『虎に翼』が切り拓いた法律ドラマの新境地──社会と法の進化を描く #専門家のまとめ
NHKの朝ドラ『虎に翼』が、最終回を迎えた。
「法」をテーマとしたこの作品は、戦前から戦後にかけての日本の司法制度の変遷を背景に、女性弁護士・裁判官の先駆者である三淵嘉子をモデルとした主人公・寅子(伊藤沙莉)が描かれた。
そこでは、史実に基づいた民法改正、原爆裁判、尊属殺違憲裁判、少年法改正論議の4つの重要な法的事象が取り上げられた。これらの内容について詳しく解説した記事を紹介する。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
『虎に翼』は、日本のドラマ史において画期的な法律ドラマとして注目を集めた。主人公の半生を軸に、戦後日本の司法制度の変遷を社会変動の文脈に位置づけ、現代にも通じる法的課題を鮮やかに浮き彫りにしている。
特筆すべきは、複雑な法律問題を重層的に描いた点だ。民法改正、原爆裁判、尊属殺、少年法改正などを社会構造の変容と結びつけて描き、法が社会変化に応じて進化する(非普遍的な)システムであることを示した。
しかも専門知識を持たない視聴者にも理解可能な表現を用いつつ、法の難解なポイントにも踏み込んでいる点は、ポピュラー文化における知的表現の確立の好例といえる。エンタテインメントという制約下で法的複雑性を表現することの困難さを、制作陣の綿密な調査と慎重な表現選択によって克服したからだ。
『虎に翼』は、エンタテインメントとしての魅力を保ちつつ、視聴者に法と社会の関係性について深い洞察を促す作品だった。それは寅子が残したこのドラマの最後のセリフにも表れている。
「ねぇ、みなさんにとって法とはなにかしら?」