「隠れリア充」の苦悩。〜リア充と非リアはわかり合えない?〜
「こじらせ女子」が主人公のドラマ「きょうは会社休みます。」(綾瀬はるか主演)がヒットし、男性を必要としないことを標榜する「腐女子」を描いた「海月姫」(能年玲奈主演)が公開されるなど、「モテる・モテない」「恋人がいる・いない」は、さまざまなフレーズとともに、若い世代の大きな関心事であり続けています。
そんな中、いま最も明確で強い「線引きワード」こそ「リア充・非リア」です。
ネット発の「リア充」と「非リア」
ネット上から発生し、近年実生活でもよく使われるようになってきた「リア充」という言葉。
元々は主にインターネット上で生活・交流する人間に対して、現実生活=リアル生活が充実している人間を指す言葉でしたが、最近では「リア充=恋人がいる」という意味でも使われています。ですから、TwitterやFacebookなどSONS上で恋人とのツーショット写真を上げることは「リア充投稿」と呼ばれています。
その一方で、恋人がいない=現実生活が充実していない人を指す「非リア」という言葉も市民権を得ています。
「りあじゅう」「ひりあ」と、ちょっと聞いただけでは意味がまったく伝わってこない、すごい音を持つ二つの言葉。こうしたネットスラングが一般用語として根付いていく中で、自分はリア充であることを隠す、隠れキリシタンならぬ「隠れリア充」が登場しています。
同じ非リアだと思っていたのに……
「聞いてくださいよ、この間ひどい裏切りにあったんです……」そう切り出してきたのは、ある大学生女子。一体何があったのかと詳しく聞いてみると、内容は以下のようなものでした。
彼女には2年前に出会ってからずっと仲の良い女友達がいるそうで、同じコミュニティに所属し、よく話をしていたそうです。彼女たちが所属しているコミュニティは、恋人がいない女性の多い、いわゆる「非リア」の集まり。集まっては自然と自虐ネタで盛り上がり、その仲間内ではみな恋人がいないものだと思い込んでいました。
しかし、彼女はその女友達にある日突然「実は、私2年半前から彼氏がいるの」と告げられます。女友達は、そのコミュニティに入る前から「リア充」だったわけです。彼女は、今まで散々いっしょに「非リア」ネタで盛り上がっていた仲間が実はリア充であったと知り、裏切られたとショックを受けてしまったのでした。
互いに差別し合う両者
このように、恋人がいるという事実を仲良しの友人にまで隠して生活しているリア充、それが「隠れリア充」です。下手に自分のステータスを隠してしまうことで、後々それが明らかになった時に相手にがっかりさせてしまうことも少なくありません。
こうした「隠れリア充現象」の背景には、前述した「リア充」「非リア」が、まるで人種差別社会のように、互いを線引きしてしまう風潮があります。
非リアのちょっとした自虐トークに対して、リア充が「わかる〜」と言おうものなら、「リア充には分からないでしょ!?は」とはねつける。
逆に、リア充同士が恋愛トークに花を咲かせているとき、非リアが「でもそれってさ〜」とアドバイスしようとすると、「非リアは黙ってろ」と冗談めかしつつも排除する。
話の輪に入りたいだけなのに
大学生と接していると、こうした光景を当たり前のように目にするのでびっくりしてしまいます。
もちろん仲間内のジョークではありますが、「あいつはリア充」「あの子は非リア」とレッテルを貼り合い、共感できる話題を自分たちのコミュニティだけで展開する傾向があるのは事実。
たとえ今たまたま恋人がいたとしても、それまではモテていなかったために「自分はモテない」という非リアトークに共感したり、逆に、いまはたまたま非リアでも、昔の恋愛経験をもとに恋の話を披露したい人も当然います。
それでも「リア充」と「非リア」は、明確なステータスとしてその人の位置づけを縛っています。だからこそ、宗教弾圧の中でついぞカミングアウトできなかった隠れキリシタン同様、「隠れリア充」が発生してしまっているというわけです。
細分化されるステータス
学生たちは、多くの細分化されたカテゴリに属して、生活・社交しています。それは「男子」「女子」というシンプルな区切りにとどまらず、「学年」「仲のいい人同士」「趣味」「趣味のアンチ」などさまざま。微妙に入り交じり、まるでマーブル模様のような人間関係の中を生き抜く彼ら。それに拍車をかけているのが、LINEのグループでしょう(参考記事:「新・LINE疲れ」が蔓延中。「グループ機能」が疎外感を助長)。
最初は冗談から始まった線引き・差別・溝が、リアルな排斥につながらないことを祈るばかりです。