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「児童と向きあう時間を確保」するために「児童と向きあう時間」である部活動を廃止するという矛盾

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 市立小学校の部活動を廃止する方針を、名古屋市教育委員会が5日に明らかにしている。2020年度末で廃止し、それ以降は教員が携わらないかたちで子どもたちの運動や文化活動の機会をつくっていくのだという。

 その理由が、矛盾しているように感じてならない。「社会問題になっている教員の多忙化を解消し、授業などで児童に向きあう時間を確保する狙い」(『毎日新聞』3月5日付 電子版)なのだそうだ。

 部活動は、「児童に向きあう時間」ではないのだろうか。児童に向きあわない部活動であれば、それは廃止してもかまわない。しかし、児童と向きあわない部活動など成立しない。つまり部活動廃止は、児童と向きあう時間を奪うことにしかならないのだ。

 教員の仕事には、児童と向きあわないものが多々ある。教委への報告書やアンケートの提出なども、そうしたもののひとつだ。そうしたものを廃止すれば、「児童と向きあう時間」は確保できる。

 そうしたものには手をつけないで、「児童と向きあう時間を確保」するために「児童と向きあう時間」である部活動をまっさきに廃止してしまうことには、大きな疑問を感じざるをえない。

 教員がかかわる部活動を廃止して以降について、名古屋市教委は地域や民間の活力導入などもふくめて幅広く検討するという。それが低予算ばかりを優先して、ボランティアなどに頼る不十分なものになってしまえば、子どもたちにとってはデメリットでしかない。

 授業に関係ないからと部活動を排除する流れが存在する。しかし部活動が「児童と向きあう時間」であることを再認識し、子どもの成長のためにという大原則に立ち戻って、部活動問題を考えていく必要がある。

 

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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