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賀集利樹と酒井貴浩、二人が見せる演劇の底力

中西正男芸能記者
演劇ユニット「かしこみかしこみ」を結成した賀集利樹さん(左)と酒井貴浩さん

 2001年、テレビ朝日「仮面ライダーアギト」で俳優デビューし、今年20周年を迎えた賀集利樹さん(42)。TBS「インハンド」などに出演してきた酒井貴浩さん(33)と演劇ユニット「かしこみかしこみ」を結成し、第1回公演「ささがね」(3月26日~28日、東京・ステージカフェ下北沢亭)で開催します。同じ事務所ながら、これまで接点がなかった二人。結びつけたのは新型コロナ禍でした。タッグを組むに至った理由、そして、役者という仕事の可能性についても語りました。

すさまじい早さで

賀集:酒井君と初めて会ったのが去年1月だったんです。

映画関係の方が新年会的に開いてらっしゃる集まりがありまして、そこで初めて酒井君と話をしました。

ただ、そこから特に連絡をすることはなかったんですけど、程なく新型コロナで世の中が大きく変わっていきました。

その中で、酒井君が事務所に自ら企画を持ち込んで若い人たちと一緒にお芝居をライブ配信する試みをやっていると聞きまして。

僕自身も、コロナ禍で仕事がキャンセルになったりする中、何か発信できればと思っていた最中でもあり、酒井君の試みが純粋に素晴らしいなと。

そこから連絡を取って、年末に会う機会ができて、そこからはすさまじい早さで「やろう!」となったんです。

酒井:賀集さんもそういう思いを持ってらっしゃいましたし、僕も去年はそういう動きをしていましたし、互いに「何かやらないと」という思いがあったので、お話をさせてもらってからは、本当に一気に進んでいきました。

演出家の方にもお声がけをして、4人のメンバーなんですけど「かしこみかしこみ」を立ち上げて、公演をやろうと。3月の公演を第一弾として、今後も定期的にやっていく予定です。

新型コロナ禍から得たもの

酒井:コロナ禍で仕事が飛んだりしたことも多々あったんですけど、なんというのか、コロナ禍で改めて気づかされたこともたくさんありました。

この仕事は人から呼んでもらわないと成立しない仕事です。誰かが活動の場を作ってくださらないと需要が生まれない仕事でもあります。誰かに支えていただかないと生きていけない。それを強く再認識しました。

そして、コロナ禍でもお仕事をさせてもらうこともあり、その状況を作るために、今まで以上に誰かが頭を下げて、汗をかいてくださっている。そうなると、より一層、感謝しかないですし、その思いは本当に大きくなりました。

賀集:酒井君の言う通り、以前から分かっていることではあったんですけど、僕らの仕事って“ステージ”を作ってもらわないと立つことができない。そういう仕事なんです。

ただ、コロナ禍になって、その考え方自体を変えるというか、それでも何かできないのか。これだけツールというか、いろいろなものがある世の中なんだし、それを考えました。

僕もコロナ禍でなくなった仕事もあり、スケジュールがパッカリ空く中、以前、共演した役者さんや演出家の方と電話で話して、6人だけでオンラインドラマを作ってみたんです。

何もないからといって、家にこもっていたら僕ら自身もダメになるし、演劇というものも目減りしてしまうんじゃないか。そんな思いから、結果的には10分ほどのドラマだったんですけど、それでもやろうと。

実際に、そういうことをやった時に、動けばステージを自分たちで作ることもできる時代になったんだと思えたんです。

もちろん、失われたものもあったんですけど、得たものもあった。

こういう時じゃないと出会えないご縁もあったと思いますし、去年は人とあまり会えない年ではありましたけど、実はご縁を繋ぐ年でもあったと思うんです。なので、今年はそういうものを形にしていけたらなと。

酒井:僕で言うと、先ほど賀集さんからも少し言っていただきました若い人たちと一緒にオンライン舞台を去年8月にやらせてもらいました。

そこで、企画、演出補、出演と3役をさせてもらったんですけど、それもコロナじゃないとまずそんな考えにもならなかったでしょうし、コロナならではの動きでもありました。

そして、こうやって賀集さんとやらせていただくというのも、コロナがあったからこそ。

僕らからすると、賀集さんは自分が中学生の頃からテレビで活躍されていた方。その方と一緒にできているのもコロナだからこそと思います。もし、コロナ禍でなかったら、多分、賀集さんも「これは、ないな…」となってたと思いますし(笑)。

賀集:いやいや、そんなことはないですよ!やめなさい、落とすのは(笑)。

今年が20周年という意味

賀集:でも、本当にコロナだからこそ、という部分はあると思うんです。

もちろん、大変なことなんですけど、それで何かを失ったり、委縮するばかりではやりきれない。そこからプラスを抽出する。

個人的なことを言わせてもらうと、今年は俳優人生20周年なんです。

コロナによる去年からの“思いの助走”があったからこそ、42歳という年齢にはなりましたけど、守らずに進みたいと思っていますし、今までのイメージとは違うものも放出していこうと考えられているんだろうなと。

当たり前のように仕事と向き合い、当たり前のように仕事をやっていたら、ここまでの思いにはならないまま20周年を迎えていたかもしれません。

酒井:賀集さんの思い、そして、僕も去年から感じてきた思い。それを「かしこみかしこみ」でお見せできればと思っていますし、まずは、第1回公演をしっかりと成功させないといけませんからね。そこをまず全力で頑張りたいと思います。

賀集:今の世の中、本当に流れがどうなるか分からない。いきなり様子が変わって、公演ができなくなったり、さらにこじんまりとやらないといけなくなるかもしれない。

ただ、僕らの場合は、4人だけでのユニットなので小回りはね、ものすごく利きますんで(笑)。その都度、良い形を模索しながら、皆さんに楽しんでもらえることを力いっぱい作っていきたいと思っています。

(撮影・中西正男)

■賀集利樹(かしゅう・としき)

1979年1月16日生まれ。兵庫県出身。プラチナムプロダクション所属。99年からモデルとして活動を開始。ファッション誌「Fine」などの専属モデルを経て、2001年にテレビ朝日「仮面ライダーアギト」の主人公・津上翔一役で役者デビュー。その後、テレビ朝日「はぐれ刑事純情派」、TBS「年下の男」「ドールハウス」などに出演。05年にはNHK大河ドラマ「義経」で平維盛役を演じた。09年4月には、國學院大學神道文化学部神道文化学科に入学。今年、酒井貴浩との演劇ユニット「かしこみかしこみ」を結成。第1回公演「ささがね」(3月26日~28日、東京・ステージカフェ下北沢亭)で開催する。

■酒井貴浩(さかい・たかひろ)

1988年3月18日生まれ。愛媛県出身。プラチナムプロダクション所属。テレビ朝日「私の嫌いな探偵」、映画「アウトレイジ ビヨンド」、TBS「インハンド」などに出演。昨年8月、新型コロナ禍での可能性を模索するLINELIVE viewing「私たちが解散するまでの45分間の物語」で企画・演出補・出演を務めた。また、地元・愛媛県西条市の「LOVE SAIJO応援特使」にも就任している。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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