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32歳で若手と競争。日本代表&サンウルブズ・矢富勇穀の態度に迫る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
昨年はスーパーラグビーを10試合、経験した。(写真:アフロスポーツ)

キャリア組が存在感を示し、若手が突き上げる。ラグビー日本代表におけるスクラムハーフのポジション争いは、激化の一途を辿っている。

代表チームと連携するサンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦)には、いま、6名のスクラムハーフが在籍している。

現在休養中の田中史朗は、昨季までの4シーズン、ニュージーランドのハイランダーズでスーパーラグビーを戦った32歳。日本代表としても2011、15年と、4年に1度のワールドカップに2大会連続で出場してきた。

26歳の茂野海人は一昨季、オークランド代表としてニュージーランドの地域代表選手権を経験している。今季は2シーズン連続でサンウルブズ入りを果たし、昨年6月以来の日本代表復帰を狙う。今季からサンウルブズへ入ったのは、26歳の小川高廣、24歳の内田啓介、流大(追加招集)。

さらに、3月におこなわれたナショナルデベロップメントスコッド(NDS)の第1~3回キャンプ(選手層拡大を目的とし、日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチが陣頭指揮)に参加したスクラムハーフには、22歳の小山大輝、26歳の西橋勇人、27歳の井上大介もいる。

そんななか、決然たる意志で定位置争いへ挑むベテランがいる。32歳の矢富勇穀だ。身長176センチ、体重85キロの体躯で加速力を誇り、密集の脇を駆け上がる。

早稲田大学で3度の大学日本一に輝き、ヤマハ入部1年目の2007年には日本代表としてワールドカップフランス大会に出場。しかしその後は、度重なる怪我に泣いてきた。11年に右膝、12年に左膝の前十字靱帯(じんたい)を断裂した頃には、引退も頭によぎったという。復帰後の14年頃から代表へカムバックすることも増え、サンウルブズへは2季連続で参画中だ。

3月18日、故障明けのため参加していたNDSの最中。置かれた立場について明かした。その言葉からは、周りがどんな状況でも惑うべからずという気づきが得られる。

以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――まず、NDSの練習へ本格参加したのは今週からです。

「ラグビー自体から離れていたので、まずラグビーの勘を戻すという意味合いもあった。コンディション的にはまだまだですけど、この激しい練習で失われたものを取り戻せた感覚はある。2017年度。やっと一歩、踏み出せたかなと思います」

――サンウルブズは今季のスーパーラグビーで現在、開幕4連敗中です(取材時)。4月8日には、東京の秩父宮ラグビー場での第7節(対ブルズ)を控えていますが。

「次の合流時は、練習に参加できる状態でいたいと思っているし、あとのことはコーチ陣、スタッフの方々が決めることだと思う。僕はやれることをアピールして、状態がいいぞということを見せる。そこで試合、ツアーのメンバーに選ばれたら、しっかりと力を発揮するための準備をする。これが、現状でできる僕の仕事です」

――サンウルブズと連携を図る日本代表は、今年6月、アイルランド代表と激突。2019年にはワールドカップ日本大会を控えています。現在、スクラムハーフのポジションは群雄割拠。特に、若手の台頭が著しい。

「若い選手にとっては、チャンスです。僕が6月、さらに2019年の試合に出るには、まずは同じポジションの選手に勝たないといけない。同じポジションの選手が増えることについては、『意識していないことはないけど、気にしていない』という感じです。どちらにせよ(ライバルには)勝たなくてはいけないので、自分のやることをしよう、と」

――候補者が何人いようが、背番号9のジャージィがチームに1枚しかない事実は変わりません。

「そうなんですよ。例えば、他の選手が怪我することを待っていても、自分の成長はない。若い選手に迫られているとは感じますけど、自分のできる準備をして、ポジションを取る。それがアスリートとして、大事で、当たり前のことです。色々なスクラムハーフがいますけど、自分の長所をサンウルブズのラグビーのなかで出していきたい。自分のプレーを評価されてサンウルブズに入っていると思うので、それを出して皆に認めてもらう」

2019年の日本大会の頃、矢富は34歳となっている。スクラムハーフの働き場に必要なパスワークや俊敏性などを保ち、激しい争いを制したい。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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