ヤンキース田中将大投手の頭部に打球直撃!7年契約最後の年、ファンから声援続々と
アメリカは7月4日、244回目の独立記念日を迎えた。コロナ禍の中、人々は毎年恒例のBBQパーティーをする代わりに、近所で上がった個人花火を見たり自宅でストリーミングを楽しむなど、こじんまりと記念日を祝った。
一方この日はメジャーリーグ(MLB)のニューヨーク・ヤンキースにとって、いよいよ迎えた夏季キャンプの初日でもあった。しかし、本拠地ヤンキースタジアムでは一時騒然の出来事が起こった。マウンドで実戦形式の練習をしていた田中将大投手が、頭部に時速112マイル(約180キロメートル)のライナー(直線的な打球)を受け、倒れ込んだ。
トレーナー陣が駆け寄るも、マウンドに倒れこんだ田中選手はしばらく動けず。
5分ほどしてやっと起き上がり、支えられながらも自力で歩いてクラブハウスへ。ファンからは「歩く方向をトレーナーが指さすほどだから状況は悪そうだ」という心配の声が聞こえてきた。
負傷した田中選手について、ニューヨークタイムズ紙、ヤフースポーツ、MLB.comなど各紙が一斉に報じた。田中選手は病院で精密検査を受け軽度の脳震盪(のうしんとう)と診断されたが、意識ははっきりしており大きな後遺症も見られず、入院せず帰宅したという。
同日夜、田中選手は英語と日本語でこのようにツイートした。
田中選手は日本での愛称はマー君だが、ニューヨークでは「Masa」や「Tanaka」と呼ばれ、この7年間親しまれてきた。野球好きの人と話をして筆者が日本人だとわかるとだいたい「I like Tanaka」と、田中選手の話になる。それほど当地では「日本=ヤンキースのMasahiro Tanaka」が浸透している。筆者は5年前の8月にヤンキースタジアムで田中選手の登板試合を見たが、彼がマウンドに登場すると大歓声となり、彼に対するファンからの厚い信頼と人気ぶりを直接肌で感じたものだ。
それほどの人気ものだから、今回の負傷が明るみに出ると一時は「Tanaka yankees」でツイッターのトレンド入りするほどの騒ぎとなった。ファンからは「Masaは大丈夫か」「心が折れた」「1日も早い回復を祈る」「チャンピオンよ、早く良くなれ」という心配や励ましの声援が多く寄せられた。特に「We love you, Masa」(俺たちファンは大好きだぞ)というメッセージが数えきれないほど寄せられ、田中選手が今やヤンキースには欠かせない存在であることを窺わせる。
怪我の一報を知り誰もが数日は休養するのかと思っていた。しかし田中選手は翌5日の正午過ぎには再びマウンドに登場して歩いたりと、いつも通りの姿を見せた。食欲や睡眠に特に変化はないという。なんたる強靭な肉体と精神の持ち主か!
ヤンキースのマネジャー、アーロン・ブーン(Aaron Boone)氏の4日の発表では、田中選手について、レギュラーシーズンが開幕する最初の週からの登板を考えていたが、負傷によりそれが可能かどうかは未定になったということだった。しかし、翌日の同選手の姿を見て安心したと胸をなで下ろした。球団側は、数日間は慎重に経過観察をしていくということだ。
新型コロナウイルスの感染拡大により開幕日が延期となり、選手の感染、契約内容、ファンの失望、チケットの払い戻しなどで混迷を極めていた今季のメジャーリーグ。4日にも、新たにヤンキースの2選手の陽性判定が発表されている。しかし無観客という条件で開幕が決まり、現在最終的な交渉が進められている。最大70試合となる模様で、開幕日は7月15日から20日の間で最終調整中とされてきた。最新の情報では、ヤンキースの開幕は7月23日になりそうだ。
田中選手はヤンキースと総額155ミリオンドル(約155億円)で7年契約を結んでおり、今年はその契約の最後の年にあたる。ファンの期待を一身に受ける田中選手のヤンキース最後のシーズンを、今年はスクリーン越しに応援したい。どうぞご無理をせずに!
(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止