ハメスがバイエルンに電撃移籍。レアル・マドリーでの「第2章」は用意されているのか。
コロンビア代表MFハメス・ロドリゲスは今夏、新天地を求めることになった。欧州挑戦を決めてからポルトガル、フランス、スペインと渡り歩いたハメスは4カ国目となるドイツに足を踏み入れている。
カルロ・アンチェロッティ監督率いるバイエルン・ミュンヘンは、11日にハメス移籍でレアル・マドリーと合意したことを発表。形はレンタル契約、その期間は2年間だ。
商売上手であるマドリーのフロレンティーノ・ぺレス会長は、移籍直前にハメスとの契約を2021年まで更新していたようだ。そのため、バイエルンはハメスを完全移籍させるためにはレンタル終了時に6000万ユーロ(約78億円)を支払わなければいけない。また、レンタル加入中の2年間、選手の年俸1000万ユーロ(約13億円)を肩代わりする。
■ビッグクラブにのし上がった「バルデラマの再来」
2014年夏、ハメスはブラジル・ワールドカップで燦然と輝いた。背番号10を背負い、「バルデラマの再来」と謳われた男は、母国コロンビアを見事ベスト8まで導いた。ピッチ内のどこからでもゴールを狙えるのではないか。そう思わせる破壊力を持った左足を武器に、コロンビアの得点源として躍動し、決勝トーナメント1回戦ウルグアイ戦ではスーパーボレーを決め、その存在感を世界中にアピールした。
その活躍を見て、獲得に動いたのがマドリーだった。ぺレス会長は移籍金8000万ユーロ(約104億円)でのハメス獲得を決断。ハメスは移籍1年目の2014-15シーズン、アンチェロッティ監督の信頼を勝ち取り、定位置を奪取してビッグクラブのスケールに見合った選手だと証明してみせた。
だがハメスは徐々に加入当初の輝きを失っていく。マドリーは2013年夏にぺレス会長の意向でガレス・ベイルを獲得して以来、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドを含めた“BBC”を絶対的な存在としてきた。
ファーストシーズンこそ、アンチェロッティ監督の巧みなマネジメントによって4-3-3の枠の中でBBCとの共存が許されたハメスだが、ラファエル・ベニテス監督(現ニューカッスル)、ジネディーヌ・ジダン監督はアンチェロッティ監督ほどハメスを重宝しなかった。
■ベルナベウでの別れ
そして、その時は突然訪れた。5月14日に行われた昨季のリーガエスパニョーラ第37節、本拠地サンティアゴ・ベルナベウでのセビージャ戦。この一戦で先発したハメスは、61分にMFカセミロとの交代でピッチから下がった。
ベンチへと下がるハメスに、ベルナベウの観衆から万雷の拍手が送られる。ハメスはこれに応じ、切なささえ感じさせる表情で、360度ぐるりと回りながら頭上で手を叩き、ピッチを後にする。4-1の勝利以上に、マドリディスタの心を打つ何かがあった。
あれが本当に「別れの瞬間」になるとは。しかし一方で、マドリディスタは予期していた。
MFカセミロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチが盤石な中盤を構成しながら、昨季終盤戦に信じられないパフォーマンスを見せたイスコ、天井知らずの成長を続けるマルコ・アセンシオ、ハメス以上にポリバレントな能力を有するマテオ・コバチッチがいる中で、これ以上ハメスに出場機会が与えられないことを、彼らは知っていたのである。
■ハメスにマドリーでの「第2章」はあるのか
契約上、ハメスの保有権を有するのはマドリーである。
だが現時点、ハメスがマドリーに本格的に復帰する可能性は非常に低いだろう。今後2年でマドリーの「BBC絶対主義」が変わるとは思えず、戻ってきても4-3-3ではハメスに居場所がない。
また、ビッグクラブでは常に新陳代謝が行われなければならない。今夏ハメスを放出したマドリーはベティスからMFダニ・セバジョスを獲得。ペレス会長は20歳MFを引き入れ、所属メンバーの若返りを着々と進めている。
逆に言えば、バイエルンを納得させるために、ハメスには2年の猶予がある。指揮を執るのは、ビッグクラブ移籍1年目で適応に腐心してくれたアンチェロッティ監督だ。全員が満足するハッピーエンド。それはハメスがバイエルンで出場機会を積み、バイエルンがそのプレーに満たされ、6000万ユーロがマドリーの懐に入ることなのかもしれない。