菅内閣が発足! 岸信夫防衛相の兄は「安倍」前総理~兄が「安倍」で弟が「岸」はなぜなのか
令和2年9月16日、菅内閣が発足しました。
新内閣が組閣され、総理大臣官邸にて、加藤勝信新内閣官房長官から閣僚名簿が発表されました。
その後、宮中において内閣総理大臣の親任式及び国務大臣の認証式が行われ、菅内閣が発足しました。
防衛大臣には、細田派の岸信夫・元外務副大臣が初入閣しました。
岸氏は、衆議院山口2区選出の当選3回で61歳。自民党細田派に所属しています。
岸氏の兄は安倍晋三前総理大臣、父は故安倍晋太郎氏、母は安倍洋子氏、そして、祖父は岸信介第56・57第総理大臣です。
ところで、兄の姓が「安倍」なのに、なぜ「岸」なのか不思議に思った方もいると思います。岸氏は幼少のころに母の兄(つまり叔父)の岸信和氏(岸信介元総理の長男)と養子縁組をしました。そのため、氏が「安倍」から「岸」へ変わったのです。
そこで今回は、養子縁組について考えてみたいと思います。
「養子縁組制度」とは
養子縁組は、人為的に親子関係を創設する制度です。日本の養子制度は、主に次の3つのいずれかを目的として行われています。
1.後継ぎや扶養を目的とする「成年養子」
2.家族関係を安定させることを目的とする「連れ子養子」や相続をみこした「孫養子」
3.要保護児童のための養子
そのほとんどが「成年養子」「連れ子養子」「孫養子」で占められ、要保護児童のための養子は例外的です。
岸防衛大臣の養父の岸信和氏には妻との間に子がいませんでした。そこで岸家の跡継ぎとして養子縁組をしたと推測されます。
養子縁組の成立要件
養子縁組は、養親となるべき者と養子となるべき者との合意に基づく「養子縁組届」が受理されることによって成立します(民法799条)。
未成年養子縁組
養子となる者が15歳未満のときは、その法定代理人がこれに代わって縁組の承諾をすることができます(民法797条1項)。これを「代諾縁組」といいます。
民法797条1項(15歳未満の者を養子とする縁組)
1 養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
2 法定代理人が前項の承諾をするには、養子となる者の父母でその監護をすべき者であるものが他にあるときは、その同意を得なければならない。養子となる者の父母で親権を停止されているものがあるときも、同様とする。
養子縁組の効力
養子縁組が成立すると、次のような法的効力が発生します。
養親の「嫡出子」としての身分を取得する
養子は、縁組成立の日から、養親の嫡出子としての身分を取得します(民法809条)。
嫡出子とは、妻が婚姻中に妊娠した子および妻が婚姻後に出生した子のことをいいます。
ただし、子が養子縁組をしても実親との関係は切れることはありません。したがって、養親と実親との「二重の親子関係」が成立します。この結果、相続権は、養親子相互、実親子相互の2系統に発生します。
未成年養子縁組の親権
未成年養子縁組の親権については、養親の親権に服します(民法818条2項)。
民法818条(親権者)
1.成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2.子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3.親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
養親の氏を称する
氏については、養子は養親の氏を称します(民法810条)。
民法810条(養子の氏)
養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。
岸氏が「安倍」から「岸」へ姓が変更されたのはこのためです。
「法定血族関係」が発生する
養子は縁組の日から、養親および養親の血族との間に、血族間におけるのと同一の親族関係が生じます(民法727条)。これを法定血族関係といいます。
民法727条(縁組による親族関係の発生)
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
縁組の解消~協議離縁
縁組は両当事者の合意によって解消することができます(民法811条1項)。協議離婚と同様、届出によって離縁は成立します。
代諾縁組の場合で、養子が15歳未満のときは、協議離縁は、養親と、離縁後に養子の法定代理人となるべき者の間で行われます(同条2項)。
民法811条(協議上の離縁等)
1.縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。
2.養子が15歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。
冒頭で述べたとおり、兄、祖父に加えて大叔父(故佐藤栄作61・62・63第内閣総理大臣)も総理大臣という華麗なる一族である岸防衛大臣。報道によると菅新総裁としては、外交や安全保障をはじめ、幅広い分野の政策に明るい岸氏の手腕を評価し、防衛大臣への起用を決めたものとみられます。菅内閣での活躍に注目です。