で創設25周年。まだ若手だった2006年に右肩痛に苦しんだ経験のある近藤は「投げれない時の励みが何かないかなと思って。投げれるようになった時に、何かの形で還元できたら」とワクチンの寄付を思い立ち、初の2ケタ勝利を挙げた2008年頃から実行に移そうと模索し始めた。

 投げたくても投げられないという思いをしたからこそ「(予防接種のような)日本では当たり前なことが、日本じゃないところでは当たり前じゃないっていうのと、僕にとって当たり前に仕事するっていうのが当たり前じゃなかった時に、投げれないっていうのがどれだけ当たり前じゃないかっていう苦しさとか、いろんなところがかみ合った」という。

 同法人を通じて支援活動をしている団体・個人の中には、独自に決めた「わが社のルール」や「僕のルール」にのっとって募金や寄付を行っているケースも多く、近藤の「僕のルール」は「投球1球につきポリオワクチン5本」。そこには「(オリックスで)先発してる時にめちゃめちゃ球数が多かったんですよ。1試合で球数が多くなったら勝てる試合も勝てないんですけど『なんで投げてるんだろう?』って思わないように、1球も無駄球ではないっていうのを含めて」との思いがある。

「僕にとって、この活動はすごい励みになります」

 オリックス時代は右ヒジを何度も手術しながら、投げられるようになるとその喜びを力に変えてきた。仮に試合で手痛い一打を浴びたとしても、投げたくても投げられない苦しさよりはマシ。打たれてもその1球が人の役に立つと思えば、気持ちも切り替えられる。だから「打たれるのはイヤなんですけど、打たれたことによって使った球数も、何かに貢献できればいいかなと。僕にとって次の日、明日にどうやってつなげていくかっていうところを考えた時に、この活動はすごい励みになります」と、近藤はいう。

 2016年の途中でヤクルトに移籍してからは中継ぎが主な役割となっているが、今年はシーズン終盤に打球が右肩付近を直撃するアクシデントがありながらも、3年連続の50試合超えとなる59試合に登板。「今は(中継ぎに)ポジションが変わって、球数っていうところでは昔ほどすごい数は投げなくなりましたけど、試合数という意味では多くなったので、ユニフォームを着ている間はずっとやりたいと思っています」

 近藤はこの日、700万円アップの年俸6700万円(推定)で契約を更改。「正直、ユニフォームを脱ぐほうが早いぐらいの年齢なので、そういう意味ではホント長くやらなければいけないなっていうのと、長くこういう活動をしていけるように頑張りたいなっていうのも思います」と、プロ19年目を迎える来季もまだまだ年齢に抗うつもりだ。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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