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ワシントンの桜、東京よりも早く満開に

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(写真:ロイター/アフロ)

東京の桜(ソメイヨシノ)は21日の開花以降、足踏みをしています。写真は、27日(日)の桜の様子ですが、まだまだ固い蕾が多く見られました。

日曜日の桜 まだ蕾が多い様子
日曜日の桜 まだ蕾が多い様子

一方、遠く離れたアメリカ・ワシントンDCでは、25日(金)ポトマック川沿いの桜が満開となりました。今冬は暖冬だったために、例年に比べて約10日も早く、ピークを迎えたのです。

11月は月間平均気温と比べて3.5度、2月はなんと6.5度も高かった
11月は月間平均気温と比べて3.5度、2月はなんと6.5度も高かった

ちなみに、アメリカの「満開」の状態とは、70%の花が咲いた状態のことを言い、日本の基準である80%とは若干異なります。

ワシントンの桜の話

ワシントンDCの中心に位置する国立公園には、約3,000本の桜の木が川沿いに植えられています。これらの桜は、1912年に日米の友好の印として、当時の東京市から贈られました。実は、1910年にも2,000本の桜が寄贈されているのですが、害虫が付いているなど問題で、焼却されてしまったという経緯があります。

これらの桜の木々は、第二次大戦の戦禍をくぐってきました。

日本軍のパールハーバー侵攻を受けて、4本の木が何者かに斬られたことがあります。戦争中は木々を守るために、「オリエンタルチェリー」として、日本名を伏せていた時代もあったようです。

しかし、反対に日本の桜が救われたこともありました。

もともとワシントンに贈られた桜は、荒川沿いの桜だったのですが、戦争中焼けてしまったために、戦後ワシントンから再び木を分けてもらい、育てたと言います。まさに桜が、日米の架け橋としての役割を果たしたと言えますね。

桜の開花予想

日本では毎年、多くの人たちが桜の開花予想を楽しみにしています。以前は気象庁が行っていましたが、今では民間の気象会社が予想を競っています。こうした桜の予想は、自然をこよなく愛する日本人ならではのアイディアだと思うでしょうが、実は、元をたどればアメリカに行き着くようです。

日本の桜開花予想は、1955年頃に、気象庁の職員であった市川寿一氏らが、桜のつぼみの重さを測って予測したことが始まりです。そして、この元のアイディアは、アメリカの生物気象観測にあったと言われているのです。

実際、ワシントンの桜を管理する国立公園のホームページには、満開の予想日だけではなく、桜の成長を5段階に分類して、その日にちを克明に記録しており、観察の徹底ぶりが分かります。

日本のお花見にはあって、アメリカのお花見にはないもの

ところで、桜がアメリカに送られたきっかけは、アメリカ人紀行作家であったエリザ・シドモア女史が来日をした際に、日本人が花見をする様子を見て、是非アメリカでも再現したいと思ったことにありました。

桜の木が海を渡ることで、彼女の思いは実現したのですが、しかし、アメリカのお花見と日本の花見は、ある決定的な違いがあります。

それは何かというと、お酒の有無です。日本では公共の場での飲酒が禁止されていませんが、アメリカではご法度。そのこともあって、日本風の花見を経験したいと、訪日する観光客も増えているようです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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