森保ジャパンはスペイン戦でどう戦うべきか?重要な鎌田の動きと両者の布陣の噛み合わせ。
カタール・ワールドカップが、開幕した。
日々、熱線が繰り広げられている。サプライズがあり、ドラマがある。フットボールの醍醐味が、存分に堪能できる大会となっている。
■ドイツ撃破とコスタリカ戦の敗北
森保ジャパンは、今大会でサプライズを起こしたチームのひとつだった。グループE第1節で、ドイツを2−1で下した。この勝利とサウジアラビアのアルゼンチン撃破は、世界に衝撃をもって伝えられた。
だが日本代表はグループE第2節でコスタリカ代表に0−1と敗れている。2連勝して入ればグループ突破に大きく近づいていただけに、期待から落胆への変化が大きかった。
だが、まだ終わったわけではない。
グループEは1位スペイン(勝ち点4)、2位日本(勝ち点3)、3位コスタリカ(勝ち点3)、4位ドイツ(勝ち点1)という状況だ。そして、日本にはグループE第3節のスペイン戦が残されている。
■日本の戦い方
そのスペインに対して、日本はどのように戦うべきだろうか。
まず、留意しておかなければいけないのは、現在のスペインは“チキ・タカ”のフットボールを展開するチームではないということだ。
“チキ・タカ”とは、2000年代後半に流行した言葉だ。大枠で、「パスサッカー」を意味するものである。
2008年から2012年頃まで、バルセロナとスペイン代表に黄金時代が到来した。その強さとプレースタイルを端的に表すワードとして、“チキ・タカ”の文字がメディアに踊った。
だがルイス・エンリケ監督のチームは、決して“チキ・タカ”ではない。無論、ポゼッションを重視するスタイルは維持されている。しかしながら、セルヒオ・ブスケッツ、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、ダビド・シルバ、セスク・ファブレガスらが中盤で躍動していた時のスペインとは異なり、より縦に速いフットボールが嗜好されている。
ボール保持、組織的なプレス、ショートカウンター。ポゼッションとトランジションを織り交ぜたようなフットボールが、現在のスペインのスタイルだ。
スペインは最終ラインの設定を高くしている。前からプレスを“ハメる”際に、全体をコンパクトに保つためだ。
狙いのひとつ目は、ここだ。最終ラインの設定が高い、それはつまりGKとDFの間には膨大なスペースが広がっていることを意味する。
スペインのCBは裏のスペースのケアが決して得意ではない。今大会、CBにはロドリ・エルナンデスとアイメリック・ラポルトが入っている。しかし、日本戦ではローテーションを行う可能性がある。例えば、代役のエリック・ガルシアは所属するバルセロナで、度々背後のスペースを突かれて失点に関与している。そこを徹底的に突く、というのは有効な手段だ。
■アンカー潰し
スペイン守備陣の裏のスペースを突く。そのためには、当然、どのようにしてボールを奪うかが重要だ。それが狙いのふたつ目になる。
森保ジャパンに提唱したいのは、アンカー潰しだ。
少し時を遡る。スペインは9月に行われたUEFAネーションズリーグで、スイスに1−2と敗れている。このゲームで、スペインはスイスを相手に最後まで苦しんだ。その要因の一つが、“アンカー潰し”が行われたからだ。
スペインとスイスの試合は大いに参考になる。スイスの【4−2−3−1】が、日本と同じシステムなのだ。
スペインは【4−3−3】で、アンカーにブスケッツを配置する。このブスケッツのところを、トップ下の選手がマークする。日本で言えば、鎌田大地が担当するタスクだ。
相手の2枚のCBに対しては、1トップがプレスにいく。両SBには、両サイドMFをぶつける。これを徹底することで、スペインのビルドアップを機能不全に陥らせる。
そして、ボールを奪取した際には、素早く攻撃に出る。裏のスペースを、シンプルに使うのだ。
■善戦は過去の話
今回のスペインの招集メンバーで、サプライズと言えるのは、ウーゴ・ギジャモンとアンス・ファティの招集くらいだった。
31歳以上の選手はブスケッツ、アスピリクエタ、アルバの3選手のみだ。ガビ(18歳)、ペドリ(19歳)を筆頭に、若い選手たちが揃っている。平均年齢は25.2歳である。
そう、スペインは非常に若いチームである。
ただ、経験不足かと問われたら、そうではない。19選手が、EURO2020に参加しているのだ。
死角が見当たらない、とまでは言わない。だが、倒すのが簡単な相手ではないことは自覚すべきだ。無論、東京五輪での善戦は忘れた方がいいだろう。
最後のゲームになるかも知れない。しかし、いやだからこそ、森保ジャパンには全力でスペインにぶつかって欲しいところだ。
※文中の図は全て筆者作成