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エルニーニョ さらに夏まで

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
エルニーニョ現象が終息した季節 春と冬が全体の8割を占める(著者作画)

 エルニーニョ現象がこの夏まで続く可能性がでてきた。しかし、日米豪の見解は異なり、米は春まで、豪は発生そのものに慎重な姿勢だ。この夏は冷夏になるのだろうか?

エルニーニョ この夏まで続く確率70%

 気象庁は12日、定例のエルニーニョ監視速報を発表しました。それによると、1月のエルニーニョ監視海域の海面水温は基準値よりも0.7度高く、昨秋からエルニーニョ現象が続いています。

 海面水温は先月と比べて、やや低下しましたが、一方でエルニーニョ現象を支えるもうひとつの柱「東風(貿易風)」が弱まってきました。海洋と大気、両方の歯車がかみ合ってきたようです。

 そのため、春までとみられていたエルニーニョ現象は、この夏まで続く可能性が出てきました。気象庁の予測では70%の確率です。しかし、エルニーニョ現象の現状と予測を読み進めていくうちに、日米豪で見解が異なっているのに気がつきました。

米は春まで、豪は発生まだ

 米海洋大気庁が14日に発表したエルニーニョ情報によると、今年に入ってエルニーニョ現象が発生し、現在は弱い状態にあるとしています。春まで続く確率は55%で、それ以降も続く可能性は50%か、さらに低くなる見通しです。その理由として、春以降の予測は不確実性が高いことを挙げています。

 さらに、エルニーニョ現象の発生そのものに慎重な姿勢を続けているのがオーストラリア気象局です。現在も平常に近い状態が続いていて、春にかけて、エルニーニョ現象の発生により近づく可能性があるとしています。

 こちらは、赤道を中心とした海面水温の平年との差を示した図です。海面水温が平年と比べ高い海域を暖色に、平年と比べ低い海域を寒色で表しています。上図は今年1月、下図は前回のエルニーニョ現象時の2015年12月です。

赤道を中心とした海面水温の平年偏差図(上図は2019年1月、下図は2015年12月)気象庁ホームページより(赤丸は著者加工)
赤道を中心とした海面水温の平年偏差図(上図は2019年1月、下図は2015年12月)気象庁ホームページより(赤丸は著者加工)

 赤丸の部分を比べると、違いは歴然。前回のエルニーニョ現象は過去3番目の規模で、海面水温の基準値との差は最大で3度(2015年12月)もありました。前回は特別としても、現在のエルニーニョ現象は弱い印象です。

この夏は冷夏?

 冬も終わっていないのに、夏の天気を気にするのは少々、気が早いと思いますが、今月25日(月)には暖候期予報(この夏の見通し)が発表されます。エルニーニョ現象が夏まで続くとなれば、冷夏という言葉が頭の中をよぎります。実際はどうなのでしょう?

 こちらはエルニーニョ現象が発生しているときの夏の平均気温を示したグラフです。気温が平年と比べ低くなった割合(青)、平年並みの割合(白)、平年と比べ高くなった割合(赤)を示しています。

エルニーニョ現象が発生しているときの夏の平均気温(気象庁ホームページより、著者作画)
エルニーニョ現象が発生しているときの夏の平均気温(気象庁ホームページより、著者作画)

 青が目立つように思えますが、統計的に意味があるのは星マークでしめした北日本で平年並みか低い、そして西日本の低いだけ。

 東日本は冷夏になるとは言い切れず、半分以上はいつもの夏または、猛暑です。大規模なエルニーニョ現象が発生していた2015年は東京で猛暑日(日最高気温が35度以上の日)が8日も続きました。今も、その記録は破られていません。

【参考資料】

気象庁:エルニーニョ監視速報(No.317)、2019年2月12日

米海洋大気庁(NOAA):EL NINO/SOUTHERN OSCILLATION (ENSO) DIAGNOSTIC DISCUSSION、14 February 2019

オーストラリア気象局:ENSO Wrap-Up、El Nino WATCH for autumn、5 February 2019

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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