ペット・ショップ・ボーイズが2019年4月、19年ぶりの単独来日公演。ポップに徹するライヴ
2019年4月、ペット・ショップ・ボーイズが“The Super Tour”と題したジャパン・ツアーを行う。
ニール・テナントとクリス・ロウの2人からなるペット・ショップ・ボーイズは1981年、英国ロンドンで結成。歌わずにいられない、踊らずにいられないエレクトロ・ポップで、世界のライヴ会場をダンスフロアにしてきた。
近年では2002年のフジ・ロック・フェスティバル、2007年と2013年のサマーソニックと、夏フェス出演で日本をヒートアップさせた彼らだが、今回の来日は単独ジャパン・ツアーとしてはなんと19年ぶりとなる。
ペット・ショップ・ボーイズの音楽を貫いているのは、とにかく徹底したポップへのこだわりだ。ポップのためなら何でもやる、どんな手段を使ってでもリスナーを楽しませるのが彼らであり、一度そのサウンドに魅せられたら何十年経とうが冷めることがない。1985年、初めて「ウェスト・エンド・ガールズ」を耳にしたときのインパクトが今なお耳と心に残っているオールド・ファンも、ライヴ会場を訪れることになるだろう。
そんなポップのセンシビリティは35年近くを経た今日でも健在で、現時点での最新アルバム『スーパー』(2016)からの「ザ・ポップ・キッズ」はライヴのハイライトのひとつとなっているし、最新EP『Agenda』(2019)にも珠玉のポップ・チューンが収められている。
メロディやコーラスに加えて、それぞれの楽曲の起伏も彼らの魅力だ。「哀しみの天使 It's A Sin」や「ジェラシー」の大仰過ぎて涙が溢れ出すドラマ性、「ビーイング・ボアリング」や「アイ・ゲット・アロング」の哀感と切なさなど、彼らの楽曲は常に我々を喜ばせ、驚かせ、悲しませてくれる。
自らが優れたコンポーザー/ソングライターであるにも拘わらず、何の躊躇もなく他のアーティストのカヴァーをやってのけるのがペット・ショップ・ボーイズだ。ヴィレッジ・ピープルの「ゴー・ウェスト」やエルヴィス・プレスリーでお馴染みの「オールウェイズ・オン・マイ・マインド」、フランキー・ヴァリとU2を合体させた「君の瞳に恋してる/ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネイム」など、カヴァー曲の選曲はベタとすら呼べるものだ。
「ニューヨーク・シティ・ボーイ」でヴィレッジ・ピープルの「Y.M.C.A.」っぽいフレーズを一瞬だけ挿入するあたりもニヤリとさせられる(ミュージック・ビデオでは、このとき伝説のディスコ“スタジオ54”が映し出される)。
彼らのオリジナル曲であっても、ポップを追求するあまり、既存の曲に似てしまうこともあったりする。「哀しみの天使」はキャット・スティーヴンスの「ワイルド・ワールド」(Mr.BIGによるカヴァーでも有名)に似ていると批判を受け、イギリスのDJジョナサン・キングが「哀しみの天使」そっくりのアレンジで「ワイルド・ワールド」をカヴァーしたことがあった。
(ちなみにジェネシスを“発見”したことで知られるキングだが、後に十代の少年への性的虐待で刑務所入りした)
ただ、ポップを追求するといっても、知性のレベルを下げることがなく、微妙にアートやインテリの香りを漂わせるのが、また彼らのニクイところだ。
「いつもはこんな僕じゃない」には「服をすべて脱ぎ去って“春の祭典”に合わせて踊りたい気分」という一節があるが、あえてヴィヴァルディの名前を出さなかったり、「ビーイング・ボアリング」では“1920年代の有名な作家の奥さん”という人物への言及があるが、これは『華麗なるギャツビー』で知られるF・スコット・フィッツジェラルドの奥方で自らが作家でもあるゼルダ・セイヤーを指している。そんなあたりから、“君たちなら判っているよね?”というメッセージが伝わってくる。
過剰にインテレクチュアルになってしまうことなく、少しばかりスノッブなあたりが、ポップを突き詰めながらポップを逸脱することがない彼らならではである。
そんなありったけのポップを届けてくれるペット・ショップ・ボーイズの来日ステージは観衆を歌わせ、踊らせ、笑わせ、泣かせる。あらゆる感情が渦巻く中、無いものはたったひとつ。我々は決して彼らに“ビーイング・ボアリング”=退屈させられることはないだろう。
【PET SHOP BOYS / The Super Tour】
- 2019年4月1日(月)東京・日本武道館
18:00 open / 19:00 start
- 2019年4月2日(火)大阪・フェスティバルホール
18:00 open / 19:00 start
日本公演ウェブサイト