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ドコモ24か月ぶり純増トップに・iPhone参入で携帯市場は再び三社鼎立の時代へ

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ ドコモの公式サイトにもiPhoneの解説ページ。感慨深く思う人も多いだろう

ドコモが純増数トップ、24か月ぶり…!?

先日電気通信事業者協会(TCA)は2013年12月末における日本国内の携帯電話、PHSの契約数を発表した。それによると日本国内の携帯電話事業者大手3社ドコモ、au、SBM(ソフトバンクモバイル)における契約者数の月次純増数はそれぞれ27万9100件、22万2600件、22万4300件となり、ドコモがトップに立つことになった。

これは2011年12月以来24か月ぶりのことである……が、その月はソニーの携帯ゲーム機プレイステーションVita(3Gモデル版)が発売され、ドコモのプリペイド回線を用いるために、この新設分がカウントされたことが大きく作用した、イレギュラー的な結果による純増数トップ(「Vitaが後押し…NTTドコモが純増数でトップに(2011年12月末携帯電話契約数動向)」)。実質的な3社競り合いの上で、ドコモがトップについた最後の月は、さらに2010年3月まで2年近くさかのぼらねばならない。見方を変えれば、それ以来4年近く、ドコモの携帯電話契約数における純増数は他社に後れを見せていたことになる。

↑ 携帯電話契約件数(増減)(-2013年12月)
↑ 携帯電話契約件数(増減)(-2013年12月)

ドコモの後れの理由は昨年末の「2013年の携帯電話業界を契約者数動向から振り返ってみる」で解説した通り、ひとえにiPhoneを販売していたか否か、いわば「逆iPhoneプレミアム」によるもの(au、SBMにとっては「iPhoneプレミアム」となる)。そして昨年9月発売のiPhone 5c/sからドコモもiPhone販売に参入を果たし、少なくとも3社間における「iPhoneを買えるか、契約できるか」という点での差異は無くなった。

だが販売体制の整備過程にあることで、ドコモのiPhone販売に関する立ち上がりは緩やかなものとなり、同社のMNP(ナンバーポータビリティ)は2013年12月においてもマイナス値(数字上は他社への流出が続いている)が続いている。

それでも去年後半からは6ケタ台のマイナスを継続していたドコモのMNP値も、12月は前月に続き5ケタに留まり、しかも前月よりさらにマイナス幅を縮小。確実な復調状態のさなかにある。そして今回月では上記にある通り、純増数が24か月ぶりに3社中トップとなった。

劇的では無いが確実に変化する状況と、3社鼎立へ

iPhone参入によるドコモの復調は、MNPの動きを見ればより明らかに把握できる。MNPはドコモが引き続き転出超過(マイナス5万1000)、SBMとau(KDDI)は転入超過状態(それぞれプラス9400、プラス4万3300)。数の上だけではドコモ利用者からの移転組の大半がSBMとauに流れている。

↑ MNP件数推移(-2013年12月)
↑ MNP件数推移(-2013年12月)

一方ドコモのMNPのマイナス幅はiPhoneの販売参入以降、少しずつ、そして確実に縮小している。流入先となるKDDIとSBMのMNPはプラス幅の縮小が継続中。ドコモの「出血」状況の鎮静化は、そのタイミングと販売状況から、iPhone効果によるものと断じても問題は無い(実際、堅調さを示した2013年12月ではiPhone 5c/sの在庫も潤沢なものになったのが確認できる)。またここ数か月に限り、契約件数増減とMNP件数推移のグラフを見比べると、ドコモとSBMにおいてそれぞれ似たような動きを示しているのが興味深いところ。MNPによる流出入が契約者数動向に大きな影響を与えていることが容易に想像できる。一方auはやや異なる動きを見せているが、これは新規加入者も多分に居るからと考えれば道理は通る。

初動は穏やかなものだったドコモのiPhone参入による契約者関連のパワーバランスだが、MNPをはじめ、少しずつ影響が出始めていることを実感させる結果が出始めている。SBMとauによる「iPhoneプレミアム」は、先行者という実績と数々の特典という点で、今なお継続していることは疑うべき余地は無い。しかし今回ドコモが単月の契約純増数で24か月ぶりにトップについたことからも分かる通り、これまでとは異なる流れが生じているのも事実である。3社間の力関係は2強から3強、つまりiPhoneが本格的に売れ始めた2010年より前の、3社鼎立状態に戻りつつある。

携帯電話は年度の切り替えに合わせて、新規加入や端末の変更を行う事例が多いことから、毎年3月は携帯電話の契約数が一番伸び、MNPも大きく変化する(少なくとも直近2年間ではそのような動きを示している)。2014年3月では、各社の契約状況はどのような値を示すのか。その結果が少なくとも今年一年の、携帯電話3社の勢いを示すことになる。

↑  2013年12月時点での3社間契約者数比率
↑ 2013年12月時点での3社間契約者数比率

小数第一ケタまでの表記だが、現時点で上位3社におけるドコモのシェアは45.5%。2013年12月は前月から0.1%ポイント減少。そしてSBMが0.1%ポイント上乗せしており、今なおドコモのジリ貧状態は続いている。このシェア減退の動きが止まって初めて、ドコモのターニングポイントの到来、そして第二期3社鼎立時代の幕開けと言えよう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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