日光市文挟の住宅街の中に、おとなはもちろん、子どもたちも集う小さな焼鳥屋さんがあります。新鮮素材を使って作るバラエティー豊かな焼鳥のおいしさはもちろん、このお店には、人をひきつけてやまない魅力があふれています。今回はその焼鳥屋さん、日光市文挟の「つ串んぼ」をご紹介します。

■25～30種も揃うオリジナリティあふれる焼鳥＆焼きトン

「つ串んぼ」の焼鳥、焼トンは、新鮮な素材を使い、自慢の自家製タレで丁寧に焼き上げます。一口かじると香ばしい香りが口の中に満ち溢れ、噛めば噛むほど肉の旨味がジュワっと広がります。

焼鳥、焼トンの種類は季節や日によって変わることもありますが、もも・むね・かわ・ねぎまなどお馴染みの焼鳥から、ぽんじり・セセリ・砂肝・レバー・トントロ・牛バラなど、また、エリンギ・トマト・にんにく・紫蘇などの野菜を使った焼鳥まで揃っています。その種類はなんと25～30種類！

■子供も集う「つ串んぼ」思い思いに過ごせる大切な居場所

美味しい焼鳥と、バラエティー豊かなラインナップ。でも「つ串んぼ」の魅力はそれだけではありません。

つ串んぼが開店する水・木・金曜の16時、お店の横に赤いのぼりがたつと、ひとり、ふたりと近所の子どもたちが集まってきます。

そう、「つ串んぼ」は、子どもも集う焼鳥屋さん。
お店には、子供たちが50円玉一つで買える駄菓子や、ジュース、ラムネも売っています。なんだか昭和の時代、子供たちが集った駄菓子屋さんみたいな、懐かしくて温かい場所なのです。

店主さんは子供たちに目をやりながら「ここなら、子供たちが集まって遊んでいても安心だから」「 知ってる大人のいる所で安全に過ごせる場所があると良いな、と思って」と、話します。

この日、最初にやってきたのは、一眼レフカメラを持った高校生。

「一眼レフすごいね！自分の？」と聞いたら、写真部に入っていて、借りているカメラだそうです。

・・・ということで、私が頼んだ焼鳥で、しばし一緒に撮影会。

知らないおばさんと高校生の男の子が、そんな話もふんわりできちゃう・・・それもきっと、この「つ串んぼ」が持つ不思議な力。

■ 「つ串んぼ」のほっこり時間が心にしみる

次にやってきたのは、近所のおじいちゃん。さらに小学生の男の子もやってきました。おじいちゃんはお店が開いている日は毎日のように来ているそうで、「ここがあるから楽しいんだよ！」と嬉しそうに話していました。

大きなアスパラ巻きを焼きながら、おじいちゃんや子供たちの話をニコニコしながら聞いている店主さん。香ばしい焼き鳥の香りと優しい時間に、なんだかじーんと胸が熱くなってしまいました。

■「つ串んぼ」開店ストーリー

店主さんがこのお店を始めたきっかけは、亡くなったお父さんの焼鳥のレシピ帳。実は店主さんのお父さんは20年前、宇都宮にて「つ串んぼ」を開業、その後生まれ育った北海道・釧路で「つ串んぼ」をオープンし営んでいましたが、他界されました。後に釧路のお店はお世話になっていた人に引き継ぎ、現在も「つ串んぼ」の名前で営業しています。

店主さんはお父さんの遺品を整理している時に、お父さん自慢のタレのレシピを目にし、沸々と思いが込み上げてきたそうです。

そして店主さんは、お父さんの味を引き継ごうと決心。 お店を始めるにあたっては、釧路の「つ串んぼ」の店主さんからアドバイスを受けたりしながら、暖簾分けをしてもらいました。

■安くてメチャメチャおいしい！

お店の人気メニュー「肉巻きライス」は別名「つ串ん棒」、お父さんの付けた商品名だそうです。

お父さんのレシピ、お父さんのタレを引き継ぎながらも、店主さんはさらに、そのレシピを進化させています。

この日私が買った焼鳥は、もも、トマト、芽にんにく、紫蘇、肉巻き棒、アスパラの6本と、その場で食べたつくねなど２本。

鶏肉、豚肉、地元でとれた新鮮野菜、それぞれの素材の持ち味がしっかりと生きていて、秘伝のタレと香ばしく絡みます。焼き立てアツアツはもちろん最高ですが、お持ち帰りをして温めても味が落ちません。

夕方には子どもたちやお年寄りたち、夕食のおかずを買いに来る方々が集い、夕食後には近所のご夫婦たちが、お酒と焼鳥を楽しみに訪れます。夏にはかき氷も登場します。

さらに、敷地内には大谷石製の手作り石窯もあり、近所の方々が集って、ピザパーティーや焼きいもパーティーが開かれることもあるそうです。

住宅街の中に佇む小さな焼鳥屋さん「つ串んぼ」。お父さんのレシピ帳を目にした時から始まった娘さんのチャレンジは、地域の人々に愛される、ちいさなユートピアのような場所を生み出しました。

おいしい焼鳥を食べて笑顔を交しあうと、凹んだ心も元気になれちゃう。
「つ串んぼ」はそんな優しい時間が流れる場所です。ぜひ皆さんも訪れてみてはいかがでしょうか。