都庁職員と来年中に結婚する!と後輩女子。結婚は狙ってできるもの?(「スナック大宮」問答集その6)
2011年の初秋から、「スナック大宮」と称する読者交流飲み会を東京・西荻窪や愛知・蒲郡で毎月開催している。すでに60回を超えた。お客さん(読者)の主要層は30代40代の独身男女。毎回20人前後を迎えて一緒に楽しく飲んでいる。この「ポスト中年の主張」を読んでくれている人も多く、賛否の意見を直接に聞けておしゃべりできるのが嬉しい。
初対面の緊張がほぐれて酔いが回ると、仕事や人間関係について突っ込んだ話になることが多い。現代の日本社会を生きている社会人の肌からにじみ出たような生々しい質問もある。口下手な筆者は飲みの席で即答することはできない。この場でゆっくり考えて回答したい。
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「20代後半の後輩女子と話していたら、婚活がすごく明確で驚きました。都庁職員の男性に絞って合コンをしたり紹介してもらっていて、来年中には結婚すると意気込んでいます。理由は、他の自治体よりも給料が良くて身分が安定していて転勤がないから。東京に住み続けたい彼女にはぴったりらしくて、他の公務員や会社員には見向きもしません。普通に生活していて好きになった人と恋愛して結婚するんだろうと思っていた私には衝撃的でした。結婚って狙ってできるものなのでしょうか?」(40代前半の独身女性)
この質問をしてくれた女性と筆者は同世代であり、「婚活」という言葉が誕生した2008年にはすでに30代に突入していた。学生時代は就職氷河期で、20代はとにかく自分が食べていくこと、仕事面で少しでも成長することに必死だった我々。「キャリア構築」や「スキルアップ」ばかりに気を取られて、結婚などを考える余裕はなかった。
我々の世代にも「キャビンアテンダントと付き合ってみたい」「商社マンと結婚したい」と公言する男女はいた。でも、それは単なる憧れや夢に過ぎず、具体的な行動に移して実現した人は少ない。結婚した人の多くは、学校もしくは会社つながりなどの身近なところで相手を見つけている。
条件で相手を探すことには馴染めないため、結婚相談所などに登録しても苦労する人が少なくない。80年代90年代に流行ったトレンディードラマの影響なのか、「本当に好きな人と自然に結ばれたい」という価値観が根強いのだ。結婚の大前提として恋愛がある。
現代の20代女性からすれば、「本当に好きな人と~」なんて言っている我々アラフォーは夢想家に見えることだろう。彼女たちは「婚活」の必要性を学生時代から知っている。デジタルネイティブならぬ婚活ネイティブであり、その姿勢と行動には甘さはない。仕事にも結婚にも悩み苦しんでいる30代40代の様子も見ているため、「30歳までには絶対に結婚する」と意識を高めているのだ。
露骨すぎる、結婚は条件だけじゃない、と20代後輩女子の浅はかさを批判するのは簡単だ。しかし、学ぶべきこともある。「都庁職員と来年中に結婚」というわかりやすさがあれば、自らを大いに鼓舞して行動に移すことができる。友人知人をたどれば1人ぐらいは都庁職員がいるはずで、その人に頼み込めば合コンぐらいは開いてくれるだろう。あとは芋ずる式に「職員脈」を広げていけばいい。周囲としても、「感じのいい男性と出会ったら、独身の都庁職員だった。あの子に連絡してあげなくちゃ」という気持ちになるだろう。
筆者は勝手に想像する。この20代女性は、結果としては都庁職員ではなく、彼らとの合コンに紛れ込んだ都庁出入りのシステム会社の社員あたりと結ばれるのではないだろうか。現実はそんなものだが、行動しなければ想定外の結果すら生まれない。
どんな相手といつ結婚するのか。「狙ってする」ことは確かに難しい。しかし、具体的な目標がなければ走り出すことはできない。走ればいろんなことが起きて、当初の目標とは異なるところに心惹かれるかもしれない。
行動のきっかけとして「都庁職員」をゴールに据え、とりあえず走り始める。漫然とネット婚活をするよりも、はるかに面白い展開が期待できるだろう。理想は高いが腰は重い我々世代への自戒としたい。