なぜシティに“制裁”が下ろうとしているのか?ペップ、ハーランド、デ・ブライネ…主力の去就と今後の問題
マンチェスター・シティが、窮地に追い込まれた。
現地時間6日、プレミアリーグがシティに財務規則の違反があることを指摘。シティ側には100件以上の違反があるとされ、その判断と結果は第三者調査委員会に委ねられている。
今冬の移籍市場で、プレミアリーグでは、8億2980万ユーロ(約1160億円)が補強に投じられた。
リーガエスパニョーラ(3180万ユーロ)、セリエA(3120万ユーロ)、ブンデスリーガ(6830万ユーロ)と比較しても、プレミアの補強費は頭抜けている。
最もお金を使ったのはチェルシーだった。3億2950万ユーロ(約461億円)を費やして、8選手を確保。移籍市場最終日には移籍金1億2100万ユーロ(約169億円)でベンフィカからエンソ・フェルナンデスを獲得して話題を呼んだ。
■プレミアリーグの資金力
プレミアリーグのクラブが補強に大金をはたけるのには、理由がある。
例えば、ラ・リーガには、サラリーキャップ制がある。大雑把に言えば、所属する選手とコーチングスタッフの総年俸額と移籍金の減価償却費等を70%以下に抑えなければいけないというルールである。
それがプレミアリーグには基本的にない。当然、高年俸を望む選手は、プレミアリーグへと流れやすくなる。
また、プレミアリーグでは、テレビ放映権の分配が均等になされる。1992年の創設時点で、すでに放映権と資金分配のモデルの一元化に踏み切っていた。一方、ラ・リーガがそこに着手したのは2015年だ。中長期スパンでの戦略が実り、プレミアリーグでは競争力が維持され、なおかつ中位から下位のクラブでも資金が確保できる状態で補強に動けるようになっていた。
加えて、大きいのが外資の影響である。
プレミアリーグでは近年、外国人オーナーの参入が盛んだ。1部の20クラブのオーナーの国籍は、イギリス、アメリカ、イタリア、中国、ギリシャ、サウジアラビア、タイ、アブダビ、エジプトとまさに多様化している。
■主力の去就と問題点
シティ、あるいはニューカッスルのようなクラブは実質上の「国家クラブ」だ。彼らの目的はお金ではない。サッカーを通じて自国のイメージを高める狙いが、背景にはある。
イギリス国外では、近年、パリ・サンジェルマンがそのモデルケースとなっている。2011年にナセル・アル・ケライフィ会長が就任したパリSGは、ネイマール、キリアン・エムバペ、リオネル・メッシとスタープレーヤーを次々に獲得。目標であるチャンピオンズリーグ優勝こそ果たしていないが、カタールという国のイメージアップの成果はすでに十分に挙がっている。
「イングランドのフットボールの成功の時代。シティに責任があるとしたら、その光が消え去ってしまうことになる」とはイギリス人ジャーナリストのバーニー・ローナイの言葉だ。
「シティは規則違反を侵しただけではなく、イングランドのフットボールを裏切ったことになる。その期間に14個のタイトルを獲得して、好みの選手を確保して、世界最高の監督を留めていた。それは巨額の資金によって成り立っていた。処分を受けるとしたら、厳しいものでなければいけない」
現状、シティにどのような処分が下されるかは明確になっていない。罰金、勝ち点剥奪、降格、様々な可能性がある。
「私に嘘をついていたら、その翌日に私はいなくなる。私はクラブの人たちにそのように言っていた」と以前ジョゼップ・グアルディオラ監督は語っていた。
グアルディオラ監督だけではない。ケヴィン・デ・ブライネ、ベルナルド・シウバ、アーリング・ハーランド…。多くの主力選手が、処分次第で移籍に傾く可能性がある。
一方、シティを“追放”しても話は終わらないかもしれない。現に、先の冬のマーケットで、チェルシーなどはシティ以上に補強に資金を投じている。「第二のシティ」「第三のシティ」を生んでは意味がない。構造的な改革が、求められている。