「これから死ぬ、今すぐ来て」:赤とんぼ先生教え子殺害事件から
判決は嘱託殺人。しかしこの事件に限らず、非常識で無理な要求をされたとき、私達はどうすれば良いでしょうか。
■教え子殺害事件判決公判
裁判に関する報道によると、二人は不倫関係があり、はじめ女性側が自殺を試みます。これから死ぬと言われて、男性は女性宅に行き、自殺を止めますが、その後女性は「それならばあなたの家族を殺す」と語ります。男性は、もちろんそれも止めますが、女性はそれならば自分を殺してと頼み、男性が殺害したとされています。
ただし、女性は死亡しているために事実はわかりません。
弁護側は、女性が境界性パーソナリティ障害であるとして、殺害を依頼された嘱託殺人であると主張していました。検察側は、殺してほしいというのも単に男性の関心を引こうとしての言葉だったと主張していました。
判決は嘱託殺人ですが、遺族側は、女性は普通の人間であり、男性によってコントロールされたのだと述べています。
■「これから死ぬ。今すぐ来て」と語る人々
世間では、友人知人恋人から「これから死ぬ。今すぐ来て」と言われて大慌てする人がいます。こんなときは、どうすればよいのでしょうか。
もちろん、あなたにとって最高に大切な人が、本当に追いつめられて発した言葉なら、飛んでいっても良いでしょう。ただし、そんなことは、人生に一度か二度の出来事でしょう。
ところが、中にはこんなことを繰り返す人がいます。時には、恋人でも家族でもない人からこんなことを言われて、振り回される人もいます。
相手の気を引こうとして、死ぬなどと語る人は少なからずいるでしょう。ただ、普通はそれでも常識の範囲内での言動をとるものです。ところが、中には非常識な人もいます。
たとえば、一人暮らしの女性が知人の男性に対して真夜中に電話して「これから死ぬ。今すぐ来て」と言うことがあります。来てくれないと死ぬとか、手首を切るとか、夜の街に出て売春してやるなどと言うこともあります。実際に自殺しようとして未遂に終わることもあります。
そして、そんなことが度々あります。
自殺予防の観点からは、自殺の危機が迫っている人には、危機介入が必要です。力づくでも止めることが必要なこともあるでしょう。ただ、この場合は少し違います。
たとえば、境界例パーソナリティーの人は、強い「見捨てられ不安」を持ち、何とか周囲の人の心をつなぎとめようとします。その方法の一つが、相手に対する無理な要求で、言うことをきかないと、自分を傷つけたり、他人に暴力を振るう人もいます。
以前、ある大学の先生が、交際中の女子学生から「裸になって」と言われてキャンパス内で全裸になる事件もありました。言うことを聞かないと、大変なことになるからだそうです。
■無理な要求をされたとき
夜中に「今すぐ来て」と頼むなど、非常識で無理な要求をする人々がいます。彼らは、悪人ではありません。不安なのです。何とか、相手の心をつなぎとめようとしています。
しかし、要求に全部従ってしまうと、大変です。それは、お互いにとって良いことではありません。そのようなときに、二人だけになるのもトラブルの元です。
もちろん、ケースバイケースです。夜中に車を走らせ、駆けつけることが必要なこともあるでしょう。しかし、ケースバイケースで、そうしてはいけないときもあるでしょう。
自殺を止めるために、電話でゆっくり話して落ち着かせたり、救急車や警察を呼んだり、家族に連絡したり、方法はいろいろあります。家族でもない不安定な異性と夜中に二人だけになってしまえば、トラブルも起きるでしょう。
■不安定な人との人間関係
人間関係の不安が高い人は、優しく責任感のある人を頼ることがあります。頼られたほうも、何とかしようと思います。しかし、おんぶにだっこはいけません。相手のためにも、あなたのためにもなりません。
相手のことを見捨てはしないけれども、常識的な人間関係を続けていくことこそが、相手を支えることにもなるでしょう。
(相手が不安定だからといって、それを利用して相手を利用して私利私欲に走るのは、もちろん論外です。)