3階級王者リナレスが米国で再起 今一番熱いライト級で王座返り咲きへ
2月14日(日本時間15日)にアメリカのカリフォルニア州ホンダ・センターで、ボクシング元3階級王者のホルヘ・リナレス(34=ベネズエラ)と、カルロス・モラレス(アメリカ)との対戦が発表された。
リナレスは、世界王者に向けてアメリカで再起をはかる。
激動のボクシングロード
リナレスはアマチュアで150戦以上の経験があり、17歳で日本の帝拳ジムでプロデビュー。
これまでのキャリアは、51戦46勝(28KO)5敗。その半数近くは日本で試合をしている。
初の世界タイトル獲得は、2007年のWBC世界フェザー級王座決定戦だ。オスカー・ラリオス (メキシコ)を相手に10RKOで破った。
2008年には階級をスーパーフェザー級に上げて、2階級制覇を達成。
順調なキャリアを歩んでいたが、その後多くの挫折を味わった。
2009年に行われた日本での防衛戦では、まさかの1RKO負け。その後も連敗が続きスランプに陥った。
しかし、粘り強く試合を重ねチャンスを待った。
そして、2014年に日本で行われたWBC世界ライト級王座決定戦では、ハビエル・プリエト(メキシコ)を4RKOで下し、3階級制覇を達成した。
その後はWBAの王座も獲得し、統一王者にも輝いた。
2018年にはパウンドーフォーパウンド(全階級を通じて最強)で、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と戦いダウンを奪ったが、10R目に逆転され敗れた。
最強王者と熱戦を演じ、あと一歩のところまで追い詰めた。
階級を一つ上げてスーパーライト級に転向するが、その試合でまさかの1RKO負け。
再起を図り、昨年9月に後楽園ホールでアル・トヨゴン(比)と戦い、6年ぶりの日本復帰戦を判定勝利で飾った。
激動のボクシング人生を歩んでいる。
リナレスのスタイル
リナレスのボクシングの特徴は「スピード」だ。
高速でパンチを放ち、気づいたらパンチが相手に届いている。
また、滑らかなコンビネーションを放ち、テクニックもずば抜けている。
私は同じジムで一緒にトレーニングをしていたが、基本に忠実なスタイルだ。
ボクサー達からは「ボクシングの教科書」と言われていた。
その名の通りボクサーのお手本となる選手で、彼のスタイルに影響を受けた選手も多い。
パンチ力もあり実践練習でのスパーリングでは相手を倒してしまい、手加減をさせられるほどだった。
特にワンツーの切れ味が鋭く、一撃で試合を決めるほどだ。
リングでは圧倒的な強さを誇るリナレスだが、普段は非常にフレンドリーでナイスガイだ。
また、日本語も堪能でスペイン語、英語と三ヶ国語を話す。
初の世界タイトルを獲得した直後には、母国語ではなく日本語で「やったー!」と叫んだエピソードもある。
本人も「日本に来たからチャンピオンになれた。環境があっている」と話していた。
激戦のライト級
リナレスが主戦場とするライト級は、全階級の中でも大きな盛り上がりを見せ、現在は以下の王者が君臨している。
【WBAスーパー、WBC、WBO】ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)
【WBAレギュラー】ガーボンタ・デービス(アメリカ)
【IBF】 テオフィモ・ロペス(アメリカ)
3団体のベルトを持つ、ロマチェンコを中心にタレント揃いだ。
昨年12月に行われたIBF世界タイトルマッチでは、前王者のリチャード・コミー(ガーナ)を2RTKOで破り、テオフィモ・ロペスが新王者となった。
ロペスとロマチェンコは、4月に4団体統一の頂上決戦を予定している。
その他にも、フロイド・メイウェザーの秘蔵っ子と言われたガーボンタ・デービスが、スーパーフェザー級から階級を上げて来た。
昨年末にWBA世界ライト級レギュラー王座を獲得し、2階級制覇を達成している。
そして、リナレスと同じ興行に出場するライアン・ガルシア(アメリカ)にも注目したい。
ガルシアはアメリカ期待の新星で、弱冠21歳で19戦全勝(16KO)の戦績を誇る。
ルックスも良く、SNSのフォロワーは400万以上とずば抜けている。
SNS場では、ガルシアがリナレスとの対戦を望む投稿をしており、リナレスも「かかってこい」と対戦に前向きだ。
両者が勝てば、試合が実現する可能性も高まるだろう。試合が決まれば、新旧スピード対決として注目が集まる。
リナレスが今回対戦するカルロス・モラレスは、ガルシアが対戦した相手で唯一ガルシアを苦しませた相手だ。
今回の試合に勝利する事が、ビッグマッチへの大きなチャンスとなる。リナレスの圧倒的なパフォーマンスに期待したい。