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「光る君へ」初回、衝撃のラストは史実なのか、大石静に聞いた

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
大河ドラマ「光る君へ」 写真提供:NHK

数少ない平安大河として注目を集めている「光る君へ」(NHK)がはじまった。

世界的にも有名ながら謎多き紫式部はどんな人物なのか、史実とフィクションを

混ぜ合わせ、ロマンスあり、政治の権謀術策ありと、ドラマティックに描く。

第1回からいきなり、血なまぐさい出来事が起こる。まさに「バイオレンス」。

主人公・まひろ(子役・落井実結子)の母・ちやは(国仲涼子)は実際、こんな酷い目にあったのだろうか。

第1回の試写会のあとに行われた取材会で、脚本家・大石静が「光る君へ」の構想を語った。

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愛した人のお兄さんは親の仇。そういう悲しい宿命を描こうと

――第1回をご覧になった感想はいかがでしたか。

大石静(以下大石)「第1回は子役パートで、少女時代のまひろに、生意気な文学者の萌芽を感じました。まひろと道長のみならず、花山天皇の子役も、小さな才能ががんばっていました。子役の演出は難しいなか、一歩も引かずに立ち向かった中島由貴(NHK)さんの演出力の賜物でもありますね」

――タイトルバックをどう思いましたか。

大石「タイトルバックはラブがメインの雰囲気で、『光る君へ』はそれだけじゃない気持ちもありますが(笑)、夢のあるタイトルバックですね。まひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)は死ぬまで、近づいたり離れたりして、その関係が紫式部に『源氏物語』を描かせたということが象徴的に現れているように思います。赤い糸で結ばれていたふたりの、韓流ラブストーリーのように胸キュンの物語ですが、それだけではなく、藤原三兄弟(道隆〈井浦新〉、道兼(玉置玲央)、道長)の骨肉の出世争いだとか、道長の父・兼家(段田安則)の一か八かのクーデターや、一条天皇即位の高御座の生首であるとか、生々しいエピソードがたくさん出てきます。権謀術策、男の政の世界もたくさんありますので、合わせてそちらもお楽しみいただきたいです」

――第1回、まひろのお母さん・ちやは(国仲涼子)が殺される場面はなかなか鮮烈でした。

大石「あれは史実ではないです。母親は小さいときに死んでいるらしいと言われていますが、第一次資料に書き残されているわけではなく、なんとなく言い伝えで、母親は幼いときに死んだらしいということです。私は、幼い頃に母を亡くしていることは人間形成のうえで大きいと思ったので、子役時代をやらずに第一回から本役ではじめたかったけれど、あえて、少女時代を描きました。そして、母の死をどう描こうかと思ったとき、道長との何かがないかなと思案し、道長三兄弟の次男・道兼は乱暴者と設定したので、彼と結び付けられないかなと思いつきました。そうすると、まひろにとっては愛した人のお兄さんは、親の仇になる。そういう悲しい宿命を描こうと思いました」

大変なことをしでかした藤原道兼(玉置玲央) 写真提供:NHK
大変なことをしでかした藤原道兼(玉置玲央) 写真提供:NHK

武士の世界へのひとつの反発としても、平安時代を描きたい

――フィクションの産みの苦しみがありそうですね。

大石「私はつねに、オリジナルを書いてきて、10年に1回か2回くらいしか原作ものの脚色はしないので、オリジナル作品を書くことは当たり前なんです。だから、そこに特別な気持ちはありません。歴史ものは、いろんな資料を読むのは楽しいし、この仕事を引受けなければ、千年前のことをなにも知らなかったと思うと、そういう意味でやってよかったと思います」

――現代の問題とフィクションは重なりますか。

大石「自ずと重なってくると思います。でも重ね方は、私が示すものではなく、視聴者がそれぞれの独自の解釈で、自分と繋げてご覧になるということではないでしょうか。ほんとに平安時代を生き生き描ければ、必ず、みんな現代の自分と繋げてご覧になると思います。また、戦国時代の、集団で殺し合いをすることが潔い時代というイメージは、明治維新で、富国強兵に向かうときに、国民の意識をそちらに向けたものです。武士の世界こそ潔いみたいになったことへのひとつの反発としても、平安時代を描きたい。平安時代は、律令制には死刑はあったが死刑を行わないとか、話し合いで乗り越えていくという知的な時代で、国風文化も栄えた時代です。これまでの皆さんの既成の感覚に、ほんとにそうなの? ということをこの1年で問いかけたいと思っています」

――この時代の女性の立場は弱いものだったのでしょうか。

大石「『蜻蛉日記』を書いた藤原道綱母も男性が訪ねてきてくれないことを嘆いて、日記を書くことで救われていました。道長もまひろのことを好きだけれど、嫡妻も妾もいて、それぞれに5人くらい子供をなしています。そういう時代なんです。でも、女の人も、待つだけでじゃなくて、いやになったら、女のほうから関係を切ったりもしている。男にとって都合のいい社会とはいえ、女も強かったと思います」

安倍晴明をリアルなふつうの人として描きたい

――直秀(毎熊克哉)というオリジナルキャラクターはどのように生まれましたか。

大石「貴族以外の視点も描きたくて生まれた人物です。紫式部も下級とはいえ貴族です。貴族は当時、1000人くらいしかいなくて、日本の人口がどれくらいだったかはわからないけれど、それにしても0.01%くらいだと思うんです。その1000人だけの世界を描いていては偏ってしまう。当時の庶民の視点を最初に出しておかないといけないと思って、設定したのが散楽の劇団員・直秀です」

――第一回冒頭に登場した、安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)は有名な人物ですが、「光る君へ」ではどう描きますか。

大石「陰陽道の長であることに誇りを持ってやっていますが、実際、何を考えているかわからない不思議な人にしたいですね。安倍晴明って美しい霊能力者というイメージがありますが、リアルなふつうの人として描きたい。権力に阿っていながら、真実も見据えているような人物にしたいんです」

Shizuka Oishi

東京都生まれ。1986年に「水曜日の恋人たち」で脚本家デビュー。97年、連続テレビ小説「ふたりっ子」で第15回向田邦子賞と第5回橋田賞をダブル受賞。2008年「恋せども、愛せども」で文化庁芸術祭賞テレビ部門優秀賞を受賞。NHK作品に、大河ドラマ「功名が辻」「セカンドバージン」「ガラスの家」「コントレール 罪と恋」「永遠のニシパ ~北海道と名付けた男 松浦武四郎~」がある。その他「大恋愛〜僕を忘れる君と」「知らなくていいコト」「和田家の男たち」「あのときキスしておけば」「家売るオンナ」「トットちゃん!」「星降る夜に」、宮藤官九郎との共作「離婚しようよ」など。

第一話試写会後の記者会見より 左:大石静さん、中央¥:吉高由里子さん、右:柄本佑さん
第一話試写会後の記者会見より 左:大石静さん、中央¥:吉高由里子さん、右:柄本佑さん

大河ドラマ「光る君へ」

【放送予定】2024年1月~12月

【作】大石静

【音楽】冬野ユミ

【語り】伊東敏恵アナウンサー

【主演】吉高由里子

【スタッフ】

制作統括:内田ゆき、松園武大 

プロデューサー:大越大士、高橋優香子

広報プロデューサー:川口俊介

演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろう ほか

「光る君へ」相関図 提供:NHK
「光る君へ」相関図 提供:NHK

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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