バルベルデを解任したバルサ。期待される原点回帰と「クライフイズム」への郷愁。
バルセロナが、エルネスト・バルベルデ監督を解任した。後任には、キケ・セティエン新監督が選ばれている。
バルセロナは先に行われたスペイン・スーパーカップで、アトレティコ・マドリーに敗れた。今季からフォーマットが変わり、中立地の4チームによるトーナメント戦で優勝者を決める形となったスペイン・スーパー杯で、決勝に進めず。これがバルセロナのフロントの行動を促した。
アトレティコ戦の敗戦だけがバルベルデ監督を解任する理由ではないだろう。過去2シーズンのチャンピオンズリーグの敗退が大きな要因となっている。バルセロナは2017-18シーズンには準々決勝でローマに、2018-19シーズンには準決勝でリヴァプールに敗れている。いずれもファーストレグで勝利した後、セカンドレグで逆転負けを喫した。
■シャビにアプローチ
まず白羽の矢が立ったのは、現在アル・サッドを率いるシャビ・エルナンデス監督だった。シャビ監督は2020年6月までアル・サッドとの契約を残している。彼は「バルサの監督は僕の夢だ。しかし、いまはアル・サッドでの日々に集中している」と語っており、現に国内カップ戦の決勝を1月17日に控えている。
だがバルセロナのオスカル・グラウCEOとスポーツディレクターを務めるエリック・アビダルは、1月10日にシャビ監督と接触したようだ。シャビ監督を迎えるにあたり、2つのオプションが考えられた。ひとつは、即座に監督就任して2年半契約を結ぶプラン。もうひとつは、今季終了時に「バルサのシャビ監督」を誕生させる方向で動き、現時点で彼の就任を公式発表するというものだ。
また、「第三案」として浮上したのが、今季終了時まで暫定監督を据える手法だ。昨季、レアル・マドリーが、サンティアゴ・ソラーリを据えたように、である。その案についてはBチームを率いているガルシア・ピミエンタ監督の昇任が濃厚だとされていた。
■ポゼッションと原点
また、有力候補に挙げられているのがオランダ代表のロナルド・クーマン監督だ。クーマン監督の契約には、EURO2020終了時、バルセロナの監督に就任するのならフリーで契約可能という条項が載せられているといわれている。マウリシオ・ポチェッティーノ、ティエリ・アンリ、ガビ・ミリート、マルセロ・ガジャルド...。メディアでは、名将の名前が踊った。
最終的に、バルセロナが選んだのはキケ・セティエン監督だ。昨季までベティスを率いた指揮官で、「クライフイズム」の信奉者でもある。攻撃フットボールを貫く指揮官と2022年夏までの契約を結んだ。
バルセロナが最後にシーズン途中に監督を解任したのは2003年1月である。ジョアン・ガスパルト当時会長が、ルイ・ファン・ハールを解任。後任にはラドミル・アンティッチが就いた。
前例のない事態ーー。リオネル・メッシをはじめ、主力選手たちはバルベルデ前監督を信頼していた。フロントはバルベルデ前監督への疑念を強めていた。バルトメウ会長の任期は2021年夏までで、会長としてはそれまでに何とか結果が欲しい。
そして、監督交代の狙いはポゼッションを主軸とした攻撃フットボールへの原点回帰に他ならない。そのノスタルジーが、クラブ全体を揺るがすほどの状況を招いている。