「おっさん女子」はモテるための巧妙な戦略?
新たな流行語
最近耳にするようになった「おっさん女子」。およそ女性らしいとは思えない人物像=「おっさん」を自称する、若い女性たちのことです。
「私なんてホント中身おっさんなんですよ!」
「カクテルなんて甘すぎて飲めなーい。やっぱ焼酎じゃないと!」
「かわいい女の子見てると癒されるんだよね〜」
サバサバ女子、干物女
こうした「女性っぽくないこと」を強調するコミュニケーション。これ自体はそれほど珍しいものではありません。記憶に新しいところでは、「サバサバ女子」「干物女」なども同じ部類。
「サバサバ女子」とはその名のとおり、サバサバしていて「女の子としゃべってるより、男友達とつるむ方が楽!」なタイプです。
「干物女」は恋愛することをめんどくさがって、努力を放棄してしまった女性のこと。綾瀬はるか主演のドラマ「ホタルノヒカリ」も話題になりました。
古くは「オヤジギャル」という言葉も
もっと時代をさかのぼってみると、1990年の流行語にもなった「オヤジギャル」という言葉も。
これも、まるで中年男性のような行動をする若い女性を指して使われました。競馬場で周りに混ざって声を張り上げる、栄養ドリンクを一気飲みする…そんなオヤジギャルの姿は、確かに現在のおっさん女子の姿に重なるように感じられますね。
ポイントは自称しているか否か
しかし彼女たちと今とで大きく異なっている点があります。それは自称しているか否かです。オヤジギャルという言葉は、どちらかといえばオヤジ化する若い女性たちを、外から捉えたもの。その姿は新しい女性像として驚きを持って迎えられ、徐々に浸透していきました。
その点、おっさん女子は違います。おっさん女子であることを自分で周りにアピール。むしろおっさんであることを誇りに思っているようにも見えます。なぜ女性たちは、積極的におっさんを自称するのでしょうか。
「おっさん女子」を名乗るとモテる!?
それは、これが恋愛におけるツールとして非常に優れているから。
まず一点目は、男性ウケがいいということ。「異性」を過剰に意識させないので、話も合うし、話しやすいという評価を受けます。男友達のような感覚で気軽にごはんも誘えるし、飲みに行くハードルも低い。
二点目は、女性ウケもいいということ。ぶりっこやボディタッチなどのあからさまなアピールと違い、気取らない女性像は同性からも人気があります。しばしば自虐ネタに走ることも多く「面白い子」と評判にもつながります。
三点目は、ギャップ萌えが狙えること。例えば見た目がとてもかわいらしい女性が、おっさん女子アピールをしたらどうでしょう。グッとハードルが下がって親しみやすくなりますよね。逆に、おっさんを自称している女性が、不意に見せたセクシーな一面にドキッ…なんてことも。
このようにメリットを見てみると、おっさんを自称するのは、スキのない実に巧妙な戦略。現代的な複雑さを秘めたコミュニケーションであり、増えているのもうなずけます。
やり過ぎは敵を増やす
もちろん、これはやりすぎると逆効果。「最近毛の処理してなくてさぁ」「そうじなんてもう何年もしてないわ」というような不潔アピールは、もうなんのためのアピールだか分からなくなってしまっています。男性からも完全に恋愛対象から外されてしまうはず。
また、いくら女性ウケがいいと言っても、あからさまにアピールをしすぎると、さすがに周りもうんざりしてきます。すでに現在おっさん女子アピールがモテテクとして通用する!という知識は、女性たちの間に広がりつつあります。つまり、もう「バレ始めている」ということ。
またおっさん女子アピールを繰り返すことで、自分へのハードルが下がってしまうという危険性も。ちょっと肌の手入れサボったっていいよね、少しぐらいズボラになったっていいよね、というように、おっさんである自分を言い訳に使ってしまう効果も見逃せません。
流行語は自称したら終わり
「干物女」も「サバサバ女子」も「オヤジギャル」も「おっさん女子」も、結局はあいまいなカテゴリー。冗談として楽しむのはOKですが、ことさら自分をアピールする目的で自称すると鼻につくのが、流行語の運命というものです。
「私ホントおっさんだから〜」ではなく、周りから「ちょっとおっさんっぽいよね」と言われるくらいのところで止めておくのがベストといえるでしょう。
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