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「韓国にドン・キホーテ?」類似店がまさかの大盛況。仕掛け人は意外な人物だった!!

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:アフロ)

日本の総合ディスカウントストアであるドン・キホーテをベンチマークしたお店が、韓国で大盛況を博しているという。6月28日、ソウル市内にオープンしたピエロ・ショッピングがそれで、SNSを中心に話題が沸騰し、オープンから11日で来店客が11万人を突破したらしい。

その名はピエロ・ショッピング

SNSでお店の写真を見る限り、店内はまさに“韓国版ドン・キホーテ”。ただ、ドン・キホーテに比べて、より“B級感”をアピールしているのが特徴と言えるだろう。個人的には、歌手PSYの『江南スタイル』ミュージックビデオを初めて見た時と似たような印象を受けた。

(参考記事:「ドン・キホーテ」の韓国版がオープンへ。店員も商品の場所を知らない“B級感”満載!!)

そもそも、お店のネーミングからして韓国の外来語表記法を無視している。「ショッピング」のつづりが、意味は通じるものの、いわゆる誤字なのだ。この破格のネーミングは、このお店がそれだけ“B級感”にこだわっているという意思の表れで、人々の好奇心をくすぐるポイントにもなっている。

もちろん、商品のラインナップも遊び心が満載。ブランド品から日本人なら誰もが知っている定番スナック「ウマイボン」まで売っているのだからレパートリーは幅広い。

(参考記事:“1本10円”ではないものの…日本の「うまい棒」は韓国でも人気のお菓子だった!!)

遊び心満載のB級感

アダルトグッズ売り場の横に設けられた喫煙ルームが、ソウル地下鉄2号線の車内をイメージしていることも面白い。

タバコに対する規制が日本より厳しく、カフェや飲食店が全面禁煙のため、なにかと肩身の狭い思いをしている韓国の喫煙者たちだが、ここでは電車の中でタバコを吸うというロマンが実現できるのだ。韓国の知人によれば、SNS映えしているのもこの喫煙ルームらしい。

本来なら商品の位置を客に案内すべき店員たちのユニフォームに、「私もそれがどこにあるのか分かりません」と書かれていたり、「交換・返品時にレシートが必要だ」という案内文句の下に、「レシート紛失しろ」と小さく書かれているなど、あちこちにギャグが満載だというのだ。

「主なターゲットは20〜30代の若者」と言うだけに、いかに彼らをクスッと笑わせるかに徹底したといったところだろうか。

もともとドンキは人気定番スポットだった

訪問レビューによると、日本の商品も豊富に揃えている。

近年、日本に訪れる韓国人観光客が増えるにつれ、彼らの間では「日本に行ったら必ず買って帰るべきもの」のリストまで存在するそうだが、日本人には知られていない“韓国人の日本定番商品”がほぼすべて手に入るらしい。

ここなら日本のドン・キホーテに来ているかのような錯覚の中で、日本の商品を買う不思議な体験ができるだろう。SNSでは「もはやドン・キホーテにいかなくても良さそうなほど日本の商品が揃っている」との声もあった。

そもそもドン・キホーテは韓国人にもよく知られている日本の“観光名所”の一つ。先日インタビューしたPONYも、「日本旅行中は渋谷のMEGAドン・キホーテに毎日行く」と語っていたほどだ。

それだけに、ピエロ・ショッピングがオープン当初から「ドン・キホーテをベンチマークした」と大っぴらにしていることも、ドン・キホーテを知っている若者世代にアピールするためのマーケティング戦略だ、という意見も出ている。

ピエロ・ショッピングを企画したのは…

ただ、ピエロ・ショッピングが注目されるのは、“韓国版ドン・キホーテ”だからという理由だけではない。

というのも、韓国では製菓をはじめ、外食、お祭り、電子機器、貿易、政策に至るまで、あらゆる分野で日本をベンチマークしているため、ドン・キホーテに類似したピエロ・ショッピングもそう珍しいことでもないはずなのだ。

最近、BIGBANGのメンバーV.Iが経営することで話題の日本ラーメン専門店も、「一蘭」のシステムをベンチマークしたものだ。

(参考記事:「サムギョプサル寿司」に「プルコギカレー」。韓国で“現地化”する日本の外食チェーンの実態)

にもかかわらず、韓国のほぼすべてのメディアがピエロ・ショッピングを取り上げ、関心を寄せているのはなぜか。

それは、ピエロ・ショッピングを企画した人物とも関係しているのだろう。

仕掛け人は、韓国10大財閥のひとつであるシンセゲ(新世界)グループのチョン・ヨンジン副会長。彼は約1年をかけてこのビジネスを準備したというのだ。昨年9月にはSNSに「市場調査中」という書き込みとドン・キホーテを訪問した際の写真もアップしていた。

上品かつ常識的な範囲内のマーケティングを展開するイメージが根強い財閥企業が、肩ひじ張らずに常識破りのビジネスモデルを提示してきただけに、注目が集まるのも当然かもしれない。

特にチョン副会長といえば、韓国大企業の中で初めて「週35時間勤務制」を導入するほど冒険的で、なおかつアニメやLEGOなどが好きな“キダルト族”としても有名だ。

そんな彼が、今度はピエロ・ショッピングで韓国流通業界に新風を吹き込もうとしているのだから、なんとも興味深い。

ピエロ・ショッピングが大成功を収めるとすれば、今後も同じようなベンチマークは続きそうだが、果たして……。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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