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ハリケーン・ハービー、ニ度目の上陸 これから懸念されること

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
冠水したヒューストン近郊のカーディーラー(29日)(写真:ロイター/アフロ)

全米第4位の人口を抱えるヒューストンで、500年に一度と言われる洪水が発生しています。これはハリケーン・ハービーの上陸と停滞によるもので、アメリカ本土史上最大となる1,300ミリ以上の雨が降りました。

(↑15時間で水かさが、どんどん増している様子)

ハリケーン・ハービーのこれまで

ハリケーン・ハービーは25日(金)テキサス州南部に上陸、その時の勢力はハリケーンの分類で上から2番目に強い「カテゴリー4」でした(上陸時:中心気圧938hPa、最大風速58メートル)。

この規模のハリケーンが同州に上陸したのは、56年ぶりのことです。

上陸時の赤外画像 (NOAA)
上陸時の赤外画像 (NOAA)

上陸後急速に弱まったものの、速度を落とし、テキサス南部に停滞。230万人が住むヒューストンでは5日連続で雨が降り続き、近郊では総降水量が1,318ミリの雨に達しました。これは一つの嵐に伴う雨量として、アメリカ本土における最高記録です。

なお、全米における記録は、1950年ハリケーン・ヒキによりハワイで観測された1,321ミリですから、わずか3ミリ差です。

テキサスで起きていること

この洪水による死者数は、救助中に亡くなった警官一人を含む18人と伝えられています。ヒューストン周辺では1万3千人が救助され、2万人が避難をしているもようです。特に被害の大きいハリス郡では30%が浸水し、壊滅的な被害が起きています。また、複数の略奪被害も報告されており、夜間の外出禁止令も出されている状況です。

ヒューストンでは雨あがるも…

National Weather Service
National Weather Service

ヒューストンではすでに雨が上がっています。さらに週末にかけても、概ね晴れの予想となっています。

被害の復興には何年もかかるといわれていますが、それ以外にも、洪水で流れてきた蛇が住宅地に出没、さらにヒアリの巣が水上に浮かんでいる様子も目撃されています。また蚊の大量発生によるデング熱なども懸念されるなど、新たな危険が生まれています。

ヒアリの巣↓

今のハービーと今後の予想

今、ハービーはどこにいるのでしょうか。

National Hurricane Center
National Hurricane Center

ハービーは現地時間30日(水)朝、テキサスの隣のルイジアナ州に再上陸しました(上陸時の勢力:中心気圧990hPa、最大風速21メートル)。

ルイジアナ州は2005年にハリケーン・カトリーナで大打撃を受けた場所です。ジャズの町として名高い、州最大都市のニューオーリンズでは当時、8割が浸水、700名以上が亡くなりました。カトリーナ以前のニューオーリンズ東部の人口は9万人でしたが、被害のあと6万5千人に減少しています。

ハービーは弱まりながらも、週末にかけてアメリカ東部を縦断する見込みで、被害が広範囲に広がる可能性もあります。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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