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50%が若手を希望…イタリアのサポーターがセリエ勢に期待する補強とは

中村大晃カルチョ・ライター
ファンが望むのはパトリック・シックのような選手か(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

ミランの積極的な補強が目立つイタリア・セリエAのここまでのカルチョ・メルカートだが、イタリアのサポーターはクラブがどんな補強をすべきだと考えているのだろうか。

イタリア紙『コッリエレ・デッロ・スポルト』が9日、サポーターへのアンケートの結果、ファンは将来有望な若手の獲得を望んでいることが分かったと報じた。

特にビッグクラブになればなるほど、サポーターは新シーズンへの期待感を高めるような大物の加入を望むものだ。しかし、イタリア勢は財政難にあえぐクラブが少なくなく、レアル・マドリーやバルセロナ、マンチェスター・ユナイテッドといったメガクラブと資金力で競えなくなっている。

国内で「1強」状態の王者ユヴェントスこそ、昨年夏のゴンサロ・イグアイン(9000万ユーロ=約117億1000万円)を獲得するなど大金を投じている。だが、セリエのクラブが世界的なビッグネームを呼び寄せるのは難しくなっているのが現状だ。

実際、『コッリエレ』のアンケートでも、3割以上のサポーターが、この夏も優れた選手の多くはセリエA以外のリーグに向かうと予想。イタリア勢にそれだけのタレントを獲得する力があると回答したのは、わずか2割にとどまった。

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欧州のビッグクラブと競えない理由について、サポーターの27%が資金力の差を挙げた。「カネの力」には勝てないという現実を認識しつつ、「格差社会」を助長する現在の市場システムへの不満(19%)もうかがえる。「セリエに魅力がない」という回答が10%未満だったのはプライドか。一方で8%が「自軍選手を残さず低レベル選手を狙うクラブや幹部の戦略ミス」と“自己批判”している。

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いずれにしても、他リーグとの競争で分が悪いと自覚している以上、ファンがビッグネーム加入より長期的な展望を求めるのも必然だろう。じつに半数のサポーターが、獲得すべき選手に「将来を見据えて成長させるべき若手」と回答した。

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「コストはかかるがすぐに保証を与えられるすでに確立されたビッグネーム」と答えたのは、わずか5%。「いわゆるお買い得、一流になり得る低コストの選手」を望んだのも、12%にとどまっている。

その意味で評価されるのが、ユヴェントスのパトリック・シック獲得だ。昨季、サンプに加入したシックは、リーグ戦で先発出場わずか14試合ながら11ゴールをマーク。圧倒的な“コスパ”の良さで強豪の注目を集めた。

ただ、シックを確保できたのは、ユーヴェがセリエの他クラブより資金面やブランド力で優位だからでもある。実際、サポーターの20%はユーヴェがこの夏もイタリアで最も補強に成功するクラブと予想した。中国資本となり、すでに7選手を獲得するなど勢いが止まらないミランが15%で続くと予想されている。

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一方で、ここまであまり動きがないインテルや、現有戦力をベースとしているナポリ、主力の流出が少なくないローマといったその他の強豪たちは、あまり期待されていないようだ。また、8%と一定数のサポーターが、「最高の補強をするクラブ」が「なし」と悲観的な回答をしている。

いずれにしても、マーケットは何が起きるか決して分からない。「一寸先は闇」という世界だ。サポーターが長期的な展望を望むといっても、実際に夏が終わりに近づき、補強が順調でなければ、彼らの主張が大物加入に変わることも少なくない。8月いっぱいまで続く長丁場のマーケットで、セリエの各クラブはどのような動きをみせるのか。今後の進展も注目される。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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