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『虎に翼』が切り拓いた法律ドラマの新境地──社会と法の進化を描く #専門家のまとめ

松谷創一郎ジャーナリスト
朝ドラ「虎に翼」公式X(2024年9月20日)より。

 NHKの朝ドラ『虎に翼』が、最終回を迎えた。

 「法」をテーマとしたこの作品は、戦前から戦後にかけての日本の司法制度の変遷を背景に、女性弁護士・裁判官の先駆者である三淵嘉子をモデルとした主人公・寅子(伊藤沙莉)が描かれた。

 そこでは、史実に基づいた民法改正、原爆裁判、尊属殺違憲裁判、少年法改正論議の4つの重要な法的事象が取り上げられた。これらの内容について詳しく解説した記事を紹介する。

ココがポイント

明治民法における女性の地位はすこぶる低かった。そこで、それを改善するために、戦後に大きな改正が行われた
『ステラnet』2024/6/7(金)

「原爆投下の国際法違反」は明確に認め、末尾には被爆者への援護策を国に強く促しています。しかし(略)原告が負けている
『PRESIDENT Online』2024/9/7(土)

最高裁は判例を変更して、刑法200条は憲法14条に違反して無効、と判決した(略)同条で服役している人たちに恩赦が施された
『PRESIDENT Online』2024/9/20(金)

少年法はその後も繰り返し改正を行っていますが、一連の根源はこの時代にあり、実は論点もほぼ変わっていないのです
『Yahoo!ニュース・エキスパート:木俣冬』9/26(木)

エキスパートの補足・見解

 『虎に翼』は、日本のドラマ史において画期的な法律ドラマとして注目を集めた。主人公の半生を軸に、戦後日本の司法制度の変遷を社会変動の文脈に位置づけ、現代にも通じる法的課題を鮮やかに浮き彫りにしている。

 特筆すべきは、複雑な法律問題を重層的に描いた点だ。民法改正、原爆裁判、尊属殺、少年法改正などを社会構造の変容と結びつけて描き、法が社会変化に応じて進化する(非普遍的な)システムであることを示した。

 しかも専門知識を持たない視聴者にも理解可能な表現を用いつつ、法の難解なポイントにも踏み込んでいる点は、ポピュラー文化における知的表現の確立の好例といえる。エンタテインメントという制約下で法的複雑性を表現することの困難さを、制作陣の綿密な調査と慎重な表現選択によって克服したからだ。

 『虎に翼』は、エンタテインメントとしての魅力を保ちつつ、視聴者に法と社会の関係性について深い洞察を促す作品だった。それは寅子が残したこのドラマの最後のセリフにも表れている。

「ねぇ、みなさんにとって法とはなにかしら?」

ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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