建国70周年パレードなのに、なぜ北京の空が青くなかったのか?
今年10月1日は中国の建国70周年にあたり、首都・北京では大々的な祝典が行われました。
中国といえば、大規模なイベント時に人工降雨などの気象制御や排ガス規制を行って、青空を作ってしまうことで知られています。
2008年の北京五輪も、2009年の建国60周年記念式典も、2014年のAPECも、北京の空は青く澄み渡っていました。
しかし1日(火)の北京の様子は、今までとは違った印象を受けました。たしかに晴れてはいたものの、空の色は青さからは程遠く、大気も白く霞んでいるようでした。
(↑1日の白く霞んだ空)
青空でなかった理由
外電によると、中国政府はこの式典を前に、北京での交通規制、工場の稼働停止、花火の使用禁止等の措置を講じていたようです。つまり事前の準備としては万端であったといえます。
しかし、問題は風にありました。
上の天気図は1日のものですが、北京の北側に前線を伴った低気圧があるのがわかります。北京では、この低気圧に向かって吹く南風の影響で、この時期の平均を6℃も上回る28.3℃まで気温が上昇しました。
この南風に乗って、北京の南に位置する工業地帯から大気汚染物質が次々と流れ込んで、北京を白く霞ませてしまったと考えられます。実際、中国当局もそれを予想していて、北京周辺の車や工場からの排ガスの流入と北京の高い湿度とで、空気中の大気汚染物質の濃度が上がるとの予想を発表していました。
中国で行われた気象制御の例
ところで、中国ではどのような気象制御が行われているのでしょうか。
雲にヨウ化銀を散布して雨粒を作る、クラウドシーディングという方法がしばしば用いられているようです。雨を降らせることで干ばつを解消したり、大事な日に雨が降らないようにしたり、空気中に浮遊している大気汚染物質を地面に落とし、空気を一時的にきれいにする効果があります。2002年から2012年の間には50万件もの気象制御実験が行われ、5千億トンの雨を作りだしたという統計があります。
中国の未来戦略
気象制御は世界42か国(2017年のデータ)で行われているのだそうですが、その中でも中国は、特に研究が進んでいる国の一つです。北京には気象制御の研究に特化した機関があり、そのスタッフの人数は3万5千人で世界最多ともいわれています。
驚いたことに、中国は2022年までに宇宙衛星と地上の人工降雨装置で、砂漠地帯のチベットに雨を降らせるという壮大な計画も立てているようです。
以前「ジオストーム」という映画のなかで、災害を減らすために作られた気象衛星が暴走して、地球が壊滅寸前に陥ったという話がありましたが、それが現実とならないように祈るばかりです。