現役記者が教える”雨”の表現!『篠突く雨』や『遣らずの雨』はどんな雨?
台風10号(サンサン)の影響で、各地で激しい雨が降っています。あす9月1日には熱帯低気圧に変わると予報が出ていますが、まだまだ警戒が必要ですね。
『豪雨』や『暴風雨』などは”激しい雨”を表す言葉ですが、”雨を表す言葉”は実は他にもたくさんあります。この記事では、執筆記事1万本以上、取材経験5000回以上の元テレビ局芸能記者で現・フリー記者のコティマムが、『ニュース記事に使われている何気ない言葉』を解説。今回はちょっと趣向を変えて、”雨の表現”についてご紹介します。(構成・文=コティマム)
激しい雨を表す言葉―『沛雨』『叢時雨』
普段から原稿を書いている筆者が参考にしているのが、株式会社学研プラスが発行している『情景ことば選び辞典』。気象や自然、季節、人体などさまざまなカテゴリーで、情景描写に役立つ類語が集められています。小説家やシナリオライター、作詞家向けですが、表現に悩んだ時に役立つ一冊です。
同書のカテゴリーの中には気象を表す言葉も入っており、”雨”にもさまざまな表現があります。
例えば、激しい雨の場合、『豪雨』や『暴風雨』が一般的に使われますが、『沛雨(はいう)』や『篠突く雨(しのつくあめ)』といった表現もあります。
『沛雨』の沛には、「さわや湿地、雨や水の勢いが盛んなさま」という意味があるため、『沛雨』で”勢いが盛んな雨”を表します。
篠竹は根笹の仲間で、群がって生えている竹のこと。「たばねた竹が突き下ろすように降る」という表現からも、雨の鋭さや激しさが伝わります。その他にも、
といった言葉もあります。
しぶきが発生するような激しい雨を表す『繁吹き雨』は、漢字からも様子が浮かんできますね。
また、『叢時雨』の『叢』は「ソウ・くさむら、むら(がる)」と読みます。「草木がむらがり集まっているところ」、また、読み方通り「むらがる」「一か所に集まる」という意味もあるため、雨が集中して集まっている様子を表しています。ゲリラ豪雨のような、集中的な雨のイメージも近いかもしれません。
粋な表現で表す雨も
雨を表す言葉には、粋な表現もあります。例えば、晴れているのに急に雨が降るような天気雨・通り雨のことを『狐の嫁入り』といいますよね。
『狐の嫁入り』は、夜の山野で狐火が連なって、嫁入り行列の提灯(ちょうちん)のように見えるものを表しています。
晴れているのに雨が降ることが、“狐に化かされているようだ”ということから、天気を指す言葉として使われているようです。また「狐が嫁入り行列を人間に見せないように、偽物の雨を降らせている」という話もあります。『雨』という言葉は一言も使っていませんが、通り雨を表す粋な表現ですよね。
また個人的に好きな表現に、『遣らずの雨(やらずのあめ)』という言葉もあります。これは、「人が帰るのを引き留めるかのように降る雨」のこと。「そろそろお暇しようか」と思った時に、急にザっと雨が降ると、「もう少し滞在しようか」と気持ちが変わりますよね。
『遣らず』は「行かせない」という意味。帰りがけに急な雨に見舞われても、「『遣らずの雨』だからもう少しここで過ごそうかな」と、気分を切り替えてもいいかもしれません。
いかがでしたか? 筆者が普段書いている芸能記事やニュース記事、企業インタビューなどの記事では、あまり気象について触れることがありません。激しい雨も『豪雨』などを使いがちですが、文章を書く者としてさまざまな表現を知っておきたいと思っています。皆さんも大雨の会話する際は、今回の言葉を参考にしてみてくださいね。
言葉に関する記事については、「團十郎さんが語った「あの日の空」は唐紅?それとも大禍時?―6月は空が赤い季節」もご覧ください。美しい”空の色”の表現について書いています。
スマホからご覧の方は、プロフィールからフォローしていただくと最新記事の見逃しがなくおすすめです。リアクションボタンもプッシュしていただけると、励みになります!今後も記者目線で、「ちょ~っとだけタメになる(?)」言葉解説をつづっていきます。