高校生はスマートフォンで20.6%…小中高校生の電子書籍利用の実情(2024年公開版)
紙媒体による出版業界を大きく揺るがしているのがインターネットの存在だが、同時にそれを紙代わりのインフラとして用い、デジタルによる書籍の提供・販売を行うことで、時代の流れに乗る動きもある。スマートフォンをはじめとするインターネットの窓口となる端末が急速に普及する昨今、子供達の間に電子書籍はどこまで浸透しているのか。今回は内閣府が2024年3月に報告書を発表した「令和5年度青少年のインターネット利用環境実態調査」(※)の内容から、小中高校生における主要なインターネット接続端末を用いた、電子書籍の利用状況を確認する。
次に示すのは主要なインターネットへの接続可能媒体でインターネットを利用している人における、電子書籍の利用状況。設問表では「何をしているか」の対象として「読書をする」とのみ記述され、具体的な説明はない。別項目に「マンガを読む」があることから、「読書をする」は電子書籍を対象としていると考えてよいだろう。なお有料・無料別の設定はないため、単純に閲読しているか否かを答えてもらったものと見なす。
グラフ中に一部属性で空欄の部分があるが、その属性では回答者自身が存在しないことを意味する。
自宅用のパソコンやタブレット型端末では全属性で1割に満たない値。女子中学生の9.9%が最大値。従来型携帯電話は自宅用のパソコンやタブレット型端末以上に値が低い。唯一女子高校生の11.1%が1割を超え、もっとも高い値となっているが、対象者数が少ないためぶれの可能性がある(9人)。そもそも利用できるサービスがどれほどあるのか、利用できるサービスがあったとしても読みやすさの観点でわざわざ従来型携帯電話を使わざるを得ない人がどれほどいるのかを考えると、理解できる気はする。
スマートフォンは全体で14.7%。小学生では数%に過ぎないが、中学生では1割台、高校生になると2割台に落ち着く。他方家庭用ゲーム機ではほとんどゼロ。わざわざ家庭用ゲーム機で電子書籍を読む必要性がどれほどあるのかを考えると、理解できる気はする。
総数で見るとインターネット利用端末の利用者における電子書籍の利用状況としては、スマートフォンがトップ、自宅用のパソコンやタブレット型端末が続くといった具合。また中学生から積極的に読み進められ、高校生ではスマートフォンで2割台の利用状況を示している。
しかしこれは該当端末でのインターネットの利用者限定。電子書籍の現状を把握するためには、むしろ属性毎の利用状況を知りたいところ。そこで各属性における電子書籍利用比を算出した結果が次のグラフ。例えば総数のスマートフォンは10.9%の値が出ているので、小学生から高校生を合わせた全体のうち10.9%、10人に1人強はスマートフォンで電子書籍を利用していることになる。
元々各該当端末によるインターネット利用率が低い小学生は、誤差の範囲に収まる利用率しかない。実質的に「読んでいる人はナシ」と見ても構わないレベル。中学生になるとスマートフォンでは利用率の高さが後押しする形でそれなりの値を示す。
そして高校生。スマートフォンそのものの利用率が圧倒的な値を示していることから、それを用いた電子書籍の利用者率もグンと跳ね上がる。高校生全体の20.6%、およそ5人に1人はスマートフォンで電子書籍を閲読している計算になる。一方、自宅用のパソコンやタブレット型端末では2.3%にとどまっている。
今件調査は小学生から高校生を対象としたものであるため、当然大学生以上の大人の動向は把握できない。ただ、例えば総務省の通信利用動向調査によれば2015年末時点でインターネット利用者に限定した場合、男性40代でも8.0%に過ぎないとの結果が出ている(2016年分以降の調査では該当項目は存在しないので、これが最新値)。
調査様式が異なるため単純比較はできないが、高校生のスマートフォンによる電子書籍の閲読意欲は相当高いと見てよいかもしれない。
■関連記事:
【伸びる雑誌と落ち込む雑誌と…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2023年1~3月)】
【電子書籍は今や専用リーダーよりタブレット型端末が好まれる時代…米国電子書籍事情】
※令和5年度青少年のインターネット利用環境実態調査
2023年11月1日から12月7日にかけて2023年11月1日時点で満10歳から満17歳までの青少年とその同居保護者それぞれ5000人に対し、調査員による個別面接聴取法(困難な場合は訪問配布訪問回収法やウェブ調査法も併用)で行われたもの。回答側の事情次第で郵送回答法を併用している。有効回答数は青少年が3279人(うちウェブ経由は401人、郵送回収法は141人)、保護者は3322人(うちウェブ経由は415人、郵送回収法は149人)。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。