アイスクリームになくて冷凍食品にあるものは?
今日5月9日はアイスクリームの日。江崎グリコ株式会社のホームページによると、東京アイスクリーム協会(日本アイスクリーム協会の前身)がアイスクリームの消費拡大を願い、1964年5月9日に記念行事をおこなったのがきっかけで、この日に制定されたとのこと。
ビジネス気象研究所によると、気温が30度までは、かき氷よりアイスクリームが売れやすく、30度を超えると、逆にアイスクリームよりかき氷が売れるようになる。気温を考えても、5月はアイスクリームの消費にちょうどよい季節と言える。
そんなアイスクリームには、賞味期限表示がない。マイナス18度以下であれば菌が繁殖しづらく、品質の劣化がしにくいという理由からである。
アイスクリームと同様に冷凍保存する冷凍食品は、賞味期限表示がある。冷凍食品には油脂を使ったものも多く、アイスクリームと比較すると劣化が進みやすい。
アイスクリームも冷凍食品も、購入後は家庭の冷凍庫で保管する。業務用の冷凍庫と違い、家庭用の冷凍庫は、必ずしもマイナス18度以下に保たれているとは限らない。開閉の頻度が高く、庫内の広さも限られているため温度変化が大きい。アイスクリームや冷凍食品の製造業者から出荷される前まではきちんと温度管理されていても、トラックで卸店や物流センターを通って店舗に運ばれ、店舗に到着してからも、常時マイナス18度以下で保存されるとは限らない。実際、私はコンビニで、冷凍庫に保管されずに段ボール箱のまま放置されたアイスクリームを見たことがある。店員が一人しかおらず、段ボール箱から冷凍庫へ移そうとしているときにお客さんがレジに来たため、そのまま段ボール箱が放置された・・という状況だったためである。
スーパーやコンビニでの買い物を振り返って欲しい。たとえば1リットルの牛乳を買うときは、賞味期限表示をチェックする人が多いだろう。でも、アイスクリームを買うときに、表示を見るだろうか。そもそもアイスクリームに賞味期限がないことに気づいていない人もいる。冷凍食品はどうだろうか。冷凍食品も、賞味期限表示はあるものの、見ないことが多いかもしれない。それは、「冷凍保存」すれば品質は保たれるという”安心感”があるからではないだろうか。冷凍すれば永遠に日持ちするわけではないのに、入れてしまえばOKとばかり、かなりの期間、入れっぱなしになっている食材は多い。
アイスクリームの製造会社では、賞味期限表示が省略されているとはいえ、製造日などの情報は、もちろんしっかり管理しており、トレーサビリティ(追跡可能性)が担保されている。製造してからある一定の期間が来れば処分する、といったルールを決めている場合もある。たとえばアイスクリーム最中の場合、最中のテクスチャー(食感)が、保管中に変わってくる。パリッとした食感が失われてくる場合もある。製造してから長く冷凍庫へ保管していると、保管するためのコストもままならない。
ハーゲンダッツ ジャパン株式会社は、公式サイトのCSRページでも公表している通り、日本初のフードバンク団体であるセカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)へ、アイスクリームの寄贈をおこなっている。実際、私が2HJの広報責任者だったとき、毎年クリスマスの時期には社員の方が”サンタクロース”に扮し、児童養護施設へ寄付されていた。児童養護施設では、栄養士が栄養計算した三度の食事は提供されるが、おやつはどうしても優先順位が下がるし、予算の関係上、ハーゲンダッツのアイスクリームなどは購入できないこともある。そんな子どもたちにとって、アイスクリームは、本当に嬉しいプレゼントである。食品メーカーの社員にとっても、自社製品を食べてくれている人と対面する機会は限られており、喜んでくれる人と直接対面する機会は貴重である。自社製品が貢献しているのだという実感が得られると、モチベーションも向上する。
サーティワンアイスクリームでは、アイスクリームの日の今日(2017年5月9日火曜日)、時間を限定し、1人1個に限り、レギュラーシングルコーンを100円で提供する(実施時間は店舗により異なる)。
「アイスクリーム」と聞くだけで、味を想像し、カラフルな彩りを思い描き、幸せな気持ちになれる。先日イタリアのベネツィアとミラノに渡航した際、街角では老若男女がジェラートを楽しんでいた。ジェラートが日常生活に溶け込んでおり、人々の暮らしに彩りを添えていた。
アイスクリームには賞味期限表示がなくてもまったく気にしないで許容するのに、なぜほかの食品のことになると、美味しさの目安に過ぎない「賞味期限」を、過大評価してしまうのだろう。賞味期限は品質の切れる日ではないし、冷凍庫は永遠に日持ちさせる魔法の箱ではない。アイスクリームの日にアイスクリームを味わいながら、そんなことにも少し思いを馳せてほしいと願っている。