宮城県でスキー場の閉鎖も 今季の暖冬は未来のリハーサルか
きのう3月3日をもって、宮城県川崎町にあるセントメリースキー場が営業を終了しました。1990年に開業したスキー場で、高速道路からのアクセスの良さなどからピーク時には年間15万人以上が利用したものの、昨シーズンは4万人ほどにまでその数が減っていたそうです。
また同じ宮城県内で、加美町のやくらいスキー場は早くも来季(2024~2025年の冬)は営業しないことを決定しました。1年近くも前のこんな時期に営業しない旨を発表するのは異例です。
いずれも、スキーブームが去って来場者数が減っていることが大きな理由ではありますが、もう一つの大きな理由として近年の雪不足が経営に影響を及ぼしているという点があります。
特に今シーズンの暖冬ぶりは記録的なもので宮城県の山沿いにおいても降雪量は平年を大きく下回っています。セントメリースキー場が今シーズン営業できた日数はたったの7日、やくらいスキー場にいたってはわずか2日のみの営業にとどまりました。
この冬の暖冬は、エルニーニョ現象や、北半球の寒気の偏りなどが主要な原因で、来年以降も同じレベルの暖冬が必ず続くわけではありません。ただこうした年々の変動を“底上げ”するように作用していると考えられるのが地球温暖化です。
上のグラフは宮城県内で最も標高の高い所にある駒ノ湯アメダスの累積降雪量の推移です。(今年は2月29日までの合計)
今シーズンは過去最少記録を更新する可能性が非常に高くなっていますが、それとは別に2016年以降は緩やかな右肩下がりとなっており、累積で1000cmを超える降雪は観測されていません。
地球温暖化は「将来起こるもの」ではなく「現在進行形で起こっているもの」です。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が2022年に発表した第6次評価報告書では「疑う余地がない」とまで表現されています。
仮に今後も温暖化が進行すれば、今世紀末には東北地方の降雪量は今より70%前後も少なくなる可能性があると予想されており、スキー場を経営していくことは今以上に難しくなるおそれがあります。(1980~1999年の20年平均値と2076~2095年の20年平均値予想の比較)
雪が少なくなることの影響はスキー場だけにとどまりません。東北地方においては、冬の間に山に降り積もる雪は、春から夏にかけて少しずつとけて川に注ぎ込むことで翌夏までの水資源になります。いわば「天然のダム」としての機能があるのですが、雪が少なくなるということはこの水資源にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
今シーズンの暖冬はあくまで様々な要因が重なったことによるものですが、今後温暖化が進めばこうした暖冬少雪が常態化する可能性もあります。この暖冬を“リハーサル”と捉えて未来の日本の姿を想像し、私たちの選択や行動が将来の東北地方の景色をどう変えてしまうのか、改めて考えてみてください。