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ノート(12) 執行された逮捕状を見て、何を思ったか

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~葛藤編(9)

逮捕当日(続)

証拠隠滅罪?

 最高検の長谷川充弘検事が僕に示した逮捕状の「罪名」を見ると、驚いたことに「証拠隠滅」と書かれていた。また、逮捕状に別紙として添付され、引用されていた逮捕状請求書の「被疑事実の要旨」は、おおむね次のようなものだった(逮捕状の書式はこちらのPDFファイルを参照。氏名などは架空)。

「被疑者は、大阪地検検事として、検察官の職務に従事していたものであるが、2009年7月中旬ころ、大阪地検において、大阪地裁に公判係属中だった虚偽有印公文書作成等被告事件の証拠であるフロッピーについて、パソコン等を使用して、このフロッピー内に記録されていた文書ファイルの更新日時を改変するなどし、他人の刑事被告事件に関する証拠を変造した」

――なんとなく、しっくりこないな。

 長谷川検事がこれを読み上げるのを聞き、率直にそう思った。事件の張本人からすると、ストンと腑に落ちない内容だったからだ。数多くの捜査を取りまとめてきた主任検事としての経験からしても、意外な罪名だった。

 やや専門的な話になるが、できるだけ噛み砕いてご説明するので、しばらくお付き合い願いたい。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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