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KISSのジーン・シモンズは指サインを商標登録できるのか?

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:米国特許商標庁出願書類

「ジーン・シモンズ、親指直角版メロイックサインを商標登録出願」というニュースがありました。「ロックバンドKISSのジーン・シモンズ氏が、ステージなどで使う指サインのマークを米特許商標庁(USPTO)に商標登録出願した。」ということです(記事には9月7日に出願されたと書いてありますが、USPTOの記録上は今年の6月9日に出願されています)。

出願番号は87482739です。これから審査が始まりますので、登録されるとしてもしばらく先です。出願人は(事務所ではなく)ジーン・シモンズ本人、指定役務は” Entertainment, namely, live performances by a musical artist; personal appearances by a musical artist. ”(音楽の演奏、音楽アーティストとしての出演)です。

出願書類には以下の写真がサンプルとして添付されています(これが商標的使用であるかどうかは議論の余地がありそうです)。

出典:米国特許商標庁出願書類
出典:米国特許商標庁出願書類

私の場合、スタンハンセンの「ウィー」、または、ジョージ・クリントン等のP-Funk系の人がやっている指サインを思い出してしまいますが、このハンドサインには様々な意味で使用されており、一般には、コルナ、メロイックサイン、Sign of the horns等と呼ばれています(参考Wikipediaエントリー)。親指を伸ばすタイプと伸ばさないタイプがあって、ロックの人がやるサインは正式には親指を伸ばさないようなのですが、なぜかこの出願は親指を伸ばすタイプになっています。

シモンズ氏は「このサインを1974年11月14日にライブツアーのステージで使ったとしている」そうです(これも商標的使用であるかどうかは議論の余地がありそうです。)

さて、指サイン(ハンドジェスチャー)が商標登録の対象になるかが気になるところですが、この出願書類の書き方だと、単にこの手のイラストをマークとして出願したと解釈されると思います(であれば、たとえば指によるOKサインのイラストを商標登録出願するのと同じなのでたいして珍しい話ではありません)。

仮にこの出願が(イラストとして)商標登録されても、これと類似のイラストをコンサートのポスター等に使うと商標権の侵害にはなり得るものの、たとえば、ミュージシャンがステージ上でこのハンドジェスチャーを行なっても商標権の侵害にはならないでしょう。

ジーン・シモンズ側の意図がよくわかりませんが、審査過程で「これはハンドジェスチャーのイラストの出願ではなく、ハンドジェスチャーそのものの出願である」と主張するつもりなのかもしれません。だとすれば非常に珍しいケースと言えます。(本記事を書くにあたって"ハンドジェスチャーを商標登録出願した"という一般報道記事(たとえばこちら)をチェックしましたが、単に”ハンドジェスチャーのイラスト”を商標登録出願したという話でした。)

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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