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[ドラフト候補カタログ] 俊足強肩は掘り出し物かも? 笹原操希(上田西高)

楊順行スポーツライター
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 北信越の雄・星稜高(石川)を止めたのがこの男だ。2020年秋季北信越大会準決勝。4対4と同点で迎えた8回の守り、星稜は2死二塁から九番打者が中前にはじき返す。これを体の左側で処理した上田西高のセンター・笹原操希が本塁へ好返球。遠投105メートルの強肩に走者はタッチアウトとなり、終盤での勝ち越し点を阻止した。その裏に1点をもぎ取った上田西が勝利し、初めてのセンバツ出場を当確にすることになる。

星稜の連続出場を止めた強肩

 星稜はこの試合まで、北信越大会で春秋通じて17連勝。17年春から19年秋まで6大会すべてで決勝に進出し、5回の優勝を飾っていた。その間19年夏の甲子園では、奥川恭伸(現ヤクルト)をエースに準優勝を果たした横綱である。笹原の好守備は、その横綱の甲子園6季連続出場(中止になった20年センバツを含む)を阻むビッグプレーだった。

 上田西・吉崎琢朗監督も、笹原の守備力をこう評価する。

「秋の県大会、松商学園高との準決勝では、ライナーを地面すれすれでダイビングキャッチ。二塁にいた走者が戻れずにゲッツーになりましたが、ふつうの選手ならありえないファインプレーでした」

 1年夏の大会から抜擢された好素材は、その秋の新チームから四番に座り、打率6割で県大会優勝に貢献。20年秋には、「シート打撃で笹原を一番にすると、なぜか初回に点が入る」(吉崎監督)と斬り込み隊長に指名され、事実チームはそこから6試合続けて初回に得点した。

 準優勝した北信越でも、一番で16打数7安打の大当たり。笹原本人も、

「僕が初回に先制のホームを踏めば、まず負けないんです」

 と、50メートル6秒フラットの足を生かせる打順に居心地のよさを感じたようだ。結局、秋の公式戦は打率.442を記録。敗れはしたものの、21年センバツでも、広島新庄高との初戦で2安打を記録している。

 上田西といえば、セガサミー・草海光貴の出身校。15年夏の甲子園で宮崎日大高を完封し、母校に甲子園初白星をもたらした草海は今ドラフトの上位候補で、笹原も同じ長野南シニアの出身だ。最後の夏は、優勝した松商学園に敗れて甲子園出場はかなわなかったが、高校通算24本塁打とパンチ力もある。注目度は低くても、使い勝手のいい選手といえそうだ。

ささはら・みさき●上田西高●178cm75kg●右投右打●外野手

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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