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前向きなふりして実は後ろ向き=性格判定ではなく虫の話#マエムキダマシ

天野和利時事通信社・昆虫記者
マエムキダマシのユーモラスなお尻の顔(左)と、精悍な前方の顔(右)。

 常に人生に前向きな人もいれば、後ろ向きの人も。前向きなふりをして、実は後ろ向きの人もいるかもしれない。冬が見頃の虫の中にも、そんな「前向きなの、後ろ向きなの?」と聞きたくなる虫がいる。それはクロスジホソサジヨコバイ、別名「マエムキダマシ(前向きだまし)」だ。

 頭の方の本当の顔より、お尻の方の顔のような模様が目立つので、この別名がある。昆虫記者はもちろん、ユーモラスなお尻の顔の方が好きだ。

 天敵がお尻の模様を見て、「顔」だと思い込み、翅の先に襲いかかった際に、マエムキダマシは「小さなダメージを負うだけでうまく逃げられる」とか言われているのだが、昆虫記者は実験をしたわけではないので、真偽のほどは不明だ。

 恐らくマエムキダマシ本人の側には騙す(だます)つもりなどなく、天敵の側が勝手に思い違いすることがあるという程度の話だと思う。

クロスジホソサジヨコバイは、小さいが、なかなか見栄えのいい虫だ。
クロスジホソサジヨコバイは、小さいが、なかなか見栄えのいい虫だ。

 実はクロスジホソサジヨコバイは、1年中見られる虫なのだが、体長5~6ミリと小さいので、活発に動き回る暖かい時期に写真を撮るのは難しい。なので、ヤツデの葉裏などでじっとしている越冬期間に接写するのがお勧めだ。

 ヤツデの葉裏では、ヨコバイの仲間だけでなく、ハムシ、カメムシなどいろいろな虫が越冬していて、虫好きを楽しませてくれる。その中でも圧倒的に多いのが、このクロスジホソサジヨコバイだ。

 中央の黒い筋の両側に赤い帯が広がる個体が多いが、赤い部分がないのもいる。赤いのはメスだと一般に言われているが、昆虫記者は確認していないので確かなことは分からない。ただ、被写体として圧倒的に目立ち、美しいのは赤い方だ。

クロスジホソサジヨコバイには、赤い部分のあるのと、ないのとがいる。雌雄の違いだとか言われる。
クロスジホソサジヨコバイには、赤い部分のあるのと、ないのとがいる。雌雄の違いだとか言われる。

クロスジホソサジヨコバイの幼虫(たぶん)。
クロスジホソサジヨコバイの幼虫(たぶん)。

 クロスジホソサジヨコバイは、小さな公園でも結構多く見つかるので、暇を持て余している人は、ヤツデの葉をめくって、前向きの見せかけに騙されてみるのもいいかもしれない。ただし、そんなことをしている姿を近所の人に見られたら「なんて寂しい、後ろ向きの人なんだろう」と同情される恐れもある。

ホシヒメヨコバイもヤツデの葉裏で良く見つかる。
ホシヒメヨコバイもヤツデの葉裏で良く見つかる。

オビヒメヨコバイの仲間。これもヤツデの葉裏にいた。
オビヒメヨコバイの仲間。これもヤツデの葉裏にいた。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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