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2016年に迎える周年災害・事故 教訓に学びしっかりと備えたい

福和伸夫名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長
(写真:ロイター/アフロ)

新年明けましておめでとうございます。年明けですから、今年に周年を迎える出来事を振り返ってみたいと思います。

300年前に将軍になった徳川吉宗

300年前の1716年は、徳川吉宗が8代将軍に就任した年に当たります。これ以前には、1702年赤穂浪士の討ち入り事件の翌年、1703年に元禄関東地震が発生、その後、1704年羽後陸奥地震、1707年宝永地震、宝永富士噴火、1710年因伯美地震などと災害が続きました。1705年に紀州藩主になった吉宗は、質素倹約の藩政により、宝永地震で甚大な被害を受けた紀州藩の財政を立て直しました。宝永地震は、有史以来最大の南海トラフ地震と言われ、49日後には富士山も噴火しています。富士山はその後300年間沈黙しており、南海トラフ地震が切迫している中、気持ち悪いと感じている人も多いでしょう。

紀州藩主を十年ほど務め、将軍に抜擢された吉宗は、新井白石による正徳の知を改め、享保の改革に着手しました。財政再建が有名ですが、町火消しの創設や、防火建築の奨励、火除地の設定など防災分野でも大きな足跡を残しました。江戸では、十万人の死者を出したと言われる1657年明暦大火以降、火災対策が何より重要でした。

周年を迎える災害・事故

今年、周年を迎える戦後の災害・事故には、70年を迎える昭和南海地震(12月21日)、50年の全日空羽田沖墜落事故(2月4日)、40年の唐山地震(7月28日)、安八水害(9月12日)、酒田大火(10月29日)、30年のチェルノブイリ原発事故(4月26日)、伊豆大島・三原山噴火(11月)などがあります。地震、火山、水害、大火、原発、墜落と、全ての災害・事故が有ります。

昭和南海地震(1944年12月21日)

南海トラフ地震の一つで、1944年昭和東南海地震とペアで起きた地震です。敗戦直後に和歌山や四国が強い揺れと津波に見舞われました。この前後の5年間は大地震が続発しました。43年鳥取地震、44年東南海地震、45年三河地震、そして、48年福井地震です。

全日空羽田沖墜落事故(1966年2月4日)

我が国初めてのジェット旅客機事故で、133人もの死者を出した世界最悪の事故でした。この事故を教訓に、フライトレコーダーやボイスレコーダーの設置が義務づけられました。

唐山地震(1976年7月28日)

中国で発生したマグニチュード7.5の直下地震で、中国政府によると死者は24万人余に登り、20世紀最大の地震被害となりました。前年に発生した海城地震で直前予知に成功したことから、予知の失敗が話題になった地震でもあります。

安八水害(1976年9月12日)

長良川が決壊した大規模水害で、岐阜県安八郡安八町の被害が大きかったことから、こう名付けられました。秀吉の一夜城で有名な墨俣町や、輪中の輪之内町も大きな被害を受けました。輪中堤の大切さが改めて見直された水害でもあります。

酒田大火(1976年10月29日)

山形県酒田市の商店街が強風で22.5haも焼失した大火です。その後の速やかな復興は、災害復興の見本になっているようです。地震災害を除くと、我が国最後の都市大火です。

チェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)

旧ソ連・ウクライナでのレベル7の世界最悪の原発事故です。炉心溶融後、爆発し、半径30km以内の地域が居住禁止になりました。残念ながら、我が国でも東日本大震災で、レベル7の福島原発事故を経験することになりました。レベル7の原発事故はこの2つだけです。

伊豆大島・三原山噴火(1986年11月)

噴火見学に観光客が大挙訪れる中、大規模な割れ目噴火が発生し、全島民1万人が1ヶ月間、島外に避難する事態になりました。昨年、口之永良部島でも同様の島外避難を経験したことを忘れないでおきたいと思います。

このように、周年災害・事故を振り返るだけでも、多くの教訓を学ぶことができます。2016年は災害の少ない年になることを祈っていますが、例え災害が発生しても、教訓に学びしっかりと備えていれば、被害を未然に防ぐことができます。

名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長

建築耐震工学や地震工学を専門にし、防災・減災の実践にも携わる。民間建設会社で勤務した後、名古屋大学に異動し、工学部、先端技術共同研究センター、大学院環境学研究科、減災連携研究センターで教鞭をとり、2022年3月に定年退職。行政の防災・減災活動に協力しつつ、防災教材の開発や出前講座を行い、災害被害軽減のための国民運動作りに勤しむ。減災を通して克災し地域ルネッサンスにつなげたいとの思いで、減災のためのシンクタンク・減災連携研究センターを設立し、アゴラ・減災館を建設した。著書に、「次の震災について本当のことを話してみよう。」(時事通信社)、「必ずくる震災で日本を終わらせないために。」(時事通信社)。

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