東京の将来性はアジア2位 「安倍」それとも「舛添」効果? 直接投資増える
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)グループの調査部門fDiインテリジェンスが隔年で実施しているアジア・太平洋の都市の将来性ランキングで東京が順位を7つ上げ、2015/16年版で2位に入った。大阪も9位と健闘している。
トップはシンガポール。ランキングの報告書によると、シンガポールは03年から15年9月までにアジア・太平洋地域に流れ込んだ投資の7.3%を集めた。
しかし、15/16年版では異変が起きた。東京が巨大都市(人口1千万人以上)部門の総合でトップになるなど、大躍進を見せたのだ。費用効果では新興国・途上国に歯が立たないものの、「経済の可能性」「接続性」でトップ、「人的資本と生活様式」「ビジネスのしやすさ」で2位に入った。
大都市(人口500万~1千万人)や中都市(同250万~500万人)、小都市(同250万人未満)を含めた163都市全体でも「接続性」でトップ、「経済の可能性」「ビジネスのしやすさ」で3位に着けるなど大健闘した。
ドイツ系の国際配送サービス会社DHLエクスプレスが6700万ユーロを投資して東京に拠点を整備。米国のコンピュータネットワーク機器開発会社シスコシステムズも14年に技術革新のための研究室を東京に設けている。
東京に投資しているのは米国企業が圧倒的に多い。03年から15年9月までに米国企業が474案件の投資を実施した。同じ期間に英国企業は86案件、ドイツ企業は67案件の投資を行っている。
東京への投資内訳はIT(情報通信技術)が32%、ビジネスサービスが13%、金融サービスが12%。日本の人口の90%以上がオンラインを利用するなど、IT環境が整備されていることが関連投資を呼び込んだ。羽田と成田の2つの国際空港、6つの港が整備されていることも評価された。
日本への対内直接投資(FDI)残高は2009年以降、頭打ちの状態だった。13年には名目国内総生産(GDP)比3.7%と、経済協力開発機構(OECD)平均の約30%と比較しても低い水準だ。
このため、安倍晋三首相は「20年における対内直接投資残高を35兆円へ倍増する」という目標を掲げて、「世界で一番ビジネスがしやすい環境」を創出するため「国家戦略特区」を設けた。日銀の異次元緩和で円安となり、世界的に「割高」というイメージが定着していた東京に割安感が出てきた。
「東京を世界一の都市に」をスローガンに掲げる東京都の舛添要一知事は20年の東京五輪・パラリンピック開催をにらんで14年末、10年間の長期ビジョンをまとめた。(1)国家戦略特区を活用し外国企業500社以上を誘致する(2)ニューヨーク、ロンドンと並ぶ国際金融センターに復活させる(3)生命科学ビジネス拠点にするという政策目標を明示した。
円安と舛添知事のわかりやすい目標設定が好感されたのは間違いない。しかし今のペースで増えても対日直接投資残高は20年になっても22兆円止まり。目標の35兆円を達成するためのハードルはまだ、かなり高い。
(おわり)